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第4話 サングラニト王国•第一王女




私は今、ティーレマンス王国に向けて馬車を走らせている。

馬車といっても、貴族が乗るような豪奢なものではなく、どちかといえば荷馬車に近い。


私には『亜空間収納』のスキルがあり、荷物は全てそこに仕舞えるため、荷車部分は空の状態だ。



いつものように1人だし、誰かを乗せている訳でもない。



ならば、馬車ではなく、馬での移動でいいと感じているかもしれないが、旅の途中はいつも魔物から襲われている人と遭遇する。




そう

偶にではなく、いつもだ。




この世界で魔物は強く、人間は弱い。

だから魔物も積極的に人間を食糧とするために襲ってくる。



そんな魔物から助けた人を保護するために馬車にしているのだ。






馬車を走行して3日後。

サングラニト王国とティーレマンス王国の国境付近に差し掛かった。


国境といっても一面に壁が設置されている訳でも関所がある訳でもない。



いつも通りそのまま国境を越えようとしていた時、2つの馬車が魔物に襲われているのが見えた。



あの馬車は•••。

今の私には面倒臭い相手だが、助けない訳にはいかない。




私は少し離れた場所に馬車を停めると、『千里眼(使用時は体重消費•小)』を使う。




体重:90キロ→89キロ(▲1キロ)




《千里眼結果》

•馬車の中に1名

•立っている騎士が10名

•倒れている騎士が7名(生存反応無し)


•クイーンテリルバード(A)×5体





魔物はクイーンテリルバード(A)。

私以外、人間ではランクCが最高のこの世界で、クイーンテリルバード(A)は出会ったら最後、死を覚悟する相手だ。




だが、私の場合は違う見方をする。

クイーンテリルバード(A)は、鶏肉。

夕食は『鳥の唐揚げ』に決まりだ。




『鳥の唐揚げ』を想像し、思わずニヤニヤしてしまう。

晩の食材を手に入れるため、体重90キロと思えない超スピードで移動すると、一気に魔物と襲われている人達の間に入った。




「あ、あなたは•••」

「マルティナ様•••」



私は人差し指を口に当て、後ろにいる騎士達に黙るよう伝える。



10メートル程上空に浮かぶクイーンテリルバード(A)は、突然現れた私に怒り狂い、5体同時に襲い掛かろうとする。





『剣技:亜空間烈斬』


体重:89キロ→88キロ(▲1キロ)





私は腰から剣を抜くと、剣技のひとつである

『亜空間烈斬』を放つ。



ピーーンッ



振り抜かれた剣先から、空間をも切り裂く三日月型の光線がクイーンテリルバード(A)5体の首を一瞬で切り落とした。



ドサッ

ドサッ



空中からクイーンテリルバード(A)の胴体と首が落ちてくる。




キラーーーン




血抜き

内臓切り落とし

肉解体




くっくくく




『鳥の唐揚げ』






「あ、あの〜、マルティナ様?」


「んっ?」



『鳥の唐揚げ』に集中していた私は、騎士の呼び掛けに気の抜けた返事をしてしまった。



そうだった。


騎士達、

サングラニト王国の騎士達を助けていたんだった。




「助けていただき、ありがとうございました」


騎士達は私を取り囲み、頭を下げてくる。




「皆の者、道を開けて下さい」



そこへ、聞き覚えのある声が響き、騎士達は綺麗に私まで一直線の道を作り上げる。


助ける際の『千里眼』で分かっていたが、馬車にいたこの声の主は、クロエ•リル•サングラニト。


サングラニト王国の第一王女だ。




「マルティナ様。この度は助けていただき、心より感謝します。これで助けていただいたのは何度目でしょうか」


「サングラニト王国第一王女様。礼には及びません。偶々、通りがかっただけですので•••」


「あ、あの、何かいつもと様子が•••、私のことはいつものようにクロエとお呼び下さい」


「•••」




第一王女のクロエは、第二王女のミーシアと違い、私のことを蔑んだりせず、きちんと実力を評価してくれている。


ここにいる騎士達もそうだ。

今回のように何度か助けているし、訓練を買って出ることもあった。




「申し訳ありません。万が一にも契約に触れるとまずいため、今は、何もお話しできません」


「契約?一体何があったのですか?」


「ミーシア•••、いいえ。サングラニト王国第二王女様に聞いて下さい」



私はそれだけ言うと、クイーンテリルバード(A)を『亜空間収納』に回収し、馬車を停めている場所まで超スピードで移動した。


クロエはいつもと違う状況に困惑し、どこか悲しそうな表情を浮かべていた。





◇契約内容◇

サングラニト王国の勇者パーティー追放に関して、今後、いっさいお互いに関わらない。

※他の王族、第三者を通じた関与も認めない。




契約上、今回の行為は問題ないと思うが、助けた相手が勇者パーティーを管理する王族なのが懸念された。


万が一にでも、今回の戦闘が勇者パーティーと関わったと認識されれば私は死ぬことになる。




ふぅー





死んでいないようだから、セーフだったかな。




私は安堵すると、ティーレマンス王国に向けて再び出発した。





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