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第51話 暗雲






▷▷▷▷ティエル◁◁◁◁






ティーレマンス王国の第三王女であり、勇者パーティーのメンバー、ティエル•ミル•ティーレマンス。




サングラニトを出発して数日、私は今、目の前の光景を見て笑いを堪えきれず、歓喜に満ちていた。




サングラニトで手に入れた男は、Dランク冒険者で名前はクロス。


ミーシアはこの男のことをまったく信じていないようだったが、私は事前にディコス村に大型の魔物が現れたことを知っていたため、クロスがクイーンヒドラ(S+)の素材を持っていた時点で確信していた。




クロスは人相書の人物であり、紛れもなく強戦士であるということを•••。




そして、その確信は正しかったことを証明しているのが目の前にある光景だ。



体調20メートルを超えるクイーンヒドラ(S+)が生き絶え、横たわっている。


クロスの証言通りの場所に死体があったのだから、討伐したのもクロスで間違いないだろう。




これで、お父様とお母様を見返せますわ。



私は護衛として付いてきた騎士100人に命じて、クイーンヒドラ(S+)をこの場で解体し、証拠として持ち帰ることにした。


100人もいれば、何とか運べるでしょう。



解体が終わり、部位を確認していると尻尾の部分が半分以上無いことに気づいた。




「尻尾がないのはなぜなのかしら?」


「始めからありませんでした」



騎士の解答を聞き、クロスの方を見るが、黙ったままだ。

ミーシアと話している時も、馬車の移動中もまともに会話したのは名前位で、クロスは基本無口であった。





「まあ、いいでしょう•••。では、王城に戻りますわよ」


「「「畏まりました」」」




騎士達が運び出す準備をしていると、ミヒナがクイーンヒドラ(S+)が倒れていた場所近くで何かを探すように右往左往している。





「いない•••」



ミヒナは呟くように言ったが、私は気に留めることなく馬車に戻った。


ミヒナも基本無口で、ルイフォは不機嫌、いい加減嫌気が刺してくるが、クイーンヒドラ(S+)の死体が私を上機嫌に戻してくれる。



馬車で足を組み、出発を待っていると、クロスが中に入ってきて私の隣に座ってきた。





「なあ、これで分かっただろう。俺の実力を」


クロスはあろうことか私の顎を持ち、自分の顔に近づけるとそのままキスをしようとしてきた。


無口な男だと思っていたが、所詮男は皆同じね。




不愉快ではあったが、クロスの力は必要なため抵抗せずにキスを受け入れようとした時、一気に胸焼けがし、私は吐き気を催した。




うっ




「汚ねえなあーー。もういいや、やる気無くすわ」



そのまま馬車の中で嘔吐した私に、クロスはそう言うと外に出て行った。


ルイフォは吐き気で苦しむ私を見ながら、どこか哀れみの目を向けてくる。


苛立ちはしたが、怒る気にもなれない程の吐き気に襲われ、私は馬車の座席に横たわった。







それから王城に戻るまでの数日間、ずっと吐き気に悩まされるのだった。






何とか王城に戻ってくると、父である国王、母である王妃が温かく迎えいれてくれた。


それから数日間、吐き気が治らず療養を余儀なくされたが、父と母が代わる代わる私の部屋を訪れては、勇者の発掘とクイーンヒドラの討伐を誉めてくれた。



父からは私を疑ったことへの謝罪もあり、ここ数週間の心労が報われたのだった。



勇者のクロスは私の部屋を訪れることはなく、女を部屋に連れ込んでは好き勝手やってるらしいが、今後、魔物を倒してくれれば問題ない。



ミヒナに関しては、王城に戻ることなく、ディコス村に残ったそうだ。


体調が悪かったとはいえ、私の許可なく勝手な行動をしたのは腹立たしいが、同じ回復魔法使いのルイフォが王城に戻って来ているため、こちらも問題はないでしょう。







「ふう。やっと、私の日常が返ってきたんですわ」


私室のベッドで上半身を起こし、大きく息を吐くと、大好きな茶葉を使用した紅茶を啜った。




こんな日常が続くと、私は信じて疑わなかった。














▷▷▷▷マルティナ◁◁◁◁







ディコス村の中に入ると、そこには辺り一面が血で赤く染まっていた。


村の中を隈なく探したが、生きた人も死体もなかった。

ただ、家屋や地面が血で赤く染まっているだけだ。





「こ、これは一体、何が起きたのでしょうか?」


「分からない」



ミリアムは赤く染まった光景を見て、体を震わせている。

私自身も、得体の知れない恐怖を感じ、心臓が強く鼓動を打っていた。



魔物の仕業であれば、死体が残るはずだ。

大型の魔物であっても、死体の肉片まで残さず食べ尽くすのは無理だろう。



魔物ではない、何かの仕業。

マリアが言っていた得体の知れない物がやったとしか考えられない。





「マルティナ様。一度、王都ティーレマンスに向かった方がいいかもしれません」


「同じことを考えていたよ」



この現状を知らせる必要があるのはもちろんだが、ディコス村を襲った者が魔物でなく、一定の知能を持った者ならば、王都ティーレマンスに向かう気がしてならないのだ。





「急ごう」


「はい」




私は冒険者ギルドマスターのナナイロに一報を知らせるために伝鳥を飛ばし、それから馬車で王都ティーレマンスに向かった。






★★★★ ★★★★ お知らせ★★★★ ★★★★


①登場人物

本作品に登場している人物等は、以下作品に深く関係しています。


こちらを読んでいただける事で、更に作品の理解が深まると思います。

是非、一読下さい。



【作品名】

神様を脅して6,000のスキルを貰い、魔神からも威圧スキルを貰って、転移された異世界を幸福度上位の世界にノシあげる。



②今後の更新

 10月22日:1話分投稿

 10月23日:1話分投稿

 10月23日:未定


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