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追放賢者ジーンの、知識チート開拓記  作者: あけちともあき
第六部 新婚旅行と外の国

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141話 シーバード漁

 観光と研究は両立するか? 

 答えは是である。

 私とナオとディーンとマルコシアスを積み込み、シサイドの漁船は海に繰り出した。


「陸が見える海もいいですねえ」


 ナオはうっとりしながら、船べりからの光景を楽しんでいる。

 そしてすぐに立ち上がり、


「じゃあわたし、船の構造を調べてきますね!」


『ピャピャー!』


『見てくる』


 一人と二匹は常に自由である。

 漁船探索に旅立ってしまった。


「自由ですねえ、奥方様」


「だろう? 彼女が生き生きしていると、私も楽しくなる」


 オーラスに答えた後、私も仕事をすることにした。


「漁の仕方はどうやるのかね?」


「へえ。見ていていてください」


 私に漁のレクチャーを行うのは、ベテラン漁師のフピンである。

 彼は、大きな網を指差す。

 網には棒が繋がっており、この棒の先端はロープで船にくくりつけられていた。


「これから、シーバードを取りに行くんですが、あいつらは水の中で助走して飛ぶんですよ。で、お決まりのコースを泳ぐ。この網をコースに置いて、飛んだところをキャッチするわけですわ」


「なるほど、空中で魚をキャッチするとは……!」


「この季節なら、卵を抱えたメスも多いですからね。ただ、まだ受精はしてないんで、こっちは俺らでやる必要がありそうです」


「ふむ、そこは改善点だね」


 やはり、現場の漁師からは貴重な意見が聞ける。

 養殖は学問ばかりではなく、産業でもあるのだ。

 現場の目は大事である。


 船が特定の地点に到着する。

 微かに、シサイドの島々が見える程度の沖だ。

 頭上では海鳥たちが飛び交っている。


「あいつら、シーバードが飛び出す瞬間を待ってるんですよ。で、飛んできたところをキャッチする」


「シーバードはなぜ、呼吸ができない空中に飛び出すのかね? 彼らを捕食する大型の魚に追われているのでは?」


「おっしゃる通りです。シーバードはちょうどいいサイズですからね。あいつらを食う大型の魚は多いんですよ。で、そいつらも俺らの獲物なわけですが」


 フピンの話では、シーバードはとにかく数が多いのだそうだ。

 だから、彼らが餌となり、海鳥や大型の魚たちを養っていることになる。

 しかし、もしも人間がシーバードを一気に獲ってしまったらどうなるか。


 餌が減少した海鳥や魚たちは、やはりその数を減じていくことになるだろう。

 それはつまり、漁獲量も減ることを意味している。


 シーバードを乱獲すれば一時的には豊かになるが、将来的にはジリ貧になるということだ。

 我々はここでシーバードを獲り、これを増やして養殖せねばならない。


「じゃあ、棒網を下ろしますよ」


「これは棒網というのか。棒網漁だな」


「あ、そうです。そういう名前ですな! いやあ、外国から来た貴族様が視察するというから、何を言われるんだろうと緊張してたんですが、話の分かる人で助かりますわ」


「なに、現場のことを一番良くわかっているのは君たち漁師だ。こういうのはプロに任せるのが一番いいものさ」


「ありがたいことです。皆さんそうだと良いんですがねえ」


 どうやら、シサイドものどかなばかりの国ではなく、色々と外野が口出しをしてくることがあるようだ。


「例えばどんな口出しが?」


「いやあー。将来のためにもっと魚を獲れ、とか」


「今が良ければ将来が地獄でも構わない主義の言葉だな」


「全くです。物事には適量ってものがあるんでさ。俺らも数年前の魚大発生の時、獲り過ぎちまったのが悪くてですね。お蔭で赤ん坊は増えて、将来の口の数がとんでもないことになるんで」


「そのために私が呼ばれたのだよ。そして、君が獲るシーバードがシサイド王国を救うことになるだろう」


「そう願いたいもんです」


 浮かれることもなく、軽く愛想笑いを浮かべるフピン。

 冷静である。

 プロの漁師とはこのようなものか。


「さて、準男爵、来ますよ来ますよ」


「ほう」


「ぶつかって来ますからね、注意しててくださいよ」


「魚が? 船上の私にぶつかる……!?」


 フピンの言葉が一瞬理解できなかったのだが、それはすぐに実体験という形で現れた。


 海面が急激に泡立つ。

 真っ青な海の中を、大群の何者かがこちらへ向かってくるのだ。

 それらは、一斉に水面へと浮上してきて……。


 飛び上がる。


 青くキラキラと煌く、小さな魚たちの群れ。

 陽光を浴びて、その青は私の目に深く焼き付く。


 シーバードの大群が、船を飛び越えて飛んでいくのだ。


「うわあー!! 先輩! お魚が空を! うわー!」


 ナオの歓声が聞こえる。

 ディーンも喜んでいるようだ。

 いや、あれは食欲かな。


「どうです、準男爵」


「いや……大したものだ。地底世界、古代の人造神、飛び立つ地竜……。様々なものを見てきて、ちょっとやそっとでは驚かないと思っていたが。世界にはまだまだ、凄いものが存在するのだな……!!」


 海鳥たちが騒がしくなる。

 彼らにとって、ごちそうにありつけるチャンスなのだ。

 白い羽色が、青いシーバードに入り交じる。


 まるで夢でも見ているかのような光景だ。 

 現実感が無い。


 だが、私は唐突に現実に引き戻された。


 ストッ、ストッ、と音を立てて、シーバードが網に突き刺さる。

 次々に刺さっていく。

 やがて、網目の多くにシーバードが刺さったところで、フピンが巻き上げの指示を出した。


 棒網がくるくると巻かれていく。

 すると、甲板にシーバードがぼとぼとと落ちてきた。


 ぴちぴちと跳ねる。


「ふひゃー、せ、せんぱーい!」


 ナオが、魚を踏まないようにふらふらしながらやって来る。

 なんと彼女の頭に、シーバードが鎮座していた。


「魚が急に、どさーっておちてきたからー」


「うむ、彼らの孕んでいる卵から、養殖に用いる稚魚を作るのだよ。これだけいれば準備は万端と言えるだろう……!」


「そうなんですね! じゃあ、仕事は順調ですね! でも、なんか魚くさくなっちゃいました! においを落としたいですー」


 ナオの言葉に、これまで静かだったオーラスが声を上げてきた。


「それじゃあ、泳ぎませんかね? ちょうど、昨日計った奥様の水着も出来上がってますし」


「ほう……」


 海で泳ぐ。

 なるほど、せっかく南国に来たのだ。

 それもありかもしれない。

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― 新着の感想 ―
[一言] さて、どっちが溺れるのか。
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