情報収集ver.クルミ
ボクはクルミ。さっき新と別れてから一人で行動している。
「なんなのさあいつ……せっかくピンチを救ってやったのにボクのコンプレックスの傷をどんどん深く掘りやがって……でも、さすがに一人になると暇になるな……さーて、何しよっかなー」
織田信長を探すために、一応聞き込みを始めるとしようかな。にしても、会って一日も経ってないのに新がいなくなるとものすごく暇になるものだなぁ。まあ、好きになることはありえないからね、ボクと新は恋愛なんてしちゃいけない関係が戸籍上であるからね。
新と一緒にいなくなったこともあり、今は本来の口調に戻している。そして、コンプレックスである貧乳を深く削ったり、色々文句を付けたりする新に影で文句を付けていた。
「あのー、すみません。織田信長様がどこにいられるかお知りになりませんか?」
とりあえず、すれ違った中年くらいのおじさんに聞いてみた。
「信長様をお探しなのか? いつもの感じだったらそろそろ町に降りてくる頃だと思うんじゃが……まあ、その辺をふらついておれば会えるじゃろうよ」
「そうですか、ありがとうございます」
んー、町に降りてくる頃なのか。まあ、適当に歩いてみようかな。にしても、色々売ってるなー。さすが楽市楽座を掲げる織田信長政治だよ。
「あ、あれ美味しそう。すみません、これ四本貰えますか?」
「まいど、8文じゃ」
ストレージから8文を取り出し、店主の持つ団子と思われるものと交換する。
「はい、ありがとうございます」
団子かな、見た感じはみたらし団子っぽい感じだけど、味はどうだろうか。
「あむ……これ美味しい、後で新にも食べさせてあげよっと!」
みたらし団子に似たような味だし、やっぱりみたらし団子なのかな。
——あれ、なんでボク今新のことを言ったんだろ……やっぱり、本来友達なんていないボクに友達みたいに接してくれるからかな……
にしても、信長って町に降りてくることが毎日なんだ。命の危険とかないのかな?ボクなら城に引きこもってゲームしてるだろうけどなー。あ、この時代にゲームはないんだった。
「信長が来るまで何しようかなぁ」
商店街っぽい所を彷徨いていると突然知らない人に話しかけられた。既に団子は食べ終わっている。
「おいそこの姉ちゃん。ちょっと俺らに付き合ってくんね?」
こんな時代からこういう人いたんだ。ボクに興味を持つなんて珍しい人もいたものだ……自分で言うと余計悲しくなるね。彼氏なんか無縁だったから、しょうがないよね。胸ないから興味持たれなくても仕方ないよね。女子特有の色気みたいなのないから仕方ないよね。
「なんですか? ボク忙しいんだけど」
「そうは見えないぜ? いいからさー、ちょっとでいいんだよ。俺らと遊ばね?」
こういう人達は本当にウザイ。未来でもボクは友達が少ないから基本一人でいるために、友達になるからちょっと遊ぼーぜ、的な男子によく話しかけられたものだ。
「ウザイです。どこか行ってもらえませんか? 連れの男の人とはぐれて探しているんです」
「そんな男よりさあ、俺らの方がいいって」
——こいつら本当にこの時代の奴らかな……怪しいところではあるけど、邪魔だからちょっと雰囲気変えるか。
「ウザイです邪魔ですのいてくださいのかないなら命の危険があるよ」
目を細めて声は出来る限り低くして言ってみた。ちょっと怯んだようだけど……
「いいねぇ、その反抗的な感じ。嫌いじゃないぜぇ」
ホントなんなのだろうか。とっとといなくなってほしい。剣を使えば一瞬だけど、ここで使うのは色々とまずいしな……
再び声音を低くして脅しにかかる。
「いい加減にしてください。ボクに何の用ですか? 遊ぶなんて子供みたいな事言っていないで、働いたらどうなんですか?」
イラついて敬語になってるや、でもいいか。
「働いたらさ、頭おかしくなっちゃうじゃん。ちょっと遊んでくれたら仕事してもいいけどさ。そういう訳だからいいじゃねーか。ちょっとくらいさぁ」
絶対嘘だ。やっぱり新と一緒にいるべきだったか……いや、あいつは一緒にいても役に立たないか。
この際、逆に乗れば早いかもしれない。何をされるかは置いといて。
そこまでをコンマ数秒で考え、新たな作戦に移る。
「わかりました。それで、何をするの?」
出来る限り明るく、笑顔で言ってみた。
「そりゃあもちろん……」
「遊び、だからもちろんボクに危害はないよね?」
これであるとか表情が固まったりしたら黒だ。その瞬間この人達は終わりだね。
「ないない、何にもないって……ちょっと蹴鞠で相手してくんねーかなーって思ってたんだ」
「それボクの必要ないですよね。時間がないのでこの辺りで失礼されていただくよ」
そう言ってそそくさと男達から離れた。
「なんなのさ、ホント……新に会ってから一度もいいこと起きてないよ……分かった。あいつは厄病神だ。だからこんなに悪いことばっか続くんだ……でも、みたらし団子くらいはいいことかな……」
そんなことを考えていると──
「きゃー……!」
遠くからかすかに悲鳴が聞こえてきた。
「今の悲鳴、なんだろう。方角的に新の行った方面だね。ちょっと行ってみようか」
ダッシュでさっきまで通ってきた道を折り返し帰っていく。今回は運良くさっきの人たちには会わなかった。 また、他の面倒な人にも引っ駆らなかった。
悲鳴の場所に着くと、誰かが戦っている音がした。
「あれは……新かな。相手は、落ち武者?かな。まだ五級魔物だね。あれくらいは倒せないと……新の攻撃全然当たってないや……何してんだよ。」
すると、新は動きを止めて腰を落とし、一気に走り抜ける体制に入った。
「若干無謀な気がするな……あれ? おお、上手いことかわしたな。そこからどうするんだろ……おお、ナイスアタック。へぇ、さすがゲーム大好きゲーマーオタクなだけはあるなー。そういえば、新がモンスターを討伐するのってこれが初めてだったっけ? ウインドウウォッチを装備していたらARの機能も追加されること教えてなかったけど、大丈夫かな……あれ? 意外と普通に対応してる。あれはスチールソードかな。リーチと重量がちょっと上がるけど、硬さとかはそこまで変わらないからなぁ」
落ち武者的なモンスターを討伐した新は少し空を仰ぎ見てから移動を再開しようとしたけど、座り込んでいた少女が近寄っていたのを気付かずにぶつかってしまった。
「何やってんだか。あれ、どっか行っちゃう、追いかけよ!」
急いで新と橙色の着物を着た女の子を追いかける。