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追放賢者ジーンの、知識チート開拓記  作者: あけちともあき
第六部 新婚旅行と外の国
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130話 シサイド王国へ向かって 1

連載再開です!

隔日連載でまったりやっていきます。

 旅の荷物をまとめると、リュック二つ分になった。

 私とナオで背負っていくことになる。


「新郎と新婦が作業着みたいな姿で、リュックを背負っているのはどうかと思いますわ……!」


「でも、とっても動きやすいんですよ!」


 アスタキシアに、ナオがこの旅装の良いところを力説している。

 ちなみに彼女の胸の下辺りには、赤ちゃんを抱っこする抱っこ紐が設置されており、ディーンが収まっていた。


「私とナオがこの開拓地に初めて来た時、この姿だったのだよ。旅装はいいぞ。何と言っても仕事がやりやすい」


「あなたがたは新婚旅行に行くのでしょう!?」


 アスタキシアのツッコミに、集まっていた仲間たちはどっと笑った。

 かくして、私とナオはシサイド王国へ。

 いつものアーガスに移動魔法を使ってもらい、まずはヴァイデンフェラー辺境伯領を目指すのである。


『ついていく』


「むむっ、マルコシアス、君がか」


『エルフがいない。余裕はあるはずだ。質問をされたい』


 マルコシアスが、私にぎゅっとくっついて来た。


「これは想定外だ。どうだろうかアーガス」


「ええと、構わないんですけど、重量的に飛べるのはマドラー男爵領までになります。一泊になりますね」


「なるほど、それくらいならいいだろう。よし、マルコシアス、君の同行を歓迎しよう」


『うむ』


 マルコシアスは仰々しく答えたが、彼の尻尾が元気に振り回されている。


「ピャー!」


 マルコシアスが近くにやって来たので、子竜のディーンが大喜びで手を伸ばした。

 いつの間に仲良くなっていたのだ。

 何気にこの魔狼、コミュ力が高いのかも知れない。


「先輩、マルコシアスがいたら、ディーンの子守も任せられるんですよ」


「なにっ、いつの間にそんな技を身に着けていたんだ……。伊達に知識の悪魔ではないということか」


「はいはい! では出発しますよ、お二人とも! そちらの喋る狼さんも、近くに来て下さい! では、移動魔法を発動します!」


 いつまでも雑談をする我々に業を煮やしたか、アーガスが巻きを入れてきた。

 確かに、旅行に行くのにずっと喋っているわけにはいかない。

 我々は大人しく集まり、アーガスの後ろに並んだ。


 そして、光が我々を包み込む。

 さあ、新婚旅行の始まりだ。





 マドラー男爵領に到着すると、大歓待を受けた。

 ビブリオス準男爵領の結婚式の話は、どうやら国中に広まっているらしい。


「ビブリオス準男爵様!」


「準男爵の奥様も一緒だ!」


「なんで作業服着てるんだ?」


「赤ちゃんがもう……って、うわー! 角のついたトカゲ!?」


「でっかい狼を連れている!!」


 大騒ぎであった。

 ここで本日は、領民たちと談笑し、男爵一家の屋敷に宿泊させてもらうことにする。

 男爵の子、リットは、ディーンの正体が子竜であることにすぐ気付いたようだ。


「準男爵! これってドラゴンですよね! しかも、この形……本で読んだ、古代種の知性をもったドラゴンだ……! どうして、準男爵と一緒にいるんですか?」


「うむ。私が地竜を空に飛び立たせた話は知っているだろう?」


「はい! あっ、もしかしてあの地竜の……」


「そういうことだ。この子は、地竜の子供なのだよ。ナオに懐いたのでナオが育てているのだ」


「可愛いでしょう」


 屋敷の食堂を、物珍しげにトコトコ歩き回るディーン。

 やがてお腹が減ったらしく、ナオの足にペタっとくっついて来たので、彼女はそれを膝の上に載せた。


「ピャー」


 ディーンがごきげんで、バンザイのポーズをした。


「可愛いなあ……。これが、噂に聞いた大きな大きなドラゴンになるんですね」


「ああ、そうなるな。しかしリット。君は利発でみどころがあるな。どうだ、将来的に私の研究を引き継いでみないかね? いや、だがそれは未来ある青少年に私のエゴを押し付けることになってしまう。やはり、先のことは君自身が選び取るべきだろう」


「あ、いえっ! 光栄です! 僕、ビブリオス準男爵の研究を引き継ぎたいです!」


 このリットの言葉に、マドラー男爵が慌てた。


「待つんだリット! うちの領地はどうなるんだー!」


「あっ!!」


 しまった、という顔のリット。


「なに、特別な土地でなくても研究はできる。この鉱山について、そして鉱山に生きる生物について研究してもいいものさ。それに君は賢者ではない。ならば、やり方も私とは大きく違ってきて当然だ。新婚旅行から帰ったら、君を受け入れる体制を作ろう。開拓地に留学してきたまえ」


「はいっ! 絶対に行きます!」


「準男爵、お手柔らかに頼みますよ……」


 マドラー男爵がハラハラしている。

 安心して欲しい。

 私はただ、若き貴族に領地の外の世界を見せるだけなのだ。


 夜。

 何事もなく、私とナオは熟睡した。

 真ん中にディーンを挟んでである。


 朝。


 マドラー男爵夫人が頬を赤らめながら、


「ビブリオス準男爵様。奥様と過ごされる、領地の外での初めての夜はいかがでしたか……?」


 と聞いてきた。


「ああ。大変落ち着いてよく眠れましたよ。ナオもすぐに寝てしまいましたからね。素晴らしいベッドメイクでした」


 私が返答すると、彼女は唖然としたようである。 

 何だねその反応は。


「よく寝ました! 元気いっぱいです!」


「ピャー!」


 ナオとディーンが、同じガッツポーズをする。

 ディーンは最近、我々の動きの真似をするのだ。

 こうして、色々学習していっているのだろう。

 子竜は、動物よりは人間の赤ん坊に近いのかも知れないな。


 そして、私とナオとディーンで、大いに朝食を食べた。

 今日はこれから、辺境伯領までひとっ飛びなのである。

 旅立ちの直前、マドラー男爵夫人がナオに何か話していたようだ。


「準男爵婦人、お気を落とさないでくださいましね。ですけれど、淡白な殿方にはこれが効きますわよ。鉱山に住むイモリの黒焼きを乾燥させて粉末にしたもので、ここのイモリには精力を増す魔力が含まれているのでとても効きますの! わたくしもこれで、主人はイチコロでしたから!」


「はい! 何の話だか分からないですけど、ありがたく頂戴しますね!」


 ナオがニコニコしながら、怪しい粉末の入った紙包みを受け取った。

 あれはなんだろう……。

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