02異様な町
なんやかんやで街についた。
追い剥ぎにあった可哀想な人感をだして、ブリーフ一枚であっても自分は変態の加害者ではなく、身包み剥がされた被害者である感じをアピールしつつ、
視線に耐えながらか細い声で、
善良そうな年配のご婦人に交番は何処か尋ねる
ご婦人は私が加害者でなく被害者サイドの人間であることを瞬時に理解し、自分の首のスカーフをそっと私の肩にかけてくれたが、
何の足しにもならないどころか、そんなもんしたら奇をてらったファッションと誤解され、被害者サイドから加害者サイドに片足つっこんでしまいかねないので、丁重にお断りした。
「交番とは?」とボケをかますご婦人に
困った人が頼るところとお伝えしたら理解したらしく
指をさされた方向へ進む。
そこには治安維持軍詰所と書かれた看板があった。
特殊な宗教や思想を持った人の隠れ里なのかな??
そういった人達が集まって自治をしているのだろう
怖い町にきてしまった
むしろそういった組織に拉致されたと考えるべきか
街全体がやばいなら下手に関わらずに違う街を探そうかとも思ったが、そこそこもう疲れたので一旦休みたい保護されたいという思いが勝って、中に入った。
マイケル「おや、新米冒険者かい?」
俺「いや、草原で気づいたらこの格好で、家に帰る手助けをして欲しいのですが」
マイケル「心配いらない、皆最初は布一枚でこの世界に降り立つんだ」
俺「いや、そういう哲学チックなことはいいのですが、本当にパンツ一枚で草原で目が覚めまして、困っているんです。」
マイケル「冒険者はみんなそうなんだ。あの草原には魔物がいるが、ここまでたどり着いた君は選ばれしものだ」
俺は確信した
ここはゴリゴリのカルト宗教の信者達の町だ
話がまったく噛み合わない
俺は久しぶりに焦った
頼るべき人が見つかったが、ジャンルが全く異なるタイプなのだ
とりあえず実家に電話したい
俺「すみません、電話借りられませんか?」
マイケル「電話?なんだいそれは?」
顔は笑っているが酷く恐ろしい。
外部と遮断されたカルトタウンには電話は存在してはいけないのだろう
真面目に話しても埒があかない
とりあえず食事をして、眠って、思考が万全な状態になってから考えよう
俺「とりあえずお腹が減ってしまって、お金もないのですが、保護して頂ける福祉の施設はありますか?」
マイケル「冒険者ギルドに行けばいいさ。新米冒険者にはコインと食料の支給がある。仕事も紹介してくれるぞ」
このカルトの教祖はゲームヲタかな?
とりあえずギルドとやらの場所を聞いたのでいってみることにした。
シンディー「あら、新米冒険者さん?ギルドにようこそ。冒険者として登録したら支度金と、今日の宿と食事を提供するよ」
登録制か、個人情報をこのカルトに提供するのは嫌だな
こうやって抜け出せなくなるんだろうな
そう思いつつも、身分証など何もない俺
用紙を見ると、名前を書く欄しかない。
ホテルのチェックインよりザルだ。カタカナで「ヤマダ」と書く
シンディー「ヤマダね、変わった名前ね。」
俺「え!?初めて言われましたわ」
シンディー「それじゃあ、あなたのスキルとレベルを判断したいから、この石に手を置いて」
そうか、宗教上の儀式だな。こうして信者の中で格付けを行い
下のものには競争意識を、上の者には優越感を与えコアな信者にしていくのだろう。
言われたとおりにただの汚い灰色の石に手を置く。
なんか、わからんけどあったかい
演出のために電子レンジとかでチンしてるのかな
凝ってるな、こういうのに頭が悪い人は不思議な力がある石とか思って騙されるんだろう。
シンディー「うーん、Eランクね。レベルは5。あなたは薬草集めとかの簡単なものからレベルを上げていってね。」
俺「あ、はい」
よくわからんカルトでの序列などどうでもいいのだが、
それでも勝手な物差しでEランクと言われるといい気分ではないな
まぁ、金と飯食えるならいいわ
2階に行くと相部屋だった。
男が3人いた。
ジョゼ「よう!俺はジョゼ、剣士だ。宜しく」
ルーク「僕はルーク、魔法使いです」
ボビー「俺はボビー、こう見えて賢者だ」
俺「はじめまして、ヤマダと申します。会社員です。」
ボビー「カイシャイン?初めて聞いた。シャインとつくから太陽系の魔法使いか?」
ルーク「いや、そんな魔法は聞いたことがありません。カイシャインとはなんですか?」
ジョゼ「特殊なスキルか?」
俺「いや、普通に勤め人ですけど。」
ルーク「ツトメニン?なんですかそれは」
ジョゼ「お前、目立とうとしてよくわからないこと言ってないか?ガハハ、面白いやつだな。気に入ったよ」
あれか、カルトのガチ信者は俗世の単語は聞かなかったことにするのか?どのへんが気にいるポイントかわからんけど、これ以上俺に喋らせないように話終わらそうという魂胆なら真面目に解説しても急にキレられたら怖いし話合わせとくか
俺「すみません、とりあえず私はヤマダであって、職業はまだ未定です。宜しくお願いします。」
ジョゼ「宜しくな、ヤマダ。とりあえずもうすぐ飯の時間らしい。しっかり食べて明日から任務頑張ろうぜ!」
俺「え!?一緒に?」
ジョゼ「いや、多分お互いレベルもランクもバラバラだろうから、みんなバラバラの任務だろう」
シンディー「お食事の時間ですよ」
俺たちは食堂へと向かった。
他の部屋にも何人かずついたみたいだ。
食堂には30人ほど人が集まっている。
このように集団生活と任務という名の修行をすることで、どっぷりとカルト漬けになるんだろうな。俺も気をつけて正気を保たねば。今の状況は客観的に捉えよう。