第23話 検索者
▷▷▷▷ミーシア◁◁◁◁
ミーシア•リル•サングラニト。
サングラニト王国の第二王女であり、勇者パーティーのメンバー。
ネビルアント(B)の討伐に失敗し、勇者パーティーの一員である侍女のアリナタと、私の中の勇者、アーロン様が大怪我を負った。
命が助かっただけでも、まさに幸運だった。
あの悪夢の日から5日。
侍女のアリナタは、私の目の前で紅茶の準備をしてくれている。
ガシャンッ
紅茶のカップが床に落ち、大きな音を立てて割れた。
「申し訳ありません、ミーシア様。まだ、慣れていなくて•••」
アリナタは笑顔でそう言うと、新しい紅茶のカップを用意する。
アリナタは、私を助けるために利き手である左手を失った。
勇者パーティーとしての活動は難しいかもしれないが、私の侍女であり続けたいと言ってくれた。
侍女であると同時に、大事な友•••
アーロン様は、あの日以来、部屋に閉じ籠ることが多くなっている。
まともに話をしたのは、勇者パーティーの脱退を要請された時くらいだ。
なぜ、アーロン様がいつものように敵を攻撃し、討伐しなかったのかは分からない。
けれど、命を懸けて、美しい顔に傷を負ってまで私を助けてくれたことには変わりない。
脱退は少し寂しいですが、勇退として処理できるよう現在、手続きを進めている最中です。
勇退となれば、多額の退職金が支給され、その後、安定した生活が待っている。
愛しのアーロン様•••
「ミーシア、入るわよ」
アリナタと紅茶を啜っていると、部屋にお姉様である第一王女、クロエが入ってきた。
今日は今後の勇者パーティーの活動について、3人で話すことになっている。
「アリナタ、今日分のポーションよ」
クロエはテーブルの上に1本のポーションが入った瓶を置いた。
「毎日私のようなものに希少なポーションを•••」
「寧ろ、こんなことしかできなくて申し訳ない。痛みはないか?」
「はい、お陰様で」
この世界でポーションは希少なものだ。
回復魔法、魔法付与、それらを同時に使えないとポーションは作れない。
魔法属性が1つでもあれば「大魔道士」と崇められるこの世界で、回復魔法の『聖属性』魔法付与の『無属性』を有している者は数えるほどしかいない。
この王宮でもポーション作りができる人物は1人しかおらず、1日に作れるのは1本がやっとなのだ。
「それでは始めるぞ。まず、分裂状態の勇者パーティーについてだが•••」
話し始めたクロエは、直ぐに言葉に詰まり、頭を抱える。
「当面、冒険者ギルドから優秀な人物を借りるしかない」
「Cランクの冒険者、ですよね•••」
「アリナタ、前回の惨敗から不信感を持っているのは分かるが、魔物達は待ってくれないのだ」
「はい•••」
勇者パーティーの目的は、王都はもちろん、国内に発生する魔物の討伐•••。
魔物は、国内の外側から段々と中心の王都に迫ってきている。
このままではいずれ、王都にも被害が及んでしまう。
「私から冒険者ギルドには依頼をしておくわ」
「お姉様、次の討伐ターゲットはランクAの魔物でしたよね?」
「そうよ。キラーピッグ(A)の討伐」
「であるならば、冒険者ランクCでは太刀打ちできません」
「分かってるわよ!!けどね、他に策がないのよ」
クロエは目を充血させ、怒りを宿した表情で言い放った。
クロエは策がないと言うが、私にはある。
「お姉様。私にいい考えがありますの」
「み、ミーシアが??すごく怖いけれど、一応、話してくれるかしら?」
「ええ。ネビルアント(B)から私達を助けて下さった美しい殿方、美しい戦士様を探すのです」
「•••」
「流石、ミーシア様!!」
クロエはその整った容姿からは想像できない程あんぐりと口を開いたまま固まり、アリナタは私の考えに賛同してくれた。
「そうでしょう、アリナタ。では、さっそく探しましょう。【パンドラ】を持って来れる?」
「はい、お待ち下さい」
アリナタはいったん部屋から出ると、直ぐに30センチ程の大きさの水晶玉【パンドラ】を持ってきてくれた。
因みに、左手を失ったアリナタだが、きっぱりと特別扱いを断られ、今まで通りの侍女として接せて欲しいとお願いされている。
「あの美しい殿方の強さは、間違いなくランクCより上ですわ。しかも、戦い慣れている状況から、冒険者の可能性が高い!!」
「おぉぉぉー」
「ですので、まず、冒険者ランクBを検索してみましょう」
「ですが、ミーシア様。この世界ではCランクが最高で、その上に該当する者はいないと言われていますよ」
「そうでしたわね。では、最初にCランクを検索してみましょう」
私は【パンドラ】のランク選択欄で『ランクC』を選ぶ。
《該当:1,026人》
「多いですね。名前も分からない美しい殿方ですから探しようがないですわ。やはりここは•••」
【パンドラ】のランク選択欄で『ランクB』を選ぶ。
《該当:0人》
「該当者なし•••」
「冒険者では、ないのでしょうか•••」
私とアリナタは肩を落とし、2人で顔を見合わせてため息をついた。
「ちょっと、操作を変わって」
その時、口を開けて固まっていたクロエが私を押し退けるように【パンドラ】の前に座った。
私が画面を覗き込むと、信じられない内容を入力していた。
『検索者氏名:マルティナ•プリズム』
『性別:男』
まだあのデブに未練があるとは、私は心の底から呆れ、ため息を吐いた。
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【更新頻度】
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