第16話 ダケレスの街とリリーナの村
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家の扉を開けると、そこには自分のお腹の辺りで両手を組み、仄かに顔を赤くしているミーナの姿があった。
「ミーナ?どうしたんだこんな早くから?」
「ちょっと、話せないかな•••」
「別に構わないけど、中に入るか?」
「ううん。できれば、一緒に村の中を歩きたい」
ミーナはそう言うと、俺の腕を掴んで家の外に引っ張った。
家の扉が閉まる隙間から、父さん母さんがニヤニヤしているのが見えたため、少し睨んでおいた。
ミーナは掴んでいた腕をそのまま下げて手を繋いできた。
俺のことを虐げ、冷たく接してきてたとはいえ、ミーナは誰が見ても可愛い女の子で、そんな子に手を繋がれて思わず頬が赤くなり、心臓が高鳴なる。
「ど、どうして手を繋いでるのかな?」
「昔はこうして歩いてたじゃない」
「それはそうだけど•••」
「ねー、マルティナ。婚約破棄の話は本当なの?」
ミーナは上目遣いで顔を覗き込みながら聞いてくる。
確かに私より身長が10センチ以上低いから必然的に上目遣いになるのだけれど、これはなんと言うか、照れてしまう。
「本当だよ。勇者パーティーも終わり」
「そ、そうなんだ」
ミーナはここ数年、俺には決して見せてくれなかった愛くるしい笑顔を浮かべた。
けれど、すぐにその笑顔は消え、どこか苦々しく、真剣な表情に変わった。
「私ね、マルティナが勇者パーティーに呼ばれて、お姫様と婚約ってなって、どう接していいか分からなくなっちゃったの。だから、ここ数年は思ってもない酷いことを言っちゃって、本当にごめんなさい」
ミーナは立ち止まると俺から手を離し、その場で深々と頭を下げた。
しばらくして頭を上げたミーナの目からは、涙が溢れていた。
「ミーナ•••」
「本当にごめんなさい。謝っても許されないかもしれないけど•••」
「ミーナ、もういいんだよ。気持ちは分かったから」
「•••ありがとう。これから許して貰えるように、いっぱい頑張るから」
ミーナに笑顔が戻ると、再び手を繋いできた。
手を繋ぐ行為、これから頑張ると言う言葉、少し気になった私は疑問を素直に聞いてみた。
「ミーナ、手を繋いだりして、領主のミケーレと婚約してるんじゃないのか?」
「ああ、あれね。婚約はしてないよ。領主様は正妻もいるし側室も何人もいるし、きっと、私を妾にするために言い寄ってきてるのよ」
「妾!?けど、話は婚約として来てるんだろ?」
「そうだけど、私もお父さんもお母さんもバカじゃないから、あいつの考えていることくらい分かるよ。村娘1人、騙してもどうとでもなるって思ってるんでしょ」
やはりミケーレは噂通りの男なのだろう。
確か、ミケーレの住む街ダケレスは、魔物の襲撃が予想されていた場所。
サングラニト王国の勇者パーティーでの会議でその話がでた際、ダケレスとリリーナ村は馬車で1日と近い距離にあり、個人的に気になったのでよく覚えている。
そんな危ない状況の中、自分の妾探しをしているとは、とてもここら辺一体を治める領主とは思えない。
「ねー、聞いてる?婚約の話は断ってるから大丈夫。本気なら契約書を用意してくれって、言ってあるし。それにね、私の両親はマルティナとの•••」
「た、大変だーーー!!」
ミーナの話を遮るように、ミーナの両親が村長と一緒に慌ててこちらに走って来た。
「明日、ミケーレがミーナのことを迎えにくると手紙が来た!!」
その言葉に嫌な予感がした私は、サングラニトの冒険者ギルド、ギルドマスターのセリアに伝鳥を送った。
▷▷▷▷クロエ◁◁◁◁
サングラニト王国の第一王女、クロエ•リル•サングラニト。
私はマルティナ様から命を助けていただいた
後、直ぐに王城へ戻り、父と母である国王と王妃、勇者パーティー所属で妹の第二王女ミーシア、侍女のアリナタ、サポーター役のアーロンを直ぐに大会議室に呼んだ。
100人は入れるだろう大会議室に、私を含めた6名が楕円形のテーブルに座っている。
皆が集まって直ぐ、私は本題に入った。
「マルティナ様を勇者パーティーから追放したのは本当なの?」
「あらお姉様、もうお聞きになりましたの?ええ、そうですわ。あの無能なデブは追放しました」
「な、なんてことを•••」
「おい、ミーシア、私はそんなこと聞いてないぞ」
国王のガブリエル•リル•サングラニトがテーブルから身を乗り出し、ミーシアを見た。
「大丈夫ですわ、お父様。魔物は全てこちらにいらっしゃるアーロン様が倒していたのです。あのおデブは何もしていなかったのですよ」
「な、なんと•••」
「まぁ、そんなんですの?」
国王ガブリエルの後に、王妃のプリリア•リル•サングラニトも続いた。
「そうなんですわ。だから、アーロン様がいれば問題ありません」
「アリナタ、侍女であるあなたは止めなかったの!?」
「は、はい。ミーシア様がおっしゃる通りですし、問題ないかと•••」
私の少し語気を強めた問いかけに、アリナタは一瞬肩をビクッと震えてからそう答えた。
「はぁー。契約書も交わしたの?」
「もちろんですわ」
ミーシアは得意気に契約書を空中に表示させる。
▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎
◇契約内容◇
サングラニト王国の勇者パーティー追放に関して、今後、いっさいお互いに関わらない。
※他の王族、第三者を通じた関与も認めない。
◇契約破棄条件◇
〈マルティナ•プリズム〉
サングラニト王国王妃、プリリア•リル•サングラニトとの結婚
※書面上だけではなく、夫婦としての営みが確認されて初めて条件達成
〈ミーシア•リル•サングラニト〉
私の前で土下座で謝罪し、一生、奴隷となること
◇契約違反時の罰則◇
当該者の死
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契約書の内容を見て、私は絶句する。
マルティナ様の破棄条件がお母様との結婚•••。
これは、絶対に父である国王が飲めない条件ということを考慮している。
私であれば直ぐにでも結婚するのに•••。
「何じゃこれは、妻は誰にも渡さんぞ!!」
「あら、あなたってば。大丈夫。私はあなただけのものですから」
「おおー、プリリア」
「あなた•••」
バンッ
私はテーブルを強く両手で叩いた。
「マルティナ様は、お父様とお母様のような仲睦まじい夫婦が理想だと、以前話していました。これは、絶対に破棄させないための、決して勇者パーティーには戻らないと言う意志の現れですわ!!」
「おや、さっきは怒鳴ってしまったが、良い子じゃないか」
「本当ねー」
私は話にならない国王と王妃を無視し、ミーシア、アリナタ、アーロンの勇者パーティーに鋭い視線を向ける。
「自分達が何をしたか思いしりなさい。ダケレスの街とリリーナ村の中間地点にネビルアント(B)の群れが確認されています。猶予がありません。直ぐに勇者パーティーは現地に向かいなさい!!」
「り、リリーナ村•••」
それまで俯き黙っていたアーロンが、顔を上げて村の名前を呟くと、その場に立ち上がった。
「準備して、直ぐに行きます。私では倒せませんが、リリーナ村には、マルティナ様がいるかもしれませんから」
アーロンはそう言うと部屋を出ていき、ミーシアとアリナタも追いかけるように出て行った。
リリーナ村•••
そこにいるのですか、マルティナ様•••
私は2人で手を握り合っている国王と王妃を見てため息をついた。




