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新しい日常、新しい異変

懲役666年、改めて先行連載スタートです

一章



「はいー、みなさんこちらですよー」


 帝都グランマギアへと続く街道、30人弱にもなる賢者学園一回生の生徒たちを引率しながら、プリメラがのんびりした口調で声を上げていた。

 俺たち一回生は、まるで子ども扱いされていることに気恥ずかしさを覚えながらも、プリメラの前に整列する。

 特に位置は決まっていなかったけれど、街道を歩いていた位置関係がそのままに、隣にはエレナとセラムが立って、すぐ前にはネイピアが立っていた。


 この辺りには、自分たち賢者学園の生徒しか居なかった。もし誰か他の視線があったら、クスクス笑われていたかもしれない。

 ふと、昔の学校行事にあった遠足を思い出すような光景だった。

 帝都以外の都市にある魔法学園まで学園交流会に行ったり、帝都の北に聳えていたシュテイム山に登ったりしたこともあった。


 666年経った現在も遠足があるのかは知らないけれど、昔はモンスターを近づけないための魔法アイテムが普及したりしていて、少ない護衛で一般市民が町の外に出ることもできたのだ。

 ……もっとも、その魔法アイテムの力の源は、酷使されていた精霊の力が吸い取られて利用されていたものだったんだけど。

 嫌なことを思い出しそうになって、俺は強引に頭を振って誤魔化した。


「今日は、対モンスターの実戦を含めた野外実習をしますよ。これから、賢者学園一回生のみなさんには、帝都まで自由に帰っていただきます。一人で行ってもいいですし、誰かとパーティを組んでもいいです」


 プリメラがそう言った瞬間、案の定、エレナとセラムが俺の腕を掴んできた。

 だが次の瞬間、前に立つネイピアが鋭く振り返ってきたものだから、エレナとセラムはサッと手を離して明後日の方向を向いていた。


 ……誤魔化すのが下手すぎる!

 って言うか、ネイピアも察するのが早すぎる!


 まぁ、それだけ日常的に似たようなことをしてきたからなんだけど。

 俺は適当に苦笑するしかなかった。


「おほん――」

 プリメラは、俺たちを咎めるように、聞こえよがしに咳払いをしてから、

「今回、大切なことは、道中のモンスターを狩りながら、無事に帝都まで辿り着くことです。特に最近は、帝都周辺のモンスターが狂暴化していて、それに見たことも無いような進化をしている、とも報告されています」


 その話を聞いて、エレナとセラムがさりげなく視線を送ってきた。俺は苦々しく感じながら、小さく頷きを返す。


 ……間違いなく、魔王ゼグドゥが復活してしまった影響だろう。


 復活と言ってもそれは不完全だったし、ほんの数分のことでしかなかった。それに俺たちがすぐに撃退をした……とは言っても、完全に倒せたわけじゃない。奴の片腕を斬り落とし、完全復活を妨げて『次元の狭間』へ追い返しただけだった。


 あれから一週間。

 魔王ゼグドゥの脅威は、終わったわけじゃない。


 まるでそのことを知らしめるかのように、この人間界では、人々の脅威になるような異変が相次いでいるのだ。

 その一つが、プリメラも言っている、モンスターの凶暴化だ。


「一応、今回の野外実習に先駆けて、帝国軍のみなさんが事前調査をした上で、能力的に厳しそうなモンスターは倒しておいてくれています。ただ、もしみなさんが強力なモンスターと遭遇しても、極力逃げないでください。みなさんが逃げるということは、そのモンスターを放置するということ。つまり脅威が残ったままになってしまうということです。なので、自分たちの力で倒せないと察したら、すぐに助けを呼んでください。一人で倒してもチームで倒しても、実習の評価は変わりませんので、くれぐれも無茶はしませんように」


 プリメラの話を聞いて、周囲の視線がチラッと俺の方に――エレナとセラムとネイピアも含めた俺たちに――集まっていた。

 きっと、いざとなったら俺たちを頼ればいい、という感じなんだろう。

 それはそれでいいと思うし、嬉しいけど、できることならみんなにももっと強くなってほしいんだが。


 せめて、住民を護ったり避難させたりできるくらいの能力があれば、今後何かがあったときには、後方の憂いなく戦えるのだから。


 ……何かがあったとき、か。

 思わず頭に浮かんできたのは、魔王ゼグドゥの顔。

 ……あの顔。

 魔王ゼグドゥの顔は、俺にそっくりだった。

 まるで、30代まで年を取った俺。

 それとも、あるいは……。

 ふと嫌な想像をしてしまって、誤魔化すように頭を振った。だけどその程度じゃ誤魔化しきれなかった。


 ……あるいは、俺の父親なのか?


 俺には親の記憶なんて無く、孤児として育てられた。その父親が、まさか、999年前に封印された魔王だっていうのか?

 そんなバカな。

 333年も離れているんだ。年代も合っていないじゃないか。


 俺は、深呼吸するように溜息を吐いて、気を落ち着けた。

「それではみなさん、行きましょう」

 プリメラの声を合図に、俺たちは野外実習を始めた。

本日は、4回の投稿を予定しています

次話の投稿は、本日19:30の予定です

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