表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放賢者ジーンの、知識チート開拓記  作者: あけちともあき
第四部 開拓、陰謀、ドラゴン!
104/171

98話 地竜の祭壇

 騎士たちが帰っていったので、早速本題に取り掛かろう。

 ここに、レイアスから持ってきた地竜の祭壇がある。

 大きさは抱えて持ち歩ける程度。

 底が錐状になっており、地面に突き刺して使用するようだ。

 一見して太い柱なのだが、あちこちに地竜を表すらしき紋様が刻まれている。


「先輩、それ石でできてますよね? よく重くないですねえ」


「うむ、大体ナオと同じくらいの重さだ。つまり、平均的な女性よりもちょっぴり重いくらいだろうか」


「注意注意! 先輩、それはデリカシーがない発言です!」


 ナオに脇腹を突かれてしまった。

 むむっ、くすぐったい。

 私はたまらず、祭壇を適当なところに下ろしてしまった。

 すると、祭壇は意思でもあるかのように、地面に自ら潜り込むではないか。


「興味深いな。こいつも遺失魔法の一種で作られているに違いないぞ」


 ガーシュインが、荒れ地に錐状の底部をすっかり埋め込んでしまった祭壇を眺める。


「おい、リザードマンの女。これはどうやって発動させるんだ」


「まあ待テ。クークーしかやりかたを知らなイ。急かしてはいけなイ。クークー、いけるカ?」


 クロクロの問いかけに、クークー嬢がこくこくと頷く。

 エルフ語の聞き取りはかなりこなせるようになっているのだな。

 彼女の努力もあるのだろうが、リザードマンは学習能力が高い種族かも知れない。

 私も負けてはいられないな。

 早急にドワーフ語をマスターしよう。


 クークー嬢はトコトコと歩み出て、祭壇の前にひざまずく。

 そして、口を小さく開けて、細く息を吐き出し始めた。

 やがて息に声が混じる。


 リザードマンの言語とは、しゅるしゅると言う呼吸音や、舌を出し入れする音を用いた特殊なものだが、彼女が今発し始めているこれは明らかに違う。

 明確に、私の耳が捉えられるような、歌声のようなものが聞こえ始めたのだ。

 これは、リザードマンならぬ他の種族でも再現が可能だろう。

 なるほど、これは本来、リザードマンが作り上げた歌では無いのだ。

 彼らは魔族から祭壇と共に、歌を譲り受けたのだろう。


 やがて、歌に呼応して祭壇が揺れ動き始める。

 光り輝いて自ら音を立てたり……はしない。

 揺れているだけだ。


「地味に動いてますね」


「思ってたよりも地味ですわね」


 ナオとアスタキシア嬢が同じような感想を述べる。

 うむ、お伽噺では、派手な展開が待っていることもある。

 だが、現実とはえてして地味なものである。

 そもそも、祭壇に動きがあったこと自体が驚きなのだ。

 ポジティブに受け止めようではないか。


 そんなことを考えていたら、祭壇が周囲の地面を巻き込んで、ゴゴゴゴゴと盛り上がり始めたではないか。


「うわーっ」


「うわーっ」


「うわーっ」


 私とナオとアスタキシア嬢が大変驚き、思わず叫んだ。

 この場に集った仲間たちも同じ心地であろう。

 トーガなど臨戦態勢であり、シーアは自分だけ逃げの姿勢になっている。


「なんだ……!? 危険はないんだな……!」


 大変剣呑な空気を纏ったトーガが問う。 

 クロクロが頷いた。


「多分ナ」


「多分とはなんだ! はっきりしろ!」


「クロクロもこれは初めて見ル」


「ならどうして多分なんて言える!」


「クークーのすることだからダ! クロクロはクークーを信じていル!」


 クロクロの宣言に、女子たちがにっこりした。

 愛を信じる男気溢れる発言だからであろうか。

 周囲の空気が一変したので、トーガが顔をしかめた。


「いいか、おかしな事があったら、俺が止めるからな。それからジーン! お前、自分の立場をもっと理解しろ。この開拓地で、お前の身に何かあったらどうする! だのに、事が起こる最前線へ突っ走りやがって。ほら、もう少し下がれ! 下がれ!」


「ぬうっ、言うことは分かるが、せめてあと少し前で見ていてもいいだろう……?」


 ということで、一定の距離を取って眺めることになった。

 盛り上がった地面は、荒れ地全体へと広がっていく。

 スピーシ大森林の前面に広がる平野が、まるごと高く持ち上がっていっているのだ。

 とんでもない光景である。


 荒れ地の真下には、幾重にも重なった地層があった。

 そして、それらの地層を貫くように、何か巨大なものが埋まっているのが見える。


「これはなんだ!? 確認せねば!!」


「あっ、ジーン待て! またお前、好奇心で突っ走ったな!」


 トーガの声を後に、私は姿を現した巨大な何かに駆け寄っていた。

 クークー嬢のすぐ目の前。

 そこに、暗い緑色の膜に包まれた、大きな何者かが存在している。

 緑の膜は、まるで繭のような形をしている。

 その中は半透明に透けて見えており、やはり巨大な何かを包み込んでいた。

 これが地竜であろう。


「クークー嬢、これが地竜かね?」


 問うと、彼女は頷いた。


「チリュウ、トビタツ、ソラヘ。チリュウ、トキ、マッテル」


「時を待つ……。それは一体、いつのことなんだね?」


 クークー嬢は、口を閉じて、むにゅむにゅと動かした。

 言葉が見つからないようだ。

 彼女は尻尾をパタパタさせてクロクロを呼ぶ。


「なんダ。通訳が必要だナ」


 二人はリザードマン語で会話を始め、少しすると伝える内容が纏まったようだ。


「ジーン。クークーはこう言っていル。地竜は長い間、魔力を吸っていタ。それは、空よりも高い空へと旅立つためダ。真のドラゴンはみな、最後は遥かに高い空へと旅立ツ。地竜にも、その時が近づいていル。あと少しダ」


「ほう。ということは、まもなく荒れ地から地竜は旅立ち、ここも草木が芽吹く大地となるということか」


「うム」


 なるほど、それならば話は早い。

 地竜が旅立つ手伝いを行い、彼、あるいは彼女に、この荒れ地を後にしてもらえばいい。

 それによって、開拓事業はまた大きく進むことになるだろう。


「よし、地竜を手伝おう。我々で、この巨大なドラゴンが旅立つために手を貸すのだ。クークー嬢、どうすれば、地竜の旅立ちを早められる?」


 クークー嬢は少し考えた後、またクロクロに言葉を伝えた。


「魔力ダ。濃厚に固められた魔力を、直接地竜に食わせればいイ」


「なるほど、ならば話は早い」


「分かりやすい話になってきたじゃないか。ジーン、貴様といると退屈せんな」


 ガーシュインがにやりと笑う。

 そう。

 地竜をどうこうして、荒れ地を実りの大地へと変えるという当初の計画は、そこへ至るための道筋が見えない状態だった。

 だが、計画を果たすために必要なピースが今与えられた。

 計画達成のための要素は集まりつつある。


「よし、諸君! 我が開拓地は、地竜の旅立ちを全力で支援する! かの巨大なドラゴンには気持ちよく旅立ってもらい、我々は跡地となった大地をいただくとしよう!」


 私は高らかに宣言したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