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58話 寄せ集め連合軍

「来たカ」


 翌朝のこと。

 我々はクルーシ川に到着し、リザードマンと合流していた。

 こちらは我々四人と、マルコシアス。そしてダークドワーフが十人。

 むこうはクロクロを先頭に、リザードマンが十五人。


「一族から出せる数はこれが限界ダ」


「ドワーフも、これ以上は難しいようだ」


「根によって、向こうの集落と連絡が途絶えていル。里に住む仲間も弱ってきていル。猶予は無イ」


「やはりとは思ったが、この地下世界には、まだまだリザードマンやダークドワーフがいるのだね?」


「そういうことダ」


 リザードマンやダークドワーフにとって、根に挑むことは水の利用権争いを回避するだけではないのだ。

 遠く離された、別の里を救い、あるいは自分の里の存続のために必要なことだったわけである。


「よ、よろしく頼むぞい」


「うム」


 オブが言うと、クロクロが頷いた。

 一見して分かるほど、二つの種族間には意識の隔たりがある。

 互いに警戒し合っているようで、彼らの間を、我々が歩くことになる。


「やな空気ねえ」


 アマーリアが顔をしかめた。

 ドワーフにも、リザードマンにも、一言の会話もない。

 リザードマンはもともと無口な種族なのかもしれない。もしくは、非言語的コミュニケーション手段を持っている可能性も高い。

 彼らは聴覚だけでなく、人間よりも鋭い嗅覚と、そして温度まで見えるらしい視覚を持っている。

 こうしている間にも、彼らの間で我々が分からない会話が成されているのではないか。


「なんダ?」


「今、君たちはフェロモン的なものや、温度などを使って会話をしていたのかね?」


 直接聞いてみた。


「別にそのようなことはしていなイ。クロクロは炎の部族の上部にあたる。下部の部族は話しかけてこなイ」


 残念、普通に無言だった。

 軍隊のように、上下関係がはっきりしているらしいな。

 では、それに対して物静かなドワーフだが……これは見れば分かる。

 みんな緊張に顔を青ざめさせて、無言なのだ。


「オブ、君たちは本当に荒事が苦手なのだな」


「言ったじゃろう……! わしらは創造的な事は喜んでやるが、物を壊したりするのはようできん!」


「だから倉庫には、作成された品がぎゅうぎゅうに詰め込まれていたのか」


「皆、わしらが作った可愛い子供みたいなものじゃ! 捨てられるものか!」


 ドワーフ一同が深く頷く。


「あー、賢者の塔にもそう言う人多かったですねえ。物を捨てられない人……! 先輩も割とそんな感じじゃないですか?」


「私は不要になるまで取っておくだけだ。今まで何度も、こんなこともあろうかと取っておいた物が助けになったシーンが多かったはずだ」


「ジーンさんの場合、それが本当になっちゃうからタチが悪いのよね」


 カレラがため息をついた。

 そんなやり取りをしているうちに、問題の巨大な根に到着である。

 どこまでも伸びる根の長さは、想像もつかない。

 高さは見上げるほど。

 しかし登れない程ではない。


「根は、魔法の武器では傷つかなイ。ドワーフでは無力ダ。キュイッ」


 クロクロは甲高い声を上げた。

 それに応じて、リザードマンたちが走る。彼らは腰から骨を加工した短剣を取り出す。これを根に突き立てて足場とするつもりなのである。


「無力ではないぞ! 正確には傷つくが、すぐに戻るだけじゃ!」


「同じことなんじゃないの?」


 アマーリアの突っ込みは正しい。

 こと、根を乗り越えるにあたって、ドワーフは戦力にならなそうである。

 彼らの出番があるとしたら、乗り越えた後だ。

 ドワーフは背中に籠を背負っており、そこに発明品をぎゅうぎゅうに詰め込んでいる。

 出かける前に一通りチェックしたが、実に面白いものばかりだ。


「アマーリア、カレラ。リザードマンだけでは時間がかかるだろう。君たちも手伝ってあげてもらえるか」


「はいはーい。んじゃ、あたしの腕前を見せてあげよう!」


「ええ。私だってレンジャーだからね」


 我が一行が誇る、肉体労働系女子二名が前に出る。


「アマーリアさん! カレラさん! がんばーれー!」


 ナオが後ろで、ぴょんぴょんと飛び跳ねて応援する。

 彼女は頭脳労働特化なので、手伝おうとしても逆に足を引っ張る場合が多い。


「ナオ、我々は我々にできる手伝いをしようじゃないか」


「あっ、分かりました! ゴーレムですね?」


「そう言うことだ。ゴーレム、汝に命を与える」


「汝に命を与える!」


 我々はポケットから取り出した小石を放る。

 そこから生まれたのは、小型のストーンゴーレムだ。


「地上の魔法か! 直接人型にして操るとは、趣味の魔法じゃのう。腕だけとか足だけとかにしてデカくしたほうが強いし効果的じゃないかのう?」


「地上の魔法カ。ふむ、良い戦力になりそうダ」


 ドワーフとリザードマンで、ゴーレムに抱く印象はぜんぜん違うのだな。

 これは面白い。


「おっ、ゴーレム手伝ってくれるのね。助かるわあ」


「ちょうどいい足場よね。はい、アマーリア、ロープ」


「へいへい」


 ゴーレムに組体操させて、高さ調整自在な踏み台としたアマーリアとカレラ。

 二人はなかなかのコンビネーションで、あっという間に根の表面に、よじ登るための足場を作り、手がかりとなるロープを張っていく。

 道具が揃っている分、リザードマンよりもずっと早い。


「凄いですねえ。わたしもあんなふうにかっこよく、ロープを張ったりとかしたいですね!」


「ナオの二の腕が、ぷにぷにからムキムキになれば行けるかもしれないな」


「えーっ、筋肉痛は嫌ですう。もっと楽に、かっこよくなれる方法があればいいんですよね。先輩、知らないですか?」


「知らないな……。マルコシアス、どうだ?」


『その質問に答えよう。無い』


「がーん」


 マルコシアスの質問を無駄遣いしつつ、二人の作業を見守る。

 やがて、根の頂上からロープが垂れ下がった。

 アマーリアとカレラが、クロクロと話し込んでいる。

 リザードマンの体格だとか、ドワーフの体格に合わせた足場だとか。

 次にクロクロが指示を出し、ロープに沿って骨の短剣を突き刺していった。

 ちょっと多すぎじゃ無いかと思うくらい足場がある。


「途中で抜けちゃうことを考えたら、これくらいでいいんじゃない? はい、作業終わり!」


 アマーリアとカレラが戻ってきた。

 シャドウ族のアマーリアの身体能力は流石である。何の取り掛かりもないような根の表面を、すいすい昇ったり動き回ったりしていた。

 対するカレラも、レンジャーとしての腕前が高いことが伺える。

 足場とロープの位置は、全て彼女の采配によるものだ。


「どれどれ。おお、しっかりとロープが張られているな」


 ロープを引っ張り、突き出した足場に乗ってみて、その安定性に驚く。


「うちのパーティで、こう言う仕事は私の専門だったから。魔法が苦手な分、なんでもできるようにならないとね」


 実に頼りになる。

 さて、根を乗り越えた先からは、ようやく私とナオが仕事をできる場所だ。

 新天地へと繰り出すとしよう。



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