15 ご無沙汰
「こんにちは、サイリさん、その後いかがですか」
こんにちは、けんちゃん、ご無沙汰でした。
サイノは元気してますよ。
そうそう、フルネームがイシン・ヲブザーヴ・サイノになりましたので、これからはサイノって呼ばないと返事してくれないそうです。
「サイノさんが穏やかに楽しく暮らせればなによりです」
学習意欲が高いのは大変によろしいのですけど。
ほら、僕の周りって、いろいろアレじゃないですか。
問題児的なアレがアレしちゃってて。
「本当に、いろいろアレですよねえ」(遠い目)
みんなからアレコレ学ぶのは結構なのですけど、モルガナさんとかネルコさんとかからも、アレやコレや学んじゃって……
「でも、心配はいらないかな」
「サイノさんはお兄さん大好きっ娘みたいですし」
反面教師ならぬ、反面兄貴ですけど。
「いえいえ、あの固有スキルを立派に使いこなしているサイリお兄さんの背中を見て、サイノさんも立派に成長しますって」
でも"ジェノサイドキレ仙人"なんですけど。
「悪を憎んで人を憎まず、ですよね」
その割には人的被害が甚大ですけど。
「それだけ悪党が多いってことですよ」
「僕ももっと世界に干渉出来れば良いのですが……」
いえいえ、けんちゃんは働きすぎですから、もっとまったりしてください。
そうだ、アヤさんといっしょにお昼寝ハンモックとか、いかがですか。
『極眠ペアモック』っていう、2人乗りでもゆったり仕様の新開発ハンモックもありますし。
「寝心地、試してみました?」
えーと、この間スーミャと気持ち良くお昼寝していたら、いつの間にやらモルガナさんが勝手に隣に潜り込んできちゃって、
めっちゃうなされましたよ……
「……」
もちろん、けんちゃんとアヤさんなら、良い夢ぐっすり、ですよね。
「お借りしても?」
はい、これです。
取り説通りにフレームを組み立てて、
サラフワ素材のゆったりサイズ寝床を吊り下げて、
虫除け雨避け強風避けUVカットの快眠結界を作動させたら、
最高のペアお昼寝をお約束、ですよ。
「ありがとうございます」
「そういえば、ハンモック関連の特許収入、ちゃんと確認してます?」
いえ、最初のスペシャルハンモックの頃は楽しみでしょっちゅう確認してたのですけど、
今は収支確認はご無沙汰ですね。
「あー、もしかしたら不味いかも」
?
「収入に関する税金などは口座のあるギルドの方にお任せでも構わないですけど、極端に放置されている高収入口座があると、査察が入るかもしれませんよ」
査察?
「お金の流れにルーズな人たちを対象に、"良き経済活動は正しい金銭感覚から"をスローガンとする経理査察官というスゴ腕の監察官が、巡回司法官本部から送り込まれてくるのだとか」
なにそれ、怖い……
「身の回りのお金の流れや資産状況を、ちゃんとチェックしておいた方が良さそうですよ」
「サイリさんの資産って、結構凄そうですし」
あー、放置はマズかったですね、確かに。
「一度監察官に目を付けられると、生涯マークされるそうですよ」
「ストレスで激痩せした経営者や大商人が多数、だとか」
激痩せ……
「激痩せはサイリさんとは縁遠い言葉かもしれませんが、平穏な暮らしを守るためにも、ぜひご一考を」
しっかと心得ました。
いつもアドバイスありがとうございます、けんちゃん。
確かに、お金の流れにルーズ過ぎましたね。
激痩せ、怖いですし。
えーと、絶対にフラグになりませんように……




