戦国時代
目を開けるとそこには着物を着た多くの人々、木造の建築物が建ち並び、その背後にはそびえ立つ城があった。クルミはそそくさとタイムマシンを片付けている。
「でっけー城……あの城、なんていう城だ?」
「……あなた、歴史好きなんじゃないんですか? あれは清洲城、織田信長が支配している城だと思いますよ」
「ということはここは尾張の町か。さて、一番に何をすればいいんだ?」
「着替えですかね。この格好で街中を彷徨くのはさすがに目ちますからね。ボク達も着物になっておきましょう」
っつうことは、ウインドウウォッチの出番ってことか。えーと、画面をタッチして、持ち物欄からアイテム欄へ、そこから……えーと、お、あった。これをタップして、OKボタンを押すと──すると、体が光に包まれて皮膚に当たる服の感覚が一瞬で変わった。
「へぇ、こんな感じがするんだな。クルミ、着替えは終わったか?」
「はい。どう、似合いますか?」
新は紺というか黒っぽい着物を着ていて、クルミは少し派手だが、黄色の着物を着ていた。
「なんつーか、お前の目立ちそうだな」
「しょうがないじゃないですか。サイズが合うのこれしかなかったんですよ」
「そうですか。君にサイズの心配なんて必要なのか疑問だけどな」
「必要ですよ! 見ての通りボク身長が150しかないんですよ⁉︎」
しか……? しかってどういう……
「200年後には身長低い人が少ないんですよ。色々あって」
ああ、そういうことか。
「なるほど、つか、そっちの心配か。俺はてっきり胸のことかと。そんな薄っぺらい胸で何を、なんて思ってた」
「……ねぇ君、殺されたいの? ボクの貧乳コンプレックスは相当だよ?」
相当らしい。これからもからかいネタとして使えそうだ。というか、急に喋り方がタメ口になったんだけど……
「さて、とっとと信長探すか」
「話そらすな!」
叫ぶクルミはさておき、何故信長かと思うだろうう。理由はというと、やはりこの町でなら織田信長が一番世間の情勢について知っているはずだからだ。
「はぁ……そうですね。じゃ、手分けして聞き込みしながら探しましょうか」
まだ眉間をピクピクさせながらクルミが言ってきた。そして、またぎこちない敬語に戻っている。
「了解。また後でな」
こうして新たちはここで一時解散した。