愚帝の真意は
新章25話です
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人間界での霊水泉探しを進めていく一方で、俺は同時に、ゼガ島の調査チームの最高指揮官として、その仕事をこなしていく必要があった。
魔剣キリアムが現実に姿を現している以上、そこに人を近づけることは極力避けなければならない。
「ゼガ島での調査任務の最高指揮官として、本日付で、先行して任務に当たっていた帝国軍人15名を、解任する」
俺は、《風》の通信魔法で繋いだ相手に、一方的にその事実を伝えた。
この宣言が正式な効果を持つのか、俺にはよく解らない。
だけど、もしこれが正式な効果が無かったとしても、俺は実力行使をしてでも、誰もゼガ島には立ち入らせない。
その決意を込めた宣言でもあった。
「判った。そのように手配しよう」
相手は、予想に反してすんなり受け入れていた。
「いいのか? 他のメンバーが居なくなったら、あんたの目が届かない所で、俺が好き勝手にゼガ島を探索することになるんだぞ?」
思わずそんなことを言っていた。
「構わぬ、と言っている」
相手の答えは変わらなかった。
いっそ一切の澱みすらなく、皇帝ルートボルフは決断していた。
ルートボルフは続けて、
「それに、もし本当に必要とあらば、我自身がゼガ島へ赴けば良いだけのことよ」
そんなことを、笑いを含むような声で言ってきた。
冗談なのか、本気なのか、俺には判別できなかった。
そもそも、皇帝ルートボルフの意図するところがよく解らない。
魔王や魔剣のことについては、皇帝の立場上、知っていたという。だが、それにしては、まったくもって積極的に対策に乗り出しているようにも見えない。
いっそ、魔王に操られたガルビデに騙されて、魔王復活に加担するようなことにもなっていた。
それこそ、皇帝として前に出てくることすら少なく、影武者説なんてものまで囁かれていた。
それが、今回になって、やけに前に出てきているようにも思える。ただ、その一方で、帝都の護りや壁の修復については、あからさまに娘のネイピアの名を出して任せきりにしてしまうなど、いわば『愚帝』ぶりをいかんなく発揮しているようにすら思える。
「一つ、確かめたいことがあるんだが、いいか?」
俺は、思わず黙っていられなくなって、質問をしていた。
「言ってみよ」
「皇帝陛下は、魔剣キリアムを封印しようとしている。それは嘘じゃないんだよな?」
こんなことを聞いても、俺には嘘かそうでないかを確かめる術なんて無い。
どう答えられても意味の無いような質問だった。だけど、どうしても、聞かずにはいられなかった。
「皇帝ルートボルフ・マギアグラードは、魔剣キリアムを封印しようとしている。それは真実である」
妙に捻ったような答えだった。
それでも、何だか安心感を覚えている自分が居た。
「俺も、魔剣キリアムを封印したい。だから、これからも協力をしてほしいし、こっちからもするつもりだ」
「うむ」
今度は、ルートボルフは短くそれだけを答えた。
俺は、その真意を読み取ることはできなかった。
本日の投稿は、以上です。
次話の投稿は、明日の18時か18:30を予定しています。




