魔剣キリアムの伝説
新章11話です
「……魔剣、だと」
俺は思わず、エレナとセラムのことを見やっていた。
精霊の真の姿――霊装のことを思い浮かべたからだ。
だが、魔法大戦が勃発したのは999年前。そのとき『次元の狭間』は話に出てきていたが、その先にある精霊や精霊界については出てきていなかったはず。
つまり、精霊界の存在は知られていなかったんじゃないのか。
その精霊界と人間界とを『扉』で繋いだのは、666年前――俺やマクガシェルの時代になってからの話だ。
となると、この『魔剣』と『霊装』は違うモノだろうか?
……なんてことを想像してみるけれど、結局は確証なんてない。
やっぱり、情報が必要だ。
それこそ、ネイピアに話を聞けばいろいろと教えてくれるけれど、ネイピアの身体も時間も有限だ。あまり頼りにしすぎるべきじゃない。
ただ、一つ言えることは――
「皇帝ルートボルフは、きっと、それを知っているんだろうな」
「でしょうね――」
ネイピアは溜息混じりに呟いて、
「そもそも、私がこの情報を手に入れたのは、公文書の処分場にこっそり忍び込んで回収してきたからだったのだもの」
「……おう」
この御嫡女さまは、いったい何をしているんだか。
「そこでガルビデの書き記していた資料を発見した私は、ガルビデの私邸にも忍び込んで調査を進めたのよ」
「……うん?」
「そこに、魔剣キリアムの情報もあったっていうわけ。しかも……」
「まだ余罪があるのかよ」
「余罪とは失礼ね。そもそも、処分予定の公文書はゴミも同然。ガルビデの私邸は持ち主が居なくなって国庫に帰属。ほら、国の関係者である私が調査しても、少しくらいしか問題は無いわ」
「あ、少しは自覚してたんだな」
「そんな些細なことは置いといて――」
ネイピアは話を強引に戻して、
「実は、魔剣キリアムも、999年前に封印されていたのよ。魔王ゼグドゥが封印された直後にね」
「……じゃあ、まさかその封印も」
「もうすぐ解けてしまうんでしょうね。……それとも、実はもう解けてしまっているのか」
「モンスターの狂暴化とも、無関係ってわけじゃないだろうな」
ネイピアは頷くと、改めて神妙な顔をしてきて、
「そして、その封印の地であるゼガ島に、皇帝ルートボルフは帝国軍の主力を派遣しているのよ」
「…………」
俺は、何と言っていいか判らずに声を詰まらせた。
……まさか、皇帝は魔剣の復活を狙っている? 魔王復活を謀ったときのように?
だとしたら、今度こそその陰謀を阻止しないといけない――どんな手を使ってでも。
ついそんなことを考えてしまって、そしてそんなことを皇帝の実の娘に言えるわけもなく、言葉が出なかった。
「そんな顔をして。きっと時代が時代なら、不敬罪に該当するようなことを考えているんでしょう?」
俺は、ネイピアの皮肉に肩をすくめることしかできなかった。我ながら判りやすい。
「でも、幸か不幸か、帝国軍はまだ魔剣の有力な手掛かりは見つけられていないそうよ。あの島に伝説がある、ということしか判っていない」
「なるほど。とすると、まだ皇帝の調査を阻止することもできるってことか」
「逆に、皇帝を出し抜くこともできるし、協力をすることもできる」
「……そうだな」
正直に言えば、皇帝も帝国軍も、戦闘になったら俺たちの相手にはならない。だから俺たちは、何をするにも強引な手段で実行していくことができるだろう。
かといって、必要も無いのに対立して互いを妨害したり、足の引っ張り合いをするのは無意味なことだ。
あくまで、今回の俺たちの目的は、『魔剣復活の阻止』ということになる――もし万が一既に復活してしまっていたら、『魔剣の破壊ないし再封印』ということになるか。
だとすれば、お互いの目的をすり合わせたうえで、協力できるところは協力して目標を達成していくのが効率的だ。
……じゃあ、これからやることは決まったな。
「エレナ。これからちょっと、大仕事を一緒にやろう」
次話の投稿は、本日20:30を予定しています




