第13話 物語と現実
今後の更新頻度※、話数の参考にさせていただきますので、是非、感想や★マーク、どんな形でもいいので教えて下さい。
※現段階で9月12日は2話分投稿
9月13日〜9月17日は毎日1話分投稿
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▷▷▷▷ルイファ◁◁◁◁
私は、ティーレマンス王国の勇者パーティーに所属している回復魔法使いのルイファ。
勇者パーティーと言っても、勇者であったマルティナがいなくなったため、ただの平均的なパーティーだ。
今、私はティーレマンス王国の第三王女であるティエルの我儘の所為で、イチボ村を抜けた先にあるモウモウの生息地に来ていた。
100メートルほど離れた場所に、牧草を食べているモウモウ(A)1体の姿があった。
離れていても分かるその巨体と鋭い角、決して普通の人間では勝てるはずがないと再認識させられる。
牧草を食べているけれど、決して草食ではなく、肉でも何でも食べる雑食。
止める私の声には誰も耳を貸さず、騎士100人と騎士団長のマークがゆっくりとモウモウ(A)に近づいていく。
確かに、100人の騎士が集まれば1体は倒せると言われているが、それは経験からの話ではなく、ただの机上の空論。
圧倒的強者に対して、力もスピードも劣る存在が束になったところで勝てる訳がない。
「いけぇぇぇぇーーー!!」
騎士団長のマークの声が響くと、騎士100人が剣を抜きモウモウ(A)に突っ込んでいく。
騎士を見たモウモウは、巨体に似つかないスピードでその場で360度回転し、角で騎士達を攻撃した。
「ぐはぁ」
「うわぁぁぁぁー」
「が、が•••」
360度包囲して襲い掛かった騎士、約30名が瞬殺された。
怯んだ騎士達にモウモウは突進をし続け、5分も持たずに全員が死んだ。
騎士達も反撃をしていなかった訳ではないが、剣が皮膚を通らずダメージを与えられないのだ。
騎士達が倒れていくその光景を見ていた私の体が激しく震え出す。
恐怖からくる震えは、自分の体を抱き締めても抑えられない。
隣を見ると、ティエルも同じように震え、カチカチと歯が当たる音も聞こえる。
「こ、こんなことが•••」
少し離れたところで、1人残されたマークが震えながら呟いている。
そんなマークを、モウモウ(A)が睨む。
よくある物語だと、勇者を追放したものが魔物討伐に行き、実力が足らずに逃げ帰るシーンがあるが、現実は違う•••。
決して、逃げられない•••
「あたれーーーー」
マークがマルティナから奪った剣を振るうと、モウモウ(A)に当たった。
そう
当たっただけだ。
剣は真っ二つに折れた。
震えるマークはその場に腰を抜かし、動けずにいる。
私とティエルは助けようにもそんな力はないし、ましてや恐怖から体を一歩も動かせずにいた。
「やだ、やだ、た、助けてく•••」
モウモウがその大きな角でマークのお腹を突き刺さと、そのまま頭を振って上空にマークの体を投げ飛ばす。
また、突き刺しては上に投げる。
既にマークは声を発しない。
誰が見ても今の状況は分かる。
もう、マークは死んでいる。
モウモウ(A)は刺して投げる、まるで遊んでいるような行動に飽きると、マークを食べ始めた。
「な、なんてことなの•••」
「静かに逃げましょう」
「•••」
流石のティエルも反論してこない。
2人で静かにその場を後退りし始めた時、マークを食べていたモウモウの顔が上がり、こちらを睨んできた。
見つかった•••
モウモウは超スピードで私達に向かってくる。
私は慌てて鞄から『転移の宝珠』を取り出すと、隣にいるティエルの腕を取った。
「ティエル、あなた体重は?」
「えっ?」
「いいから早く答えて!!」
「43キロ•••」
私は45キロ。
2人合わせて88キロ。
これなら転移できる。
私は『転移の宝珠』を使用すると、2人の体が透けていき、刹那、視界が一気に変わった。
目の前の景色は、ティーレマンス王国の王城、謁見の間だった。
突然現れた私達に、王妃であるマニーシアが美人顔を崩し、固まっている。
私は転移が成功したことを確信すると、その場に膝から崩れ、肩から大きく息を吐き、吸っては吐きを繰り返した。
過呼吸のように苦しく、うまく呼吸ができない。
隣のティエルも同じような状態で、さらにその場で嘔吐していた。
分かってはいたけど、やっぱり、これが現実なんだよ。
物語のようにはいかない。
マルティナが追放されたあの日、手渡してくれた『転移の宝珠』がなければ、私もティエルも間違いなく死んでいた。
『転移の宝珠』はマルティナですら作るのに苦労する物で、合計体重90キロまでのものを1度だけ転移させてくれる。
やっぱりマルティナはすごいな。
今度会ったら、お礼を言って、抱きしめてもらおう。




