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女生徒たちに囲まれて……

第39話です。


 結局、ナックはふらふらと早退していった。

 男子生徒たちは何事も無かったかのように、俺たちと距離を取りながら演習を続ける。

 中には、比較的薄い制服を着た男子がチラチラとこちらを気にしていることもあったが、見ているだけで話し掛けてくることもなかった。


「……あ、あのう」

 遠慮がちな、消え入りそうな声が聞こえた。


 そこには、クラスの女子生徒たちが全員集まって立っていた。

「……その、ネイピア様から聞いたんですけど、もし、あなたの迷惑でないのなら、どうか魔法が強くなる方法を私たちにも教えてください!」

「「「お願いします!」」」

 そう言ってみんなで頭を下げてきた。


「あ、あぁ。迷惑なものか。俺で良ければ、喜んで教えるよ」

「わぁっ! ありがとうございます!」

「「「ありがとうございます!」」」

 そう言って、またみんなで頭を下げてくる女子生徒たち。

 かと思ったら、急に頭を起こして俺を見上げてくると、


「私たち、男子たちがコルニス先輩の名前を使って脅してくるの、本当に嫌なんです」

「それね! さっきのやりとりも、ホント頭おかしいんじゃないのって」

「カッコ悪いし、キモいし、ダサい! 自分一人じゃ何もできませーんって、威張りながら言ってるようなものだもん」

「「「ねー」」」

 ここぞとばかりに、クラスの男子の悪口を言いまくる女子生徒たち……まぁ事実なんだろうけど。


 その一方では……

「ふーん。ジードってば喜んで教えるんだ? そりゃ嬉しいでしょうねぇ。若い女の子に囲まれてさぁ」

「私たちは所詮、680歳を超えている。もうジードには喜んでもらえない」

 と、精霊たちがやさぐれていた。

 俺たちの輪から少し離れた位置で、しゃがみ込んでブツブツ呟いている。

「だからって、歳の差666年はどうかと思うよ。どれだけ年下が好きなのさ。こういう趣味の男性って、ロリコンって言うらしいよ」

「あるいは、制服フェチの可能性」

「あぁっ! ……そういえば、私たちが制服を着たときも、すごく喜んでくれてた!」

「つまり、制服で攻めれば、私たちもまだ大丈夫」

「希望が見えたね! セラムちゃん!」

「若いだけの女には負けない」


 ……好き放題に言ってくれるなぁ。全部聞こえてるし。

 つーか、エレナもセラムも、負けないどころか完全勝利してるんだっての。

 誰も相手にならないくらいに圧勝なんだぞ。

 そのことを、あとでちゃんと伝えておこう。


 そんなことを思いながらふたりを見つめていたら、至近距離から質問が飛んできた。

「ところで、あのおふたりとの関係って、どういうものなんてすか?」

「あ、それ私も気になってた!」

「私も! ネイピア様に聞いたけど、そういうのは本人の口から聞くべきだって」

「そうなんです。だから、ぜひ教えてください!」


 女子生徒たちが俺を取り囲んでいた。

 いつの間にか、逃げ道が消えている。

 しかも、魔法の指導をお願いするときよりも、圧が凄い。

 これは、答えないわけにはいかないだろう。

 つーか、むしろここで正直に答えることで、エレナとセラムを安心させなければ。

 だから俺は、堂々と言い切った。


「彼女たちとは、夫婦だよ」

「「「……え?」」」

 女子生徒たちの表情が、一気に固まった。


「……えぇと、あの、どっちが、奥さんですか?」

「もちろん、どっちもだ」

「「「……えぇ」」」

 女子生徒たちが、一斉に一歩引いた。


 ……いや、まぁ、そうだよな。

 こうなるだろうとは思ったけどさ。

 でも、ここで嘘を吐くわけにはいかないんだ。

 どうしても、あのふたりには、俺の気持ちが変わっていないことを知っていてもらいたいから。

 666年前から、ずっと。


 すると、ドン引きしている女子生徒の中から、恐る恐るといった感じで話し掛けられた。

「……その、噂では、あのおふたりは伝説の『精霊』じゃないかって言われてて、そしてジードさんは、その精霊と契約をしているんじゃないかって。……私たち、その関係を、本人に聞いて確かめたかったんです、けど……」

「…………え」

 そっちの『関係』?


 つーか、精霊の噂なんて伝わってんの? ネイピアの情報統制、どうなってんだよ?

 いや、それは後で文句を言うとして……

 なんて勘違いをしたんだ俺は⁉

 恥ずかしすぎる!

「あ、あはは……。そう、そうなんだよ! 詳しいことはちょっと話せないんだけど、彼女たちは精霊で……」


 こうなったら、積極的に『精霊』のことを話していった方がいいだろう。

 もしかしたら、話をしていく中で、召喚未遂の情報も出てくるかもしれない。

 そんな期待をしつつ、自棄になって話を始めようとした。


 すると今度は、女子生徒たちの目が異様にキラキラと輝き始めた。

 今度は何だ⁉ もう何でも答えてやろうじゃないか!

「それって、精霊と人間の、種族を超えた愛っていうことですよね!」

「……へ?」

 今度はそっちに戻るのかよ⁉


「素敵です! いったいどんな出会いをしたんですか⁉」

「おふたりのどこが好きなんですか⁉」

「はいはーい。私の方が可愛くて若いでーす!」

「男の精霊と出会うにはどうしたらいいですか? 私、人間の男は嫌なんです!」


 なんかもう、いろんな質問やらカミングアウトやらが飛び交っていた。

 さらに俺だけじゃなくエレナとセラムも巻き込むように、女子生徒の輪が広がった。

 逃げ道は、無い。

 俺とエレナとセラムを中心にして、質問の嵐が降り注いできた。

次話の投稿は、明日の2月6日、18時30分を予定しています。

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