次の町に出発
「コホン! レオンさん、…………レ、オ、ン、さん!!」
はっ! しまった。シェリーに見とれて、エレナに気付かなかった。
「えっと…………あっ、そうだ、マリーはどうしたの?」
「レオンさん、シェリーさんに見とれる気持ちは分かりますけど、私を忘れないでください」
「エレナ、ごめんなさい」
「それと、マリーさんは、怪我人の治療に行きました」
「怪我人の治療?」
「あれでも、医者ですから」
「マリーが医者!? 嘘でしょう!」
「確かに、医者に見えませんね。ですが、優秀な医者なのですよ」
驚いた、マリーが医者。
槍を振り回して、暴れていた姿からは想像できない。
「レオンさん、私は破壊された場所の、後片付けをしてきます」
「うん、わかった。俺も手伝うよ、一緒に頑張ろう」
「エレナちゃん、重い物を持てないから、私は無理よ」
「わかっています。シェリーさんは、私たちを捕まえた、バカ貴族の事を調べてください」
「ふふ、任せて」
さて、エレナと一緒に、壊れた場所の片付けをしますか。
う~ん。よく見ると、激しく壊されてる。
とりあえず、ガレキを一カ所にまとめよう。
あっ! マリーがいた。
「うるせぇー! それぐらいの怪我、治療魔法は必要ねぇー! 薬で十分だぁ!」
「誰か助けて! 子供が息をしていないんです!」
「……っ!? おい、その子供を連れてこい! 死にかけているじゃねぇか!」
おー! 口が悪いけど、本当にマリーが医者をしている。
あれは、治療魔法かな? 怪我がすぐに治っていく。
「助けてくれー! 足が折れて動けないんだよぉーー」
「ったく、しゃーねぇなー。今、行くよ!」
マリー、凄く頑張っているな。
よし、俺も、ガレキの撤去を頑張ろう!
同日、昼。
「エレナ―! そっちの片付け、終わった?。こっちは終わったよ」
「はい、終わりました!」
あれ?、マリ―の声が聞こえてきた。どこにいるのかな? …………。
いた、こっちに走って来る。
「おーーい! お昼ご飯、食べようぜぇーー!」
「マリーさん、仕事は終わったのですか?」
「まあなぁ。とりあえず、重症患者の治療は終わったよ」
「そうですか、お疲れ様です。それでは、屋台に移動して、お昼ご飯にしましょう」
さすがお昼時だ、人の数が多い。
空いてる屋台、あるかな?
「レオンさん、人の数が多いので、料金が高いですが、料理店に行きませんか?」
「うん、エレナに任せる」
エレナに連れられて、店に入ったけど…………。
この店、もしかして高級店? 豪華な店構えだな。
「レオンさん、マリーさん、料理は決まりましたか?」
「俺は、エレナと同じ料理が食べたい」
「あたしは、焼き肉大盛りと牛乳」
メニュー表を見た感じ、この店は焼き肉屋さんかな?
「なあレオン、さっきはごめん。ケンカを売って悪かった、すまねぇ」
「マリーさん、ジロジロ見ていた俺が悪いんです。すみません」
「あたしの事は、マリーと呼んでくれよぉ。マリーさんと呼ぶのは、エレナだけで十分だ」
「じゃあ、マリー、俺の名前はレオン、世直しの旅に加わるから、よろしくね」
「あたしの名前はマリー、医者だ。よろしくなぁ」
手を差し出したら、マリーが握手をしてくれた。少しは、仲良くなれたかな?
「レオン、エレナから話を聞いたけど、黄金ゴーレムを一撃で、倒したんだって?」
「うん、そうだよ」
「あはははっ! おめぇすげぇな。よし、気に入った。あたし、レオンが仲間に入るの、賛成ー!」
「お姉さんも、レオン君が仲間に入るの、賛成~」
「えっ、シェリーさん!?」
「レオン君、お姉さんの事は、シェリーと呼んで欲しいなぁ」
シェリー、いつ来たのだろう? 急に現れたから、驚いた。
「あっ、店員さん、サラダとチーズ、お酒を頂戴」
「シェリーさん、終わりましたか?」
「エレナちゃん、慌てない、慌てない。まずは、食事にしましょう」
頼んだ料理が来たのかな? 焼いたお肉が、大量に運ばれてくる。
「焼き肉、美味そう。あたし、先に食べてるよ」
「マリーさん、慌てて食べると、のどに詰まりますよ」
「肉、うめぇー!」
マリー、凄い勢いで食べるなぁ。
あれ?、俺の料理が、半分無い!
「マリー、俺の料理を食べた?」
「…………いや、知らねえなぁ~」
早く食べないと、全部の料理を食べられてしまう!
「あのね、エレナちゃん。調べた結果、あの貴族は悪者じゃなかったわよ」
「では、なぜあの時、理不尽な事をしたのです?」
「簡単に話すと、彼は、婚約者を他の男に寝取られたみたい」
「うわ~、ひどいな。同じ男として、同情する」
「彼は、自暴自棄になり旅に出て、この町に辿り着いたそうよ」
「なるほど、自暴自棄になっていたから、強引なナンパをしてきたのか」
「ええ、しかも、こっぴどく振っちゃったからねぇ~。怒るのも無理はないかなぁ」
「わかりました。他に悪い事が見当たらないなら、今回は見逃しましょう」
「エレナ、話は終わった? 次の町に、早く行こうぜぇー!」
「そうですね。この町に、もう用はないですから、食事が終わったら、次の町に向かいましょう」
昼食は楽しかったけど、料理の半分以上。マリーに食べられた気がする。
今、町の入り口に向かって歩いているけど…………。
俺の前を歩く、マリ―の機嫌が良いのか、シッポの動きが激しい。
あっ! 先に入り口に向かっていた、エレナが手を振っている。
「レオンさん、馬車を用意したので、移動を開始しましょう」
幌が無く、荷台だけのシンプルな馬車だな。
「おいレオン、早く乗れよ、おいてくぞぉー!」
「わかった、すぐに乗る!」
馬車は、順調に街道を進み、夜になる。
野営での夕食は、ふかしたイモだった。
このイモ、塩味で美味しい。
「なあエレナ、肉を食おうぜぇ! イモだけじゃ足りねぇー」
「節約です。我慢してください」
「ええ~、肉、肉! 肉が食べたいー!」
「マリーさん、昼食で焼き肉を、大量に食べたでしょう。まだ、肉が食べたいのですか?」
「そうだけど、…………あたしは、肉食派なんだよぉ」
「ふふ、マリ―ちゃん、お姉さんのイモを少しあげる。それで、我慢して」
「えっ! シェリー、イモくれるのか? ありがとう」
「ねえ、エレナちゃん、お酒が飲みたいなぁ~」
「イモ、うめぇー!」
「…………マリ―さん、食べながら話すのは、止めてください。飛び散っていますよ」
う~ん、会話に入りづらい。
3人とも、仲が良いなあ。
「お姉さん、レオン君の事、詳しく知りたいなぁ~。教えてくれる?」
「あたしも、レオンの事知りたい! どこの生まれなんだ?」
「えっと、実は俺、異世界から来たんだ」
「異世界!?」
その後、地球の話をしたり、異世界に来た理由を話していくと、3人は驚きながらも、納得してくれた。
同日、深夜。
寝静まった野営地に、36の影が静かに忍び寄った。
野営地を包囲すると、影は少しずつ距離を縮めていく。
影の1人が、魔法の糸に触れてしまう。
静かだった野営地に、激しい音が鳴り響く。
エレナとマリーが、テントから飛び出した。
【 戦闘開始 敵、正体不明 36人 】