情報収集ver.新
さて、一人になったわけだけどどうしようか……クルミがいないってことは全部俺が一人でやらなきゃいけないのか。モンスターが出てきたらどうしようか……ここもゲームみたいに圏内安全区域とかあるのだろうか? あってくれ頼むよ!
「聞き込み始めるか。にしても、ホントに木造建築物ばっかだな。ほとんど店だしよ。何買おうかな……。
お、これ結構いいじゃん。おっちゃん、この簪くれないか?」
「あいよ、誰かにあげるのかい?」
「まあね、俺の旅仲間に似合いそうだったからさ」
「そうかい、ひとつ250文だよ」
この時代の金持ってないや、どうしよう。
「あー、ちょっと待って。ええと、あれ? ウインドウウォッチの所持金の表示が変わってる。ここから取り出すのか。250文っと、結構安いな、多分……一文っていくらだ?」
おっちゃんに背中を向けて、ストレージを操作して、250文を取り出し、おっちゃんの持っている簪と交換する。
——とりあえず簪は買ったし、クルミも喜ぶだろう。別に好意を抱いているわけじゃないからな!
……でも待てよ、クルミは見てくれは可愛いし性格も悪くない。未来から来たとは言え初対面の俺をあそこまで優しく扱ってくれたんだ。好意を抱いても問題ないくらいのレベルだよな? あれ。しかもボクっ娘というレアキャラだ。案外好みのタイプなのかもしれないし……
いや、でも貧乳……いや待て、俺はどちらかと言うと巨乳はそこまで好みじゃない。むしろ小さい方が割に合うのかもしれない。
「俺ってロリコンなのか?」
そんな疑問を口に出しながら、新は再び聞き込みを開始する為に歩き出す。
とりあえず一人二人くらいは信長の情報集めで話しかけた方がいいかもしれない。
「すみません。織田信長ってどこにいるんですか?」
濃い橙の着物を着た女の子に聞いてみた。
「え? あ、はい! えーと、その……」
めちゃオドオドしてる。どうしよう、やめた方がいいのか?
「た、多分、いつもの通りならそろそろ町に降りてくると思うんですけど……」
一応、新の問いに橙の着物の女の子は答えてくれた。
「そうですか。ありがとうございます」
「あの、えと……」
まだ何か言いたいのだろうか。
「どうかした?」
「あ、いえ……先程振り返った時にちょっとお水が着物にかかってしまったので……」
まじか。えーと、確かに濡れている。
新が確認すると、少女の手には豆腐かなにかか、白い長方形が入った木製の箱を持っており、その中に入っていた水が少しかかってしまったらしい。
「このくらいなら大丈夫だよ。心配してくれてありがと」
「わ、わかりました。ごめんなさい……」
少女は謝ってすぐに新から離れていった。──嫌われてしまったかな……
とにかく、信長はしばらくすれば町中に降りてくることがわかった。にしても、さっきの子意外と可愛かったな……
「ちょっとぶらつくか」
俺はさっき女の子が走って行った方角に向かって歩いていった。次さっきの子と会ったら名前くらいは聞いてみようかな。
「ふふんふふーん」
呑気ながら、鼻歌混じりに町中を歩く。
「お、あれ美味そう。すみません、これもらえますか?」
みたらし団子みたいだ。白い団子を串に刺して、その周りをタレでおおっている。
「あいよ。一本2文だ」
「んじゃ2本ください」
「ほら」
「ありがとうございます。はい、2文です」
一口齧ると、口の中にタレの味が染み渡り、程よく焼かれた団子の焦げがまた美味い。
「この時代のグルメも伊達じゃないな。クルミにも食わせてやりたいぜ」
おっと、さっき喧嘩別れしたやつのことなんか考えてどうしちまったんだ俺は。
そんなことを考えていると……
「きゃー!」
悲鳴が聞こえた。せっかく何も無いと思って安心してたのにどうしてこういう時に限って何か事件が起きるかな! やっぱりこういうのってお約束なの!?
