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モンスターによる連携攻撃!?

新章19話です

 フレイムリオンを警戒しながら、俺は通信先のネイピアに話し掛けた。

「ネイピア、双子たちを発送したぞ。あと3分くらいで着くはずだ」


「判ったわ、3分……3分!? 200㎞の距離を?」


「ああ、ざっと、時速4000㎞で飛んで行ってる計算か」

「……そう。頑張って受け止めるわ」

 ネイピアが重々しい口調で言ってきた。


「あ、悪い。思い切りって言われたものだから、つい思い切りやっちまった」

 自分の中で、ネイピアなら大丈夫だろうという謎の安心感があったのだ。

 まぁ、何とかなるだろう。


「とりあえず、そっちは頼んだ。こっちも少し、戦闘に集中する」

「ええ、頼まれたわ。……私の本気の防御力で、受け止めてみせるんだから。ふふふ」

 ネイピアの不敵な笑い声を最後に、通信魔法は切れた。


 何だかんだで、同時に複数の魔法を発動することは非常に高レベルな技能が必要で、負担も大きいはずなんだ。だけどネイピアは、それをさも簡単そうにやっている。

 だからきっと大丈夫。


 それに、ネイピアが受け止められなくても、こちらでそれなりの狙いは付けていた。

 かつて聖山シュテイムが聳えていた――そして今は崩壊後の小さな丘になっている――帝都の北側だ。あそこなら、ミスリル鉱山の名残もあって地盤が固いし、何より、今現在、モンスターの大軍が隊列を組んでいる中心地点でもあった。

 これは、ルーエルとウーリルを戦力として輸送すると同時に、巨大な《氷》の弾丸を打ち込む攻撃でもあるのだから。


「ジードくん!」

 エレナの声が響く、と同時に気配を感じて俺は《風》で飛んだ。

 直後、さっきまで俺が立っていた地面がドロリと溶けた。そして地面の中から、青白い炎を纏った獣の腕が出てきた。

 フレイムリオンだ。思わずカルデラの中央を見やった。そこには、さっきのフレイムリオンが居座ったまま……


 2体目かっ⁉


 反射的に霊装エレナを振るう。《風》の刃が巻き起こり、2体目のフレイムリオンを地面ごと抉り取ろうとした……が、フレイムリオンの姿は既にそこには無かった。

 地中を溶解させながら、自由に動き回っているのか。

 俺は、また不意打ちを喰らわないよう、《風》に乗って空から島を見下ろした。


「ありがとな、エレナ。おかげで助かった」

「ふふーん」

 霊装エレナから得意気な声が響く。嬉しそうなドヤ顔が目に浮かぶ。


 ……さて、どうしたものか。


 敵は2体になった――いや――2体だけとは限らない。

 しかも案の定、どこか知略的な作戦に則って攻撃しているように感じられた。敵の耳目を一点に集めて死角から攻撃、というのは集団戦のセオリーの一つだ。


 ……いっそ、帝都とゼガ島とで同時にモンスターが現れたことも、戦力分散のための戦略の一環なのか? そこまで考えて、モンスターたちが動いている?


 思わずそんなことまで勘ぐってしまう。

 まぁ、だとしても、やることは一つだ。


「とっととヤツらを倒して、マグマ内の怪しい気配の正体も暴く!」


 俺は意を決するように声に出すと、カルデラの中央に陣取るフレイムリオンに向かって急降下した。

 ゴアァァァッ!

 フレイムリオンが咆哮し、身体を纏っている青白い炎が勢いを増す。炎の壁が出現して、俺の行く手を遮っていた。


 だが無意味だ。


 俺は霊装セラムの突きを繰り出す――炎の壁が一瞬で凍りつき、そのまま霊装の突きで砕け散った。

 炎の壁を突き破った先――正面には何も居なかった。


 ガアアァァッ!

 グルォォォッ!


 2体のフレイムリオンが、左右に分かれて待ち構えていた。

 2体が同時に挟み撃ちしてくる。左からの攻撃は霊装セラムで受け、右からの攻撃は霊装エレナで受ける。


 正直、これからマグマ内の調査をするには、魔力をセーブしていたいんだが……。

 その考えは少し甘かった。セーブしすぎると力が拮抗してしまう。それくらいに、このフレイムリオンたちは強い。

 

 まぁ、ちょっと力を出せば敵ではないんだけど。


 キィィン……霊装セラムの《氷》が左のフレイムリオンを凍結させ、粉砕。

 ズンッ……霊装エレナの《風》が右のフレイムリオンを圧潰した。


 次の瞬間、突然、俺の足下の地面が一瞬で抉られた。

 青白い光が辺りを照らす――


 ――3体目っ⁉


 この2体すら囮か。

 地面が消えてバランスを崩したところに、3体目のフレイムリオンが牙を剥いてきた。

 今、霊装は横に広げてしまっていて、下への対応は間に合わない――


 グシャァッ!

 俺の足下から、物が潰される汚らしい音が鳴り響いた。


 俺の足が、フレイムリオンの口に飲み込まれている……

 ……正確に言うと。


 俺の足が、フレイムリオンの口から入って、ヤツの身体を踏み潰していた。


 強大な魔力を込めて物理で攻撃すれば、それは、通常魔法以上の威力にもなる。ましてや、俺の身体は666年の精霊界暮らしで鍛えられているのだから。

 たとえ強化されているとはいえ――精霊界原産とはいえ、ただのモンスターに引けを取るわけがない。

 一瞬にして、フレイムリオンの3体同時攻撃を撃退した。


「エレナ、残りの気配は?」

 俺は油断することなく、エレナと協力して周囲の気配を探る。

「近くにいくつか居たみたいだけど、今のを見て距離を取り出してるよ」

「なるほどね、相変わらずの慎重派だ」


 となると、今は新しく作戦会議中か?

 かといって、こちらはそれを待つつもりはない。

 モンスターの狂暴化の原因がここにあるかもしれないのなら、速攻、それを叩き潰す。

 こっちは大胆に行くとしよう。


「さぁ、マグマダイブだ!」

本日の投稿は、以上です。

次話の投稿は、明日の18時か18:30ころを予定しています。

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