02 内訳
『収納』金庫内は、それはもうぐっちゃぐちゃで……
通常、『収納』されたモノを取り出す際には、目録ちっくに一覧表示されるのですが、
表示がバグっちゃってますよ、コレ。
たぶん中にある怪しげなブツのせいで金庫の『収納』がイカれちゃったのだろうな、と。
どうやら、一品一品取り出して確認する必要がありそうです。
何が出てくるか分からんって結構怖いのですが、
とりあえず何であれ、中のブツたちを全部、ノートに内訳一覧として記入しなければなりません。
つまり、ヤルことヤラねば、お片付けは終わらぬのです。
まずは一品目。
はて、これはなんでしょう。
見た目はなかなか素敵な肩掛けバッグなのですが、
なにやらただならぬ気配が……
「確か、エルサニア王都からジオーネの街までの護衛任務で、旅商人さんが置いていったお礼の品、でしたね」
あー、あれですか。
見た目は普通のバッグなのに、
ルシェリさんもドン引きしちゃうほどの怪しげな気配満点なブツでしたね。
そのとんでもなく怪しげな気配に、僕が『鑑定』したら、
中に封印、じゃない『収納』されているのが表示エラー品で、
結局、後で開けようってことになって、そのまま金庫に仕舞っちゃってたヤツ……
「どうしましょう、サイリさん」
えーと、この整理がひと段落したら、開けても大丈夫そうな場所に持っていって、なんとかしてみますね。
ひとまず、金庫内訳一覧ノートに書き書きっと。
……お次は、と。
おや、ハイヒール。
素敵なデザインなのですが、どうして金庫の中に?
「それを履くとダンスが上手く踊れるようになる魔法のハイヒール、だそうです」
あーはいはい、ロミエスカさんが商業ギルドを退職した際に、ギルマスのオルガナさんからプレゼントされた品、でしたっけ。
どうして使わずに事務所の金庫の中へ?
「衣装を選ぶのですよ、そのハイヒール……」
?
「ハイヒールが気に入らないドレスだと、満足に歩くことさえ出来なくなるのです」
「その、露出度が高くないと……」
……捨てちゃいましょうよ、こんなエロハイヒール。
ってか、オルガナさんもなんでこんなモノを。
「いえ、オルガナさんはご存知なかったようなのです、その……衣装の件は」
「某国の高名な魔導具職人が丹念に製作した逸品とのことで、素材や縫製の見事さだけでなく、自動サイズ調節や蒸れ防止など、本当に素晴らしい履き心地なのですが……」
「お若い方なら問題ないかなって、どなたかにプレゼントしようとこちらに置きっぱなしで、本当にごめんなさい」
……ロミエスカさんにも似合いそうなんだけどな。
「……」
えーと、とりあえず保留、かな。
これも内訳一覧ノートに書き書きっと。
……
そんな感じで、金庫整理しながら、内容物をノートに書き書き。
なんとか、丸一日がかりで全部チェック終了っと。
取り出したモノはあちらの空き部屋に全部出しっぱなしですが、
戻す前にアリシエラさんに金庫の調子を見てもらいますね。
爆発とかしたら嫌ですし。
皆さんも、これからは金庫に入れる際には、このノートに一筆お願いします。
では、今日はこの辺で。
そっか、明日は定休日でしたっけ。
お疲れさまでした、皆さん、良い休日を。
「お疲れさまでした」×3
おっと、例のバッグ、持っていきますね。