新の使命
「じゃあ言いますよ。今……というか200年後にですね、魔法や超能力といったすごい力を持った異世界に行った人達がこっちの世界に戻ってきて、世界征服しようとしてるんです。そして、その対策として政府が打ち出したのが、日本異世界化計画。どうせそのうち世界異世界化計画になるだろうですけど。ボクはそれを止めるために第一に選ばれたこの時代に飛んできて、さっきのウルフがボスだったらしいんです。それでこの時代は元通りになるはずだったんだけど……」
「だけど、どうしたんだ?」
「終わらせるのを見計らってたのか、ウルフ討伐の瞬間に別の過去の時代が異世界化されたらしくて、今の時代はほとんど変わらなかったみたいなんです」
なるほど。ボス的な奴を倒したにも関わらず、何も変化が起きていない理由はそういうことか。
「ということは、そのまま時代を飛んで俺とお前でそのボス的存在を討伐