〜厳密に言うと無課金ユーザーのアバターね〜
30代前半の独身サラリーマン
最近お腹が出てきて、老いを感じ始めた俺
彼女でもつくろうかとマッチングアプリに登録したものの、やっとやりとりしていた子がすすめてきたスマホのゲームをダウンロードするやいなや、紹介ポイントだけとって音信不通になりやがった。
そんなに興味がないから初回ログインだけして忘れて放置していたんだが、せめて無料10連ガチャひいとけばよかったと、後悔することになる。
ある朝、目が覚めるとブリーフ一枚で草原にいた。
状況の把握ができない。昨日は何か強い酒でも飲んだかな。いや、飲んでない。
普通に金曜日に寄り道もせず家に帰った、今日は土曜日だろう。
あとはこの格好だ、何故ブリーフなのか、俺はボクサーパンツ派だが
そしてここはどこなのか、どうやって帰ろうか、人を呼ぶにもこの格好だ。スマホも財布も無い。交番に行って親に連絡取ってもらうか
混乱から速やかに冷静さを取り戻した俺
辺り一面草原だが、遠くに街が見える。この格好で闊歩するのもあれなのだが、ここにいても何もならない
なんとなく街に向かい歩いてみた。
途中で変なだいぶ個性的な人に出会った。
ずんぐりむっくりな小柄で肌は全身緑色
彼は言った「ここを通りたいなら通行量を払え」
彼の目に俺はどう映っているのか
ブリーフ一枚の俺から何か取れるものがあるのか?
とりあえず何も無いし、あなたはこの道の所有者ですか?と尋ねてみたが、どうやら違うようなので、無視して通り過ぎようとした。
すると殴りかかってきたのだ。
そもそもなんだこのこの生き物は
全身に緑のタトゥーと鼻にシリコンいれた、人以外の何かになりたい近寄りがたいタイプの人かと思ったけど、
勘違いに拍車がかかって人に襲い掛かるとは言語道断だよ。
ク◯リでも決めてんのかよ
そう思ったらまた同じような緑色のやつが、どこからともなく湧いてきた。いくら仲良しでも同じ全身タトゥーはちょっとキツイ
ポカポカ殴られているか全然痛く無いので無視して歩く俺
そんななぐる奴が2人から3人に増え、3人から4人に増えていく
カンフー映画を見過ぎで、自分が武の達人だと錯覚していた時期がある俺は、一般人相手にはその力をひけらかしたりはしない。
子供が戯れてくるくらいの感覚だと思うように自分に言い聞かせていたが、全身緑色のタトゥーいれて、シリコンで体を改造しただけの貧相なイカレ野郎がイキッていることに苛立ってきた。
ブリーフ一枚だと思って完全に舐められている
俺は厨二の頃独自に編み出したカンフーである
「龍真拳」の構えをとった
龍真拳とは龍が天を舞うかのような壮大で力強く、かつ美しさを備えた無敵の拳だ。
人前で初めて披露する
その中でも特にダイナミックな動きに定評があると、
もし人々がみたら思うであろう
龍真拳第三章「龍の宴」の型を見せつけてやった。
30過ぎた身体にしては当時を彷彿とするキレ
体に叩き込んだ型は、やり始めると自然と次の動きが出てくる
全部で38節ある龍の宴のうち、1節終わる頃には彼らは逃げていった。
「本当の強者は争いを避ける」
「あのライオンもまず威嚇して相手に逃げる機会を与える。」
スマホがあったらツイートしてるわ
鬱陶しい連中もいなくなり、久々の龍真拳で高揚した俺の足取りは軽街を行き交う人々が見える距離まで歩みを進めていた。