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追放賢者ジーンの、知識チート開拓記  作者: あけちともあき
第六部 新婚旅行と外の国
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131話 シサイド王国へ向かって 2

 マドラー男爵邸での一泊の後、旅立つことになる。

 男爵の子リットと別れを惜しんだり、ナオが夫人から怪しい薬を受け取ったりしつつ。


「先輩、なんでしょうねこの薬は。本当に効力があるんでしょうか」


「見るからに怪しいな。落ち着いたら調べてみるとしよう」


『我に質問すればすぐ分かるぞ』


 マルコシアスは質問して欲しいらしい。

 そうだな、せっかく彼がいるのだ。


「ではマルコシアス。この薬は何に効くのかね?」


『その質問に答えよう。血行を促進する効果があるため、腰痛と肩こりに効く』


「おお、本当に効能があったようだな」


「ちゃんとしたお薬なんですね! えっと、なんでこれをわたしに……? あ、わたし、ちょっと肩こりがあるからかも知れません!」


「うむ、肩は凝るだろうね」


 私とナオの会話の中、魔術師のアーガスがチラッとナオの胸元を見て、「だよなあ」と呟いたようだった。

 彼も年頃の青年ということだな。




 かくして、マドラー男爵領を後にした我々は、次なる移動魔法でヴァイデンフェラー辺境伯領へと到着した。

 以前に来たときから、四ヶ月ほどが経過している。

 ついこの間のような、懐かしいような。


「おや、誰かと思えばビブリオス卿ではありませんか!」


 我々が到着した報告を受けたのか、馬に乗ってやって来た騎士が声を掛けてきた。


「オーベルト。久しぶりだ。元気でやっていたかな」


「ええ、もちろん。それに、準男爵のお力添えがあったおかげで、我がヴァイデンフェラー領は今、ちょっとしたお祭り騒ぎですよ」


 馬から降りたオーベルトが、笑顔でそう告げる。

 お祭り騒ぎ……?


「なんでしょうね、先輩。そう言えば、男の人も、ご婦人方も、せわしなくあちこちを行ったり来たりして。荷物を運んでますけど」


「それはですね、奥方」


 ナオの疑問に、オーベルトが答える。


「シサイド王国との本格的な貿易が始まったのですよ。おかげで、その入口となるヴァイデンフェラーは大騒ぎです。国の守りが一転して、国の入り口となったわけですからね」


 オーベルトは楽しそうだった。


「お二人を案内したいところですが、私も忙しい身でして。では、これで! 後は辺境伯がやってくださるでしょう。あの方は、港の方におられますから!」


 港?

