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⑩駐車場で
父は少し前に、母とハナレバナレになった。
お別れしたということだ。
その母は、絵の具で描いた絵みたいな、真っ白なお顔をしていた。
ずっと厚化粧で、スッピンというものを見たことがなかった。
でも、なんとなくだが、分かったことがある。
母が家政婦さんだということ。
スーパーの駐車場で、父の車から降りると一台の車が迫ってきた。
そして、ひとつだけ空いた隣の空間に、いとも簡単に一発で停めた。
右に寄せすぎた父の車なんて関係なしに、美しい間隔で停めていた。
それは、やはり家政婦さんだった。
いつも聞いている家政婦さんの語尾は、少しだけ母に似てる気がする。
でも、天然で何も出来なかった母が、あんなこと出来るわけがない。
免許も持っていなかったのに、いきなりあんなハンドルさばきが、出来るはずがない。
でも、家政婦さんが母である可能性は十分ある。
今まで起きた数多くの光景は、壮大な演技だったのだろうか。
もしかしたら、みんなエキストラだったのだろうか。
そうなると、少しは納得がいく。
もしかしたら、別れたのも嘘かもしれない。




