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45話 入植希望者

 我が開拓地への、入植希望第一号。

 それは、魔族の一団だった。

 私も、母が魔族であるシャドウの生まれである。

 親近感を覚える。


「先輩、わたし、魔族の人って初めてです!」


「私も広義の魔族だが」


「そうでした!」


 ナオはいつも元気である。


「私は魔族のことをよく知らないけど、魔族ってみんなジーンみたいなの? だとしたら大変……」


「そんなわけがあるか! みんなこいつと同じだったら、世界の終わりだ!」


 シーアが、トーガが何気にひどいことを言う。

 おかしい、私はごく平和主義のどこにでもいる賢者なのだが。

 このような三人を引き連れ、私は入植希望者が待つ場所へとやってきた。


 大きな幌馬車がある。

 その前に並んでいるのは、四人。

 大柄な男と、女、そして子供。親子であろう。

 彼らの肌色は青く、額には角があった。

 オーガと呼ばれる魔族だ。


 そして、この家族とは毛色が違う者が一人。

 黒い肌に、金色の瞳を持つ女だ。


「オーガの家族に、シャドウか」


「ああ。あんたがこの土地の主か。なるほど、アマーリアに似ている」


 オーガの男が、そう言ってシャドウの女性を見た。

 シャドウの彼女は、真っ白な髪を長く伸ばし、結んで背中に垂らしている。

 馬車に腰掛けたまま、値踏みするように私を見る。


「なんか、先輩よりも色が黒いですね?」


「シャドウとは、肌の色からそう呼ばれることになった魔族だからな。完全な闇を見通す力を持ち、その肌は夜闇に溶け込むのだよ」


 私は、ナオに腕まくりをしてみせる。


「私はシャドウの血が半分混じっているから、肌色は浅黒い程度だ。だが、裏返すとそれなりに色が薄くなる」


「ほんとだ!」


「……いいか?」


 私とナオのやり取りに、申し訳なさそうにオーガの男が入ってきた。


「おっと、済まない。講義然とした話になると、思わず熱が入ってしまってね。それで、何の話だったかな?」


 オーガの男は、がくっと肩を落とした。

 オーガの女性がくすくす笑い、子供は首をかしげる。

 はて、あの子供は男の子か、女の子か。

 ああ、確かオーガの子供は、第二次性徴が来るまでは性別が確定していないのだったな。


「ジーン、こいつらが移住希望者だ。お前は領主だろう。こいつらをどうするのか、判断を頼む」


「ああ、そうだった。基本、我が開拓地は来るものを拒まない。幾つかの条件さえ満たしてくれれば、だ」


「条件?」


 オーガの男が不安そうな顔をした。


「ああ。大したものではない。一つは、この程度の規模の開拓地は、誰かが不実を働くだけで容易に崩壊する。だからこそ、モラルを持って行動してほしい。盗まない、争わない、暴力を振るわない。その程度だね」


「ああ、それならば問題ない」


「もう一つは、この開拓地は、ワイルドエルフの土地に間借りする形で存在している。つまり、森の真の主は彼らだ。彼らに失礼が無いようにね」


「そちらも問題ない」


「素晴らしい。では、入植を認めよう。君たちは晴れて、我が開拓地の民となった」


 私は手を差し出した。

 オーガの男は笑顔になると、その手を握り返す。


「いやあ、一時はどうなることかと思ったよ。あんたが話のわかる奴で良かった。やっぱり、魔族の血が入っていると人間とは違うな」


「半分は人間なのだがね。何より、私は種族や生まれで人を差別しないことにしている」


「そいつは結構だ。口先だけの奴なんざ幾らでも見てきたが、実行してる奴は初めてだよ」


「人間も魔族もエルフもドワーフも、生物であるという点では等しい。そしてここには、生存競争を行うような要素は何もない。争うのは、この地に社会ができあがってからで良いだろう」


「言っていることが半分も分からん。だが、あんたが悪い奴でないことは分かった。俺はバルガド。こっちは俺のかみさんのポルトナ。こいつは、俺たちのガキのバル・ポルだ」


「よろしくねー!」


 オーガの子供が手を振った。

 幼い頃は、父と母の名前を半分ずつもらって名乗る。

 性別が確定した時点で、彼、あるいは彼女は本当の名前を得る。


「よろしくねー!」


 バル・ポルとハイタッチしているナオ。

 彼女はまだ、生まれてから三年程度しか生きていないため、精神年齢的にはあの子供が近いかもしれないな。

 さて、オーガ一家の名乗りは終わった。

 残るはシャドウの女性だが。


「……」


 じっと私を見据える、シャドウの女性。

 彼女は馬車から跳躍した。

 それなりに距離があったはずだが、一跳びでわたしの鼻先に着地する。

 身のこなしの軽さは、シャドウという魔族の特徴の一つだ。


「……!」


 トーガが身構えている。

 いつでも、精霊魔法を放つことができる体勢だろう。

 私は、彼を手で制する。


 彼女、アマーリアは私の顔を、下から、横から、姿勢を変えながらじろじろと無遠慮に見つめる。


「失礼ねー」


 シーアが腹を立てている。

 ふむ、遠慮というものが無いのは確かだな。

 だが、そこに嘲りとか侮りとか、そういう態度のようなものは全く感じないな。


「んふっ」


 アマーリアは鼻息を漏らした。

 そして、背筋を伸ばす。

 女性にしては背が高い。

 頭頂が私の目元まである。


「なるほどねえ。どんなのかと思ったら、こんな感じなのね」


「何がこんな感じかね?」


「んー? あたしがママから聞いてた、兄貴が、実際に会ったらこんな感じなのかーってこと」


 ……?

 何か衝撃的な事を言ったな、彼女は。


 トーガとシーアが、驚きに目を見開き、固まっている。


「はじめまして、兄貴。可愛い妹が会いに来たわよ?」


 私は一瞬考えた後、


「はじめまして、妹よ」


 こう答えたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しく拝読させていただいています。 物語がとても滑らかにかかれていてストレスなく読み進められます。また、誤字がなく推敲されていることが伝わってきます。 本作品に触れた時、既に完結されていた…
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