 そう言えるほど、きちんとした設備は、辺境伯領には無かったように思うが。


 アーガスと別れ、ここまで送ってくれた礼を言う。

 そして、我々はオーベルトに教えられた港へ。

 到着してみて、なるほどと納得する。


 積み上げられた石の塊。

 今まさに、拡張されていく桟橋。

 ヴァイデンフェラー領の港は、作られていく真っ最中だった。


 港が出来上がる様を見ながら、腕組みをしている男がいる。

 あの堂々たる体躯と、様になった立ち姿は私が知る限り一人しかおるまい。


「アルブレヒト!」


 声を掛けると、彼が振り返った。

 ヴァイデンフェラー辺境伯アルブレヒト。

 私と親しい貴族の一人である。


「よう、ジーン! 二人一緒にやって来たな」


 彼は日に焼けた顔に笑みを浮かべた。

 そして、物珍しそうに我々の格好を眺める。


「これから新婚旅行だってのに、まるで調査にでも行くような服装だな。それがビブリオス流か?」


「そうなるな」


「卿らしい」


 彼は笑いながら、私の肩を叩く。

 その後、ナオに「今日も凄いですな」と挨拶をしながら、握手を交わしていた。

 どこを褒めているんだ。


『ピャーッ』


「おっと、子竜は俺がお嫌いのようだ」


「ディーンは人見知りするんですよ」


 ディーンはナオのリュックに乗っかり、彼女の肩ごしにアルブレヒトを威嚇する。


「ディーン、おいでー」


『ピャッピャ』


 ナオが手を出しだすと、子竜はそこに飛び込んでいった。

 すぽんとナオの腕の中に収まると、ご満悦でピプーと鼻を鳴らす。


「まるで卿等の子供だな」


「似たようなものかも知れないな。我々は、彼の育成を地竜に任されたのだから」


「それは責任重大だ。セントロー王国内地の運命は、ジーンが握っているというわけだな。だが、俺も負けてはいないぞ」


 案内しよう、とアルブレヒトは歩き出した。

 途中、従者たちが現れて、我々の荷物を持ってくれる。

 これは大変ありがたい。


「今、こうして木製の桟橋を急造で仕上げている。しばらくはこれを使うつもりだ。今までは二つまでしか無かったが、これを四つに増やす」


「二倍か! そこまで多くの船がやって来るようになったのか」


「そういうことだ。そして、それだけでは無いぞ。あそこに集めた石があるだろう。あれを用いて、頑丈な奴をさらに二つ作る。そこから順次、桟橋を石造りに直していくつもりだ」


「なるほどです! 石造りなら、規模によっては大きな船も直接繋留できますし、重い荷物も運べますね!」


「奥方は建築が専門だったか。そう、その通りだな。ま、俺は雇った建築家の受け売りだが」


 ちなみにこの建築家というのが、賢者トラボー一門の一人で、ナオの先輩だったりしたのだが、辺境伯領の港建設の責任者であるために大変忙しい。

 挨拶もそこそこで、交友を深める暇など無かった。


「それで、ジーンと奥方が乗り込む船はこいつだ。どうだ、大したもんだろう。うちの船じゃなくて、シサイド王国の船だからな! 作りが違う」


 それは、大型の帆船だった。

 漁業に使うためのものではなく、もっと別の用途のために建造されたと思われる船だ。

 形は優美で、そして居住区画と見られる部位が、後方にある。


「えっと、これは……シサイド王国の王族が持っている遊覧船ですよね? 一度もこっちには来たことがないはずで、わたしも資料でみたくらいしか分からないですけど」


「流石は奥方! その通りだ! ジーン、卿の奥方は優秀だな!」


「無論。彼女もまた、立派な賢者なのだからね」


「えへへ」


 ナオが照れた。


「奥方だけじゃない。俺は卿にも感謝してるんだぞ。いや、俺だけじゃない。うちの領地の連中はみんな、お前ら夫婦に感謝している」


「どういうことだね?」


「戦うしかできなかった俺たちに、新しい役割をくれたってことさ。戦争は終わり、シサイド王国と我が国は講和した。そして国同士の交流が始まる。ジーン、卿が二つの国が損害を得る前に、決着を付けてくれたお陰だ。俺たちは、国の入り口としての役割を得た。新しい時代がやって来て、そこに俺たちはいることができるんだよ」


 アルブレヒトが、私の肩に腕を回した。


「旅立ちは明日だろう? 今夜は俺に、最高の酒を奢らせてくれ、ジーン! お前らに感謝したい連中は幾らでもいる。夫婦揃って、この歓待を受ける義務があるぞ? うん?」


 私とナオは顔を見合わせた。


「また先輩は、誰かを救っちゃいましたね。これは、歓迎されないとだめみたいな雰囲気です!」


「ああ。そうだな。これもまた、貴族の役目というものだろう」


 辺境伯領での思わぬ歓迎を受けることになった我々。

 私は酒を嗜まないのだが、その辺り、アルブレヒトは分かっているだろうか。そこだけが心配である。

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[気になる点] >辺境伯領での思わぬ歓迎を受けることになった我々。 >私は酒を嗜まないのだが、その辺り、アルブレヒトは分かっているだろうか。そこだけが心配である。 ジーン殿、ナオ殿いまこそ夫人の薬を…
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