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第61話 癒しを求めて





ティーレマンス王国を離れて5日。

私は今、スタット村を経由して魔王国シンプリーストに向かっている。


今日は経由地のスタット村に着く予定だ。



魔王国領土に入る前の人間国最後の村とはいえ、私には『亜空間収納』に『家』があるため、態々経由する必要はないのだが、どうしても可愛いミミとリリに会いたかった。



最近、色々あったため、癒しが必要。

新作スウィーツの『マカロン』も食べさせてあげたいし。





なお、いつものように体重90キロを維持した馬車旅となっているのだが、今回は隣にミヒナがいる。








私は隣にいるミヒナを見ながら、ティーレマンスを旅立つ前日のことを思い出していた。









「やはり、マルティナ様の『家』は最高ですわ」


「私の家にもこのお風呂作れないかしら。それか、やっぱりダーリンと同棲?」




ミリアムとナナイロがお風呂上がりの艶めかしい姿でダイニングにやってくる。

2人とも我が家のバスローブを羽織っているだけの姿だ。





「ふ、2人共、その格好は何とかならないのか!?」


「あら、マルティナ様だったら見られても問題ありませんわ」


「寧ろ、ダーリンに見せてるというか」




私が顔を真っ赤にするのも関係なく、2人はダイニングテーブルに座ってお風呂上がりの牛乳を飲み始める。





「ミヒナは入らないの?」


「もう少ししたら、入る」


「ダーリンと一緒に入るのはダメよ」


「は、入らない、よ」




ミヒナは頬を赤くしながら慌てて否定した。

ミヒナは見た目から同い年くらいであろうが、私同様、この手の話には弱い。





「それにしても、明日、本当に旅立たれてしまわれるのですか?」


「うん。もう一度、スタット村に行きたいし」


「私も一緒に行きたいのですが、ティーレマンスの属国化の諸手続きが山のようにありまして•••」


「ダーリン、同じく私も冒険者ギルドの仕事が忙しくなっちゃいそうで•••」




ティーレマンス王国をアルメリア王国の属国にする際、ミリアムは魔物の被害を食い止めると国民に約束している。

話を聞くに、アルメリアのように『マリアの汗』を使って魔物除けを図るようだが、その依頼を冒険ギルドに出すそうだ。



魔物が減ってしまうことで冒険者の仕事が減るのではないかと心配していたが、今回の依頼を高額で出すことと、定期的な魔物の棲家の排除依頼も入るようで少し安心した。






「スタット村•••」


「ミヒナ、どうしたんだ?」


「スタット村、帰り道。私も途中まで一緒、いい?」


「それはいいが、スタット村が帰り道って、ミヒナの家はどこなんだ?」



「魔王国、シンプリースト」



「「「•••」」」




私とミリアム、ナナイロは三人で顔を見合わせ、聞き間違いでないことを確認し、同時に頷くと大きな声を出した。





「「「えぇぇぇぇーーー!!!」」」




「そんなに、驚く?」




私達の驚きに、ミヒナは首を傾げて不思議そうにしている。




「そりゃ、驚くよ!!」


「ミヒナは人間よね?」


「た、たぶん」


「魔王国に拉致された、なんてことは?」


「ない」




淡々と答えるミヒナ曰く、魔王国シンプリーストの魔王が母親なのだそうだ。

ミヒナは見た目も気配も、どうみても人間。


それにミヒナは聖魔法を得意としている。

聖魔法を使う魔族なんて聞いたことない。





「なあ、ミヒナ。私も魔王国シンプリーストに行ってもいいかな?」


「う〜ん。マルティナなら、たぶん、大丈夫」




その答え方は、絶対駄目なやつでは•••

不安そうにしていると、ミヒナは笑って右手の親指を立てた。








結局、魔王国シンプリーストへの興味が勝り、今、ミヒナと旅をしている訳だ。






「マルティナ、見えた」


「お、本当だ」




魔王国シンプリーストへ旅するきっかけとなった会話を思い出している内に、私にとっての癒しの地、スタット村に着いた。




『亜空間収納』に『馬車』を仕舞っていると、入り口から可愛い声が聞こえてきた。





「マルティナだーー」


「本当だ、まーてぃなだーーー」




ミミとリリだと声だけで分かると、私は直ぐに振り返り、2人の元へ駆け寄った。





「ミミ、リリ、元気だったか!?」


「「うん!!」」


「そうかそうか。また、お菓子持って来たぞ」


「本当〜??」


「甘いの〜??」




ミミとリリは私の手を握って嬉しそうに回り始める。


これだ。

私が求めていた癒しは•••。



ミミとリリは、以前同様、白髪で肌に皺があるが、そんなことを感じさせない圧倒的な可愛さがある。




「まーてぃな、このお姉ちゃん誰?」


「マルティナの彼女?」


「ち、違うよ。お友達のミヒナだ」


「よ、よろしく、ね」


「「彼女じゃないんだー」」



話に聞いたことはあったが、女の子は精神的な成長が早い。

彼女がいたことなどない私は、ミミとリリの攻撃にタジタジになる。






「ミミ、リリ!!また、村の入口に近づいて!!」



村の入口で騒いでいた私達の元へ、ミミとリリの母親であるマヤがやって来た。




「あなたは、シュークリーム様。はっ、違うわ、マルティナ様」


「お久しぶりです、マヤさん。シュークリーム、ありますよ」


「やだわ、そんな。私ったら恥ずかしい。早速、紅茶を淹れなければなりません•••」





私とミヒナは、マヤさんとミミ、リリが三人で住んでいる家に案内してもらった。

以前は村長さんの家だったのだが、今日は村の外にある湖の定期調査に行っているらしい。



家に案内されると、中はダイニングキッチンとその横が寝室になった二間の作りだった。

家具は全体的に少なかったが、綺麗に配置されていて、部屋全体がとても清潔感に溢れていた。



椅子が4脚のダイニングテーブルに私とミヒナが隣同士で座ると、以前のようにミミとリリが膝の上に乗って来る。





なんて可愛いのだろう•••





私はそんな可愛い2人に『シュークリーム』と新作の『マカロン』をテーブルの上に並べた。





「「うわぁーーー」

「すごーーーーーい!!」



ミミとリリよりも、マヤさんの方が大きな声を出して喜んでいる。


私は『マカロン』を三人に取り分けると、親子は満面の笑みで口に運ぶ。





「「「おぃしぃぃぃぃぃぃ」」」



親子は同時に声を上げると、戦争をも止めてしまいそうな幸せそうで、蕩けそうな笑顔になる。




「お、親子•••」



ミヒナはそう呟くと、私は思わず紅茶を吹き出して笑った。






その日の夕食に魚料理と肉料理を振る舞うと、親子はまた蕩けていた。

調子に乗った私は『家』のお風呂にも招待し、親子をとことん持て成したのだった。








翌朝、癒しを貰った私は、『シュークリーム』『マカロン』『鳥の唐揚げ』『炊き立てご飯』を置き土産にし、魔王国シンプリーストへ向けて出発した。







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