13 経験
めでたしめでたし、
とは成りませんでした。
『フェロモンスライム(仮称)』は、
依頼主に引き渡す前に死亡。
どうやら、酸欠だった模様。
あの捕獲空間、密閉性が高すぎたのですね。
というわけで、生体の捕獲には失敗したけれど、
新種サンプルの確保は成功。
依頼としては大成功じゃなくて、中成功くらい、かな。
……
しかし、あの件はいろいろと後を引いております。
僕の付与で、スーミャたちのフェロモンの効果は消去出来たのですが……
スーミャは、少々男性恐怖症気味。
クロ先生のカウンセリングを受けているけど、
回復にはもうしばらくかかりそう、とのこと。
で、今は僕にべったり。
一応、僕も男なんですけど。
「だって、サイリだし」
……期間限定甘えっ娘スーミャ、
たっぷりと甘えちゃってください。
イリーシャさんは、毎日猛烈に特訓中。
アランさんのところにある安全闘技場に入り浸って特訓ざんまいの日々。
今回の件でスーミャを危険な目に遭わせてしまったことを猛省しているようです。
「我ながら情けなし……」
あまり思い詰めないでください。
あのパーティーの男衆に酷いこと出来なかったのは、イリーシャさんが弱いからじゃないでしょ。
「半殺しにしてでも止めるという覚悟が足りなかったからだ」
僕は、スーミャを守るために全力で逃げるっていう選択肢をとれたイリーシャさんはスゴいと思うけどな。
もちろん、特訓の方もがんばってください。
根を詰めすぎないくらいで。
「私に足りなかったもの……」
たぶん、冒険者としての知識と経験、かと。
落ち着いてトラブルに対処出来るような。
「……精進あるのみ、か」
スーミャに心配かけないくらいで、がんばってください。
「今回の依頼、反省点、多し」
サイノはがんばったと思うよ。
今度、生捕りにするときは工夫しようね。
「『クロッカス』の『ハマグリ』のような大気組成調整機能の付与が必要だった」
あのスライムを入れるなら、フェロモンを完璧に封じ込める密閉性が何より重要だったから、
魔素障壁で閉じ込めるやり方は正解だったと思うよ。
「今度は、失敗しない」
僕は、あんな変なのとは二度と遭遇したくないけど。
「そういうのをフラグと言う、らしい」
ご勘弁ですよぅ。
アレな依頼だったけど、皆それぞれ、経験を積めました。
大事なのは、この経験を次のトラブルに活かすこと。
でも、本物のエロスライムに会いたかったな……




