第12話 もう一つのモウモウ討伐
今後の更新頻度※、話数の参考にさせていただきますので、是非、感想や★マーク、どんな形でもいいので教えて下さい。
※現段階で9月12日は2話分投稿
9月13日〜9月17日は1話分投稿
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▷▷▷▷ティエル◁◁◁◁
ティーレマンス王国の第三王女、ティエル•ミル•ティーレマンス。
「ふざけるんじゃないわよ!!料理ひとつ作れないの!?」
私は怒りのあまり、王城にいる王族専属料理人達に罵声を浴びせる。
「も、申し訳ありません」
「あなた達、あのデブが料理をしているのを見ていたのよね!?だったら、なぜ作れないの!?」
「確かに傍で見ていましたが、我々の知らない調理工程に多種にわたる調味料、とても真似できません」
「それでも王家の料理人なの!?この役立たずが!!」
王族専属料理人達、数十人は私の前に跪いて頭を下げた状態だ。
それにしても、お母様の生誕30周年パーティーまであと5日だというのに、この役立たず共の所為で提供する料理の目処が立たない。
ハンバーグ、トンカツ、サンドウィッチ、すき焼き、他にも色々食べたが、どれも美味しかった。
そのどれもが王家で出される料理を遥かに凌駕している。
サンドウィッチ•••
あれは美味しかったけれど、確かパンに具材を挟んだだけだった。
パンなら普段の食事に出ているから用意は可能なはずだ。
「サンドウィッチは??あれならパンに具材を挟むだけなんだから作れるわよね??」
「•••」
「嘘でしょ?料理人のくせにサンドウィッチも作れないの!?」
「申し訳ありません。あのように柔らかく香り豊かなパンは作れません。それに、具材を挟む際に塗っていた白いソースが何なのか検討もつかないのです•••」
私は言い訳ばかりの料理人の態度に憤り、調理場に置いてある皿を数枚壁に向かって投げつける。
パリンッ
バリンッ
それでも私の苛立ちは収まらない。
落ち着くのよ私•••
私はこの国の王女であり、聡明で美人、誰もが羨む存在なのよ。
各国の王子も今度のパーティーで私のことを好きになるに違いない•••
好き
すき焼き•••
「そうだわ。すき焼きよ!!あの時は参加者の目の前でお肉を焼いて大層盛り上がったわ。あれなら肉を焼くだけだし、何とでもなるでしょう!?」
「•••」
「冗談でしょ?肉ひとつ焼けないの!?」
「申し訳ありません。お肉を焼く際に使用していたソースの問題もあるのですが、そもそも、あのお肉は市場には決して出回りません」
「なぜよ?いつも食べてる羊の肉なら直ぐに手に入るでしょう?」
この世界で肉料理といえば、ほぼ羊肉だ。
正直臭みが強く、私は嫌いだが、市場では普通に売っており、王族•貴族だけではなく庶民でも買うことができる。
「それは、あのお肉が牛肉•••、モウモウ(A)のお肉だからです」
「なっ!!モウモウ•••」
冗談ではない。
モウモウ(A)といえば、騎士を100人連れて漸く1体倒せるかどうかの強敵。
モウモウは基本群れているため、複数体を同時に相手をすることになれば、一体何百、何千の騎士が必要になるか想像もできない。
だが、やるしかない。
マークはあのデブから剣を奪ったのだから、きっと倒せるはずだ。
「いいわ。今からモウモウ(A)を討伐してくるから、あなた達はソースを完成させておきなさい!!」
「ま、まさかモウモウを!?お止め下さい。マルティナ様にしか決して倒せない魔物でございます」
「黙りなさい!!あのデブの名を私の前でするな!!」
私は料理人を平手打ちすると、そのまま調理場から出て行く。
料理人達は既にマルティナが勇者パーティーから追放になったのを知っているのだろう。
元々、料理人達とマルティナは仲が良かったから不満もあるのかもしれない。
だけれど、あのデブが私より優れているかのようなあの発言は許すことができない。
私は苛立ちから唇を噛み締めながら歩き、騎士団長のマークと回復魔法使いのルイファの部屋を順に周り、遠征の準備をするよう伝えた。
マークは少し焦りの表情を浮かべたが、直ぐに手元にある剣を握りしめ、夜、私を求めてくる時と同じような野獣の目になった。
ルイファは生意気にも「危険」「止めるべき」などと言って来たが、私が決めた限り、従う他、道はない。
翌日、私とマークとルイファ、それに騎士を100人連れてモウモウ(A)が生息しているという、イチボ村に出発した。
生誕パーティーまで期間に猶予がないため、馬を酷使して進み続け、早朝出発で夕方前には到着できた。
騎士の1人がイチボ村の村長に話を聞きに行ったところ、村周辺にいたモウモウは勇敢な1人の冒険者に退治してもらったので既にいないという。
何かの間違いだろうが、村を更に進んだ所にモウモウの生息地があることを聞き、そこに向かうことにした。
「モウモウを1人で?しかも、10体も?田舎の村人は嘘つきか、幻覚を見たのかしら」
「ふん。そんなことができるのは、私くらいさ」
私とマーク、2人で乗っている馬車の中でそんな話をしていると、マークが私にキスをしようと隣に移動してきた。
この男、今の状況が分かっているのかしら?
それに、こんなに状況判断ができない馬鹿だったかしら?
「モウモウを発見しました」
どうやってマークのキスを躱そうかと考えていた時、馬車の外からモウモウ発見の知らせが届いた。
「続きは、モウモウを倒してからだな」
「ええ、そうね」
モウモウを倒してくれれば、いくらでもしてあげるわ。
私達が馬車の外に出ると、そこには運良く1人で牧草を食べているモウモウがいた。
私は思わず笑みを溢す。
私は王女、やはり運があるようね。




