竜神族の勇者の婚約者であった人間の使用人の娘が、王の番だとわかり、勇者に婚約を破棄され王宮に召し上げられ、すべてに絶望して復讐した話。
「ユーリア、ほらほら見てごらん、きれいな空だね」
「ええそうですわね、レイル様」
私はきれいな青い空を婚約者であるレイル様と見上げておりました。
私は普通の人間の娘ですが、幼い時、この里の近くに捨てられており、族長が拾い上げて、使用人として育ててくださったのです。
族長の息子でありレイル様は私とずっと一緒でした。
竜神族は竜の血を継いだという伝説の一族です。
強い治癒の力、魔力を持ち、ドラゴンの魔法を使えます。
代々強い力を持つ勇者を生み出し、魔族と戦ってきました。
私は今、勇者として認められたレイル様と旅に出て、魔王を倒す旅に出たのです。
私は魔法使いとしての素養があり、彼と行動しておりました。
そして、私たちは僧侶と剣士もう一人を仲間とし、とうとう魔王を倒し、里に帰ってきたのです。
これから結婚して幸せにと思っていたのですが……。
「すまないユーリア、婚約を破棄させてくれ」
なぜかレイル様が里に帰ってしばらくしてこう言ってきたのです。王宮に行って、凱旋のパレードとやらの打ち合わせをしてくると言っていたのですが……。どうして?
「……魔王を倒した報告をした後、君を見た王子が、君のことを番として認定したんだ。君は王子の妃になるんだ、王命には逆らえない」
すまさそうにレイル様が言うのです。
竜神族は里がいくつかあり、それをまとめているのが王。
でも、番は一族同士であり、そしてめったに現れない男女の運命の相手。
それが人間なんて聞いたことすらありません。
そして番なんて百年に一組表れていいほうなのです。
だからこそ、人間である私がレイル様の婚約者になったのですから。
「……番なんてそんなものでは私はありません!」
「一目見たらわかるんだ。番は……君は僕の番じゃなかった」
「でも!」
「王命だ、逆らえない、すまない」
それしか繰り返さないレイル様、私は飾り立てられ、無理やり王宮に連れていかれ、一度しかあったことがない王子とやらの妃に無理やりされました。
竜神族はその角と腕にある鱗以外は人と変わりません。
魔力を持つ人間だから私はレイル様の婚約者となりました。強い魔力を持つもの同士が普通は婚姻します。
でも竜神族の王族と人なんて今までありませんでした。
私は周りからいじめられ、無視され、女性には特にそうされました。
王子を私は愛せず、レイル様を思うばかり、そして知ったのです。レイル様が王の娘と婚約したということを……。
ええ、私は彼に売られたのです。
その出世のために彼は私を捨てたのです。
番として愛しているという王子の言葉はとても空虚で、私はそんな運命なんてないと訴えました。
でも番というのは絶対だというのです。
ばかばかしい、私は彼を愛していませんし、運命なんて信じません。
すべてに絶望をした私は……すべてに復讐することにしたのです。
魔王を倒したものたちの凱旋のパレードが行われています。
勇者レイルの婚約も発表されました。
私は黙って王子の隣でパレードを見ています。
レイル様と王の娘の姿が見えた時、私は……魔王の城で偶然見つけた魔法の呪文を唱えました。
「我が命を対価として、すべてを無に帰せ、バール・イリース」
これは自分の命を触媒にした絶対魔法、すべてを道連れにする破壊魔法。
私が笑いながら呪文を唱えると、すべてが黒く光り、そしてレイル様と女、隣にいた王子、民衆たちがすべて消えていきました。
ええ、凱旋パレードに参加しないようにかつての仲間には告げていましたから彼らはいません。
私が何をしようとしているかうすうすは知っていたのでしょうね。
すべてが消えて、すべてが終わる。番なんてばかばかしい、私の魔法使いとしての魔力をすべてをささげ、私はすべてに復讐をしました。
そして私の意識は闇に沈んでいきました……。
読了ありがとうございました。よろしければ評価やブクマなどお願いいたします。作者が喜びます。