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再び

作者: 一輪花

ここは、どこだろう......


いつの間にか、知らない場所に立っていた。

言葉では言い表せない、でも。

とても、とても綺麗で、美しい空間。





 少し前まで階段を上っていた。

苦しくて、辛くて、暗くて、冷たくて。

果てしなく続く、どこに繋がるのか自分でもわからない、でも後戻りは絶対にできない、そんな階段。



階段は一つとして同じものは存在しない。

長さや形、幅、手すり、周りの明るさ、色、全部。





私の階段は............どんなだったっけ。

もう、あまり思い出せない。

ただ1つだけ言えるのは、もう戻りたくない。それだけ。





 ここは多分、私の望む理想郷。

とても温かくて、落ち着く場所。

ずっとここにいたい。そう、思える場所。





 果てしなく広がるこの空間の真ん中には、1枚の扉がある。

それ以外はなにもない。

扉の向こうがどこへ繋がってるかは、分からない。




私は今そこへゆっくりと向かっている。

なぜだか分からないけれど、そうしなければならないような気がしたから。

どんなに時間がかかっても、きっとそこへたどり着かなければならないような、引き寄せる何かが扉にはあるみたい。




ふわふわとした感触を足の裏に感じながら、ひとりゆったりと進む。

追い立てるものは何もない。

自分のペースで進んでいく。

少し寂しくも感じるけれど、足取りが軽いのはこれからへの期待の方が大きいからかもしれない。







 私が私である以上、決して消えない傷がわたしを蝕むだろう。

黒くドロドロとしたものが、治りかけの傷は抉り続ける。




今はそのドロドロも無くなり始めている。

でもきっと、このドロドロとしたものが消えるのにはとてつもない時間がかかる。

だとするならば、私が私でなくなるとき、私についたドロドロはどこへ行くのだろう......?





 始めは光り輝く階段を上っていた。

でも、だんだんと周りは真っ暗になって。


ずっと先にある光を追って必死で前へ進んだ。

光は進んでも進んでも、近くはならなかったけれど。





進むことに疲れてしまったから、勇気を出してみた。

それと同時に私の階段は上りかけた段から先が崩れ去った。




どうせなら、全て崩れてしまえばよかったのに。

そう思うけれど、そう思っては行けない気がするのは、私を思って泣いてくれる人がいるからかもしれない。









 優しい光が差し込む温かいこの空間は、何者にも侵されない。

いや、侵されてはならない。

だんだんと分かってきた。ここが何処なのかが。



ここは、全ての始まりと終わりを告げる場所。



この場所で自分を偽ることが出来るものは多分いない。

なぜなら、ここは触れられたくないほど脆い、精神だけが留まることの出来る、そういう空間だから。





留まる時間は、それぞれだ。

ゆっくりと扉に向かうものもいれば、扉へ飛び込むように走り抜けていくものもいる。





私は前者。

扉まではまだ遠い。

ゆっくりゆっくり歩いて、この場所にもう少し留まっていたい。

そう思うのはわがままなのかな……。





 扉の向こうはきっと希望で満ち溢れている。きっと......。

きっと............。





そう、信じて。

私は"また"扉に手をかける。



Fin


死ぬことが良いこととは絶対に思わないけれど、会ったこともないあの子の決断が黒く塗りつぶされないことを願っています。

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