「仕方ない、行くか……!」
新は、自分が出せる最高速度でダッシュしてその事件現場へと向かった。
「おいおい、なんじゃこりゃ……」
そこには、鎧兜を着けた武士と百姓と思われる女の子がいた。クルミと同じくらいの歳のの見た目だ。──仕方ない、助けるとしよう。
「おいお前!何してる! 女の子一人相手に重装備の武士が襲いかかるとはなんとけしからんこと……か……?」
武士をこちらへと振り向かせると、ゴツゴツと骨ばっていて、真っ白い肌があった。──いやこれまじもんの骨じゃねーか!
「すみません、さようなら……」
そう言って何も無かったかのように去ろうとしたが、残念ながらそうはいかず、骨武士改め落ち武者は刀を抜いた。
「逃げさせろよ! なあ! 逃げさしてくれよ!」
無意味な抵抗をしてみるが、一切効果はなく──
「ちっ、仕方ねーな、ここはやるしかないか」
ウインドウを操作してスモールソードを取り出し、鞘から勢いよく抜き去って、落ち武者めがけて切りかかる。
「俺の第一戦目の大金星はお前からいただくぜ! せやあ!」
スカッ……外した、これ、人目があるからすげー恥ずかしい。くっそ、もう一度!
「ぬおりゃ! とりゃ! てい!」
渾身の三連撃! 全くもって当たらない。──どういうことだ? いやまて、落ち着け、ここは冷静に対処するべきだ。一旦距離をとってそこからの一撃で仕留める。
「ふぅ……いくぜ、ぜりゃ!」
掛け声と共に走り出した。刀が飛んでくる。既のところでかがみこみ、なんとか回避した。あとはこの剣を切り上げるだけで、落ち武者の体に当たれば倒せると踏んで、思いっきり地面を蹴って、剣を後ろに引き絞る。
「行ける……! てあっ!」
思いっきり後ろに引き絞った剣を持った右腕を一気に前へと放り出す。何かに当たって何かを砕いた感触があった。──やったのか……? そう思いながら恐る恐る後ろを振り向いた。そこには、背骨から綺麗に砕けた骸骨跡が転がっていた。視界内に何かが表示される。
「なんだ? これ。初回モンスター討伐成功報酬?お、これ新しい剣じゃん! えーとなになに? 《スチールソード》……まあ、リーチが伸びるだけましか」
スモールソードとスチールソードを入れ替えて、しばらく空を仰ぎ見る。雲はあるけど、雲ひとつない綺麗な青空と表現したくなるような空だった。
「さて、信長探しを再開するか」
「きゃっ……」
そう呟いて後ろを振り向いたら、誰かとぶつかった。
「だ、大丈夫? ごめん、後ろに人がいるとは思わなくて……あれ?」
「い、いえ、私の方こそ、ちゃんと周りを見ていなかったものですから……あ……」
さっき襲われて座り込んでいた少女である。濃い橙色の着物を着けて、長い髪を簪でとめている。──おっと、よくよく見るとさっきの子じゃないか。
「あの、えっと……さっきお会いした方ですよね?先程はすみませんでした。それと、今回はお助けいただきありがとうございます……お強いんですね。私お線って言います!」
「あ、うん、えっと、俺は時……じゃなくて、新! 俺の名前は新だよ。さっきのことは気にしなくていいよ。もう乾いちゃったしね。というわけで、よろしくね、お線さん」
お線は笑顔で新の突き出した手を握って立ち上がった。
「えと……助けてもらったお礼に、私の家に寄っていきませんか?」
「え、いや、それはお線さんの家に迷惑になっちゃうからやめておくよ」
新は少し悪そうにする顔で断る。しかし、お線はそんな新を気にも止めずに
「いえ、そう言わずにどうぞ寄ってください!」
そこまで言われちゃあしょうがないか……
結局、勢いに押されて家に訪れることになった。──クルミの奴、大丈夫かな……
「わかった、長居はしないと思うけど、案内してくれ」