戦闘開始
岩山に向かって移動を始めてから、30分位経つけど……エレナさん走るの遅くない?
早く目的地に行きたいけど、女性に足が遅いと言うのは、失礼だよなぁ。
「ちょっと……はぁ、はぁ……待って! レオンさん、少し休ませて」
失敗した。よく見たら、エレナさん汗びっしょりだ。息も乱れまくりだし、苦しそうにしてる。
「エレナさん、大丈夫? ごめんなさい、急ぎ過ぎました」
「…………ふぅ~、走るの早いですね。脚力に自信があったのですが、追いかけるのが無理でした」
汗の量から見て、水分を補給した方がいいな。
あっ、そうだ。持ってきた登山用リュックに、水筒が入っていたはず。
え~と、どこかな? …………あった!
「のどが渇いているでしょ? この水筒にお茶が入っているから、良ければ飲んで」
「ありがとう、珍しい入れ物ですね………わあ! 冷たくて美味しい。これ魔道具ですか?」
「魔道具? 魔法瓶だよ」
「えっと、魔法の力を持つ入れ物なんですね?」
「あ~、うん。まあ、そんな感じ」
「私はもう大丈夫です、先を急ぎましょう」
「そうだね、移動しよう」
無理させないように、ゆっくり走ろう。
同日、夕方
おーー!! 右も左も、岩、岩、岩だらけ。
「エレナさん、ここが目的地?」
「はい。たぶん、この岩山に黄金ゴーレムがいるはずです。一緒に探しましょう」
どこにいるのかな? 夕方で見えにくい。
前…………いない。右…………いない。左…………少し先の方に、金ぴか岩の巨人がいた!
「ねえ、あれが黄金ゴーレム?」
「あっ、本当にいました。黄金ゴーレムです……2匹いますね」
「それじゃあ倒してくるから、少し待っていて」
「レオンさん、待ってください。敵は2匹、1匹は私が戦います」
「大丈夫? 勝てそうなの?」
「厳しいですが、1対1なら勝てる可能性があります」
「わかった。それじゃあ、こっそりと近づいて奇襲しよう」
「最後に確認するけど、レオンさんは勝てる自信がありますか?」
「あるよ」
「そうですか、お互い頑張りましょう」
「エレナさんが危険になったら、僕が守るから安心して」
「……ありがとう」
【 戦闘開始、敵、黄金ゴーレム、1匹 】
エレナは奇襲に成功。ロングソードで、何度も斬りかかる。
4回、HIT ダメージ、極小
黄金ゴーレムに、かすり傷を与えた。
「くっ、何て硬さなの!?」
黄金ゴーレムは、大きな拳でエレナに殴りかかった。
ミス、エレナは素早く避けた。
「想像より、攻撃速度が速い!!」
バックステップで、エレナは敵から少し離れた。
黄金ゴーレムは、右腕に力をためている。
「あれは、必殺攻撃!! 当たれば即死、まずい!」
エレナは、スキル『魔法剣』を使用。雷属性の魔法をロングソードに込めた。
ロングソードは、雷撃剣に変化した。
エレナは全身の力を込めて、雷撃剣で斬りかかる。
1回、クリティカルHIT ダメージ、小
黄金ゴーレムの、右腕を切り落とした。
敵のスキル、『自動修復』が発動。
傷の修復完了。
「そんな、嘘でしょう。傷が治った!?」
黄金ゴーレムは、エレナに必殺パンチで攻撃した。
1回、クリティカルHIT
レオンはエレナをかばって、必殺パンチを片手で受け止めた。
ノーダメージ
「エレナさん、大丈夫?」
敵は、スキル『雄叫び』を使用。
「グォォォーー!!」
黄金ゴーレムの雄叫びで、エレナは恐怖で動けなくなった。レオンに影響は、ない。
レオンは、黄金ゴーレムの胴体にパンチで攻撃をした。
1回、HIT ダメージ、オーバーキル
黄金ゴーレムは、完全に破壊された。
【 戦闘終了、黄金ゴーレム1匹撃破。ドロップ品、金塊1個 】
「う、そ、一撃!?」
