07 歓迎
現在、例の真っ白な部屋で、ヲブザーヴさん歓迎会の真っ最中。
あの後、皆さんをそれぞれのご自宅へ『システマ』で送ってもらいまして、
我が家に着いた僕たちは歓迎会の支度をしようとしていたら、
いつの間にかヲブザーヴさんが、この白い部屋に繋がる『転送』ドアを居間に設置しちゃいまして、
せっかくの広々空間だから、こっちで歓迎会しようってことになりまして。
えーと、ヲブザーヴさん。
"絶対閉鎖空間"って、権限保有者以外は絶対に"入室"出来ない場所、ですよね。
「元いた世界が無いことは確認済み」
「よって、この空間の所有権はリセットされたと判断」
「なので、好きにさせてもらう」
「もちろん、仮登録者のサイリ次第」
はい、好きにしてください。
というわけで、"絶対閉鎖空間"とやらはヲブザーヴさんの自室に。
後で家具とか見繕わなきゃ。
続々集まって来てくださった皆さんの、自慢の持ち込みお料理の数々に、
ヲブザーヴさん、大喜び。
いえ、表情はほとんど変わらないのですが。
「あんなに美味しそうに食べてもらえると、こっちまで嬉しくなっちゃいます」
いつもすみません、リノアさん。
さっきもヲブザーヴさんがやたらと長いことハグしちゃって。
「リノア、ハグ、最強」
口に物を入れながらしゃべっちゃ駄目でしょ、ヲブザーヴさん。
いえ、リノアさんが最強であることは、僕も完全に同意。
「サイリさん、ちょっといいですか」
はい、なんでしょう、けんちゃん。
「ヲブザーヴさんの身分登録の件なのですが、サイリさんの妹さん、ということでよろしいですね」
そうですね、異なる世界から、ひょっこりこちらにおじゃましちゃった者どうし、助けあわなきゃですよね。
「実はそれだけではないのです」
?
「ヲブザーヴさんの能力は、サイリさんと非常に近いモノなんです」
「出来れば、そっちの方も手助けしてあげてほしいなって」
えーと、もしかして『鑑定』したステータスに直接干渉出来ちゃう、みたいな。
「『鑑定』よりも詳しい情報を理解できる『分析』とでも呼べる能力でしょうか」
「ヲブザーヴさんの場合は、兵器として利用するための能力のようですが」
??
「接触して『分析』したステータスへの干渉はもちろん、相手の能力をそのまま利用することも可能なようです」
「つまり、相手に触ったら無敵に近い状態になれる、みたいな」
確かに無敵っぽいですけど、相手に近付くには僕の『クロッカス』みたいな防御手段が無いと。
「接触している大気中の魔素も、自由に利用出来るようです」
「つまり『クロッカス』の六角防御帯のような防衛手段を、いつでも自在に展開出来るみたいなのです」
……確かに無敵っぽいですね。
まあ、あんな感じでケーキを口いっぱいに頬張っている姿からは想像も出来ないのですが。
「つまり、妹さんの面倒をちゃんと見てあげてくださいねってことですよ、サイリお兄さん」
えーと、あっちの世界にいる妹よりは、素直で良い子みたいですし。
って、肩にチュースさんとエリスさんを乗っけてるんですけど。
「食べないです」
うん、正解。
仲良くしてね。
おっと、そういえばけんちゃんに質問があったんだっけ。
こっちの世界での僕の税金について、なのですが。
「サイリさんの口座から自動引き落としになってますよ」
「通帳、届いてませんでしたか」
そっか、そういえばカレルさんの口座をそのまま引き継いだんだっけ。
通帳、確か部屋の机の引き出しに……
「右側の一番下の引き出しの奥」
……ありがとう、ヲブザーヴさん。
えーと、またひとり、隠し事不可な人が増えちゃいましたよ。
「例のアレの隠し場所は、絶対に口外法度」
……ありがとね。
さすがは僕の妹ですね、モルガナさんよりも優しいのですよ。
「優しくない"導き手"は」
「例のアレの隠し場所を暴露する気満々なり」
やめてくださいよぅ。
モルガナさんも、仲良くしてあげてくださいね。
「良い子にはご褒美、悪い子にはおしおき」
「それがこの世の理なり」
じゃあ、モルガナさんには当然おしおきが、
つねり
いてぇ!
ちょっと、ヲブザーヴさんっ、
お兄ちゃんがピンチですよぅ。
「自業自得」
「本当に良い子なり」
……学習能力高すぎですよぅ。