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とある夏の43日記  作者: 伊藤真奈
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夏休み終了まで、あとゼロ日

2023年8月31日。

最終日だから、と半ば現実逃避でこれまでの日記を読み返してみた。

書いているのは、くだらない上に嫌なことがいっぱい。なぜこんなにもネガティブなことしか書かないのだろう、と思った。

書かれていることのどれもが、読む人をいらだたせる。つまり、なんだ、私はあれほど嫌っていた他人と同じ人間でしかないじゃないか、と。

いやだあ学校行きたくないだ、辛いだ、それは人が嫌だから!だ、なんだそれは。思い上がりでしかない。

ああ泣きそうだ。ショックで泣きそうだ。しかし、思い返してみれば、生きて今までずっとそうだったじゃないか。ごうまんでせんさいで矛盾した、どうしようもない、人間だ。

自分だけは、嫌い嫌いと言いつつ、どこかで優しい人間をできていると思ってした。そんな自分に酔っていた。そんなことに今更気づくなんて。

けれど、今更だけど、気づけたおかげで、別のことも気づけた。死にたいなんて思う自分も、学校に行きたくないと子供じみたわがままを思う自分も、理想とは違う。自分はもっとすごい人間なのだと思いたかった。

そんなことはない。認められなかったけれど、人間だから仕方ないと思えば、納得できる。

今までの意味不明な矛盾も行動も言動も性格も納得がいく。

話の切り口を変えよう。私は書き始めて数日で、実はやめどきを探っていた。めんどうになっていた。それで、今日やめようと思っていた。夏休みも終わりだ。夏休みだけの日記。なんとなくロマンがあるじゃないかと。

それに、もっと、エッセイじみたわけを、今思いついた。

すなわち、この日記は、私が自分と向き合うまでの文章だ、と。

それで切り捨ててしまえばいい。気づいていなかった自分とは違うのだと思えば、少し生きやすい。どうせ今の自分以外、誰も見ちゃいない。気にしてるのは私だけだろう。

初めて、人間を面白いと思った。私はどうしようもない。人はどうしようもない。けれど、なぜか面白い。頭の中のきりが晴れたようなそうかいかんがある。

そのためなら、辛くてもやや前向きに学校へ行ける気がする。……嫌でゆううつな気持ちは変わらないとしても。

というわけで、私は日記を書くのをやめよう。そうだな。人間観察日記とか付けたら面白いかもしれない。この日記の名前も付けたいな。せっかくだから。

とある夏の43日記、とかどうだろう。いい感じにフィクションに仕立て上げられてる。気に入ったから表紙に書いてみた。

とにかく、これで終わり。

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