「ねえ、エレナさん。もうすぐ夜になりそうだから、じゃんじゃか倒していこう!」
「えっ、あぁ、はい。レオンさん、絶対に私を置いて行かないで!」
1時間後
日が暮れてきた、そろそろ夜になるなぁ。
そういえば、倒した数を数えていない。たぶん、エレナさんが数えているはず、聞いてみよう。
「倒した数、わかりますか?」
「はい。えっと、114匹だと思います」
「えっ! 目的の100匹を超えているの? もっと早く教えてよぉ~」
「す、すみません。夢中になっているレオンさんに、声をかける事が出来なくて」
やりすぎた、反省。
発見したら、とりあえず殴る。これが良くなかったと思う。
あっ! 金塊を拾うの忘れていた。すぐ拾いに行かないと。
「ごめん、金塊を拾うの忘れていた。拾いに行ってくる」
「金塊なら、私が拾いましたよ」
「エレナさん、荷物を持っていないよね? 金塊はどこにあるの?」
「金塊の量が多いので、収納魔法でしまっておきました。安心してください」
収納魔法。確か、別空間に荷物を入れられる、倉庫みたいな魔法だったはず。ラノベに、書いてあった気がする。
「レオンさん、もう日が暮れました。夜の移動は危険なので、この辺りで野営にしませんか?」
「了解! 今日はここで休んで、朝になったら移動しよう」
異世界で初めての野営、わくわくしてきた。
こんなこともあろうかと、テントと寝袋を持ってきて良かった。
「テントと寝袋、持っていますか? 無いのなら、俺のを使ってください」
「ふふっ、嬉しいですけど、そんなに気を使わなくていいですよ」
おー! 今、何も無いところから、野営道具一式を取り出した。あれが、収納魔法かぁ。
「レオンさん、あそこの岩陰が安全そうです。野営場所にしませんか?」
「わかった。それじゃあ、野営の準備を始めよう」
あれ? そういえば、異世界の野営は地球のキャンプと違うのかな? 聞いてみよう。
「エレナさん、野営のやり方を教えてくれる?」
「いいですよ。ええと、まずは木の棒4本を、野営地の四方に刺してください」
「うん、わかった」
「次に、この黒い魔法の糸を木の棒に巻き付けて、野営地を囲んでください。この糸に触れると、魔法で音がしますから、警報になります」
「なるほど、便利だね。他にやる事はある?」
「それが終わったら、テントの組み立てを頼みます。私は、火を起こして食事の用意をしますから」
さて、やりますか。
まずは、木の棒を刺す…………完了!
次、糸を張る…………完了!
最後、テントの組み立て…………難しい…………失敗。
やり直し…………成功?
「エレナさーん。終わりましたよ!」
「そうですか、料理も出来たので食事にしましょう。羊肉のスープとパンを用意しました」
「美味しそう、いただきます!」
羊肉のスープは、シチューの様だなぁ~。うん、美味い!
パンの方は、味がしない。うん、まずい。
そうだ、ジャムを持って来てた。え~と、何処にしまったかな?
あった、りんごジャム! これをパンに付けて……美味い!
「エレナさん、このジャムをパンにつけると、美味しいから食べてみて」
「ありがとう……美味しい!」
エレナさん、ジャムが気に入ったのかな? 大切そうに食べてる。俺は、羊肉のスープの方が美味しいけど。
食後
「それじゃあエレナさん、俺は右のテントで寝るから」
「あ、あの、私の事は、エレナと呼んでください。それと、レオン様と呼んでいいですか?」
「レオンでいいよ、様はいらない」
「それなら、今日の様にレオンさんと呼んでいいですか?」
「いいよ。おやすみ、エレナ」
「はい、おやすみなさい、レオンさん」
その後、朝まで特に問題なく、眠った。