表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
74/122

プリメラの秘密の日常

2巻の20話です。

4 


 ドンッ!

 夜中に寮の壁が叩かれた音で、目が覚めた。


 ……まぁ『叩かれた』って言うか、『不可抗力でぶつかってる』みたいなんだけど。

 主に寝相の悪さで。


「ジードくん、起きちゃった?」

 隣から、コショコショと内緒話をするようにエレナが言ってきた。

「ああ、今回も凄い音だったからなぁ、プリメラ」

 俺も内緒話のように返す。

 するとセラムが、コショコショと一言。

「ジードの眠りを妨げる者には、永遠の眠りにつく権利をあげる」

「いや怖いってば」

 苦笑しながらセラムの顔を見た――九割本気の顔だ。


「ジードくん、このまま眠り直す? それとも、ちょっとおしゃべりする?」

 エレナがコショコショ聞いてきた。

 声の調子と、表情からして、ちょっとおしゃべりしたいらしい。

「じゃあ、眠くなるまでおしゃべりするか」

「んふふ、はーい」

「ん」

 ふたりとも、どこか嬉しそうだった。

 この時間に俺が起きてるのも珍しいしな。


「そういや、ふたりって、俺が寝てるときも起きてるわけだけど、そのときどんな話をしてるんだ?」

「……え?」「…………」

 ……あれ。どうして微妙な空気になってんの?


「ちょっと、ジードくんに話すのは恥ずかしいなぁって」

「え?」

「ジードに言うのは、照れる」

「ええ?」


 ……恥ずかしいこと話してんの? なんかすごく気になるんだけど?

 ……今度、こっそり寝たフリしててみようかな。


「ジード。今後もし寝たフリしていたら、許さない」

「ぅえ⁉ も、もちろんだよ。そんなことするわけないじゃないか」

 ……心を読まれたみたいになって、思い切りうろたえちゃったし。

 そんな俺を見て、ふたりが笑う。


 するとエレナが、まるで子供を叱るような口調で、

「ジードくん、ホントに寝たフリしてたら、千切っちゃうからね?」

「何を⁉」

「ジードが寝たフリしてたら、削ぐ」

「だから何を⁉」

 ふたりに聞こうとしても、不敵に微笑み続けるだけで、教えてはくれなかった。


 ふと、そのとき廊下の方で、ガチャンと扉の閉まる音がした。

「あれ? プリメラが出掛けたのか?」

 こんな時間に――朝の4時なのに。

「そだね。プリメラちゃんってここに来てからはいつも、夜中とか早朝に出掛けてるんだよ」

「へぇ。どこに行ってんだろ?」

「気になるの?」

「え」


 ……ここは選択肢を間違えると、魔眼をくらう羽目になるヤツか?

「えぇと、気にならないと言えばウソになるかもしれないけど気になるかと問われたら断言できないって感じかな?」

「どっち」

 セラムに冷静に突っ込まれた。

 まぁ、そうだよな。

「気になるなら気になるって言えばいいのに――」

 エレナが含み笑いしながら言ってきた。

 でも正直に言ったら嫉妬して魔眼を喰らわせてくるときありますよねエレナさん? とは言わないでおく。

「でも、せっかくジードくんが起きてるなら、ちょっと話してもいいかも」

「ん? 何かあるのか?」

「うん。実はプリメラちゃんね――」



 早朝4時半。

 まだ日も昇らない、だけど少しずつ東の山の端が赤みを帯びてくる時間帯。

 そんな陽の光も届かない、賢者学園の地下闘技場に、プリメラは居た。


 俺とエレナとセラムは、出入口の影から顔を上下に重ねて並ぶような格好で、闘技場を見つめていた。

 時折り、闘技場の地面が数秒だけカッと明るくなって、そして数分ほど落ち着いてから、またカッと明るくなっている。

 プリメラは、魔法の練習をずっと続けていた。

 特に、魔法陣の練習を。


「彼女は、いつもこんな感じなのか?」

「私の《風》で気配を察してる感じは、そうだね」

「だとしたら、朝にしてはハードだな」

 短いインターバルで魔法を連発していけば、当然魔力切れを起こしてしまう。

 ましてや、プリメラは巨大魔法陣を描くため、そこでも魔力を浪費してしまっているはず。

 ……そこが少しでも効率化できたら、良いのかもしれないけど。


 でも、今のプリメラは、巨大魔法陣を描けるからこそ、今の職業に就けて、そして副団長に抜擢されている。それならむしろ、この巨大魔法陣を活かせるような話ができたらいいのかもしれない。

 そんなことを考えていると、ちょうどプリメラが休憩に入ったようだった。

 俺たちは改めて、地下闘技場に入って行った。


「おはよう、プリメラ」

「えっ? ……あ」

 プリメラが安堵したような表情になった、と思ったらすぐ申し訳なさそうな顔になって、

「あの、すみません。こんな時間に、隣からの物音で起こしちゃったっていうことですよね……」

「いや違うって――」

 実際は起きちゃったんだけど、本題はそっちじゃない。


「プリメラが、魔法陣の練習をしてるって聞いてさ。魔法理論好きの俺としては、居ても立っても居られなかったんだよ」

「わ、そうなんですか――」

 プリメラの表情が明るくなった。

「でも私、魔法陣の効率化も勉強したいんですけど、やっぱり大きい方にもこだわりたいんですよ」

「まぁ、せっかくそれで結果も出してるんだもんな」

「そうなんです」

「それなら、力になれると思うぞ」

「え⁉ 本当ですか?」

「ああ。効率化を勉強するには、何が非効率なのかも知っておいて損はないし。それに、大きな魔法陣のメリットとか、ちょっとした遊びなんかも教えられるぞ」

「それなら是非、大きな魔法陣のメリットから教えてください」


 プリメラは前のめりになるように聞いてきた。

 俺は笑顔で頷いた。

次話の投稿は、本日(6/12)21:00を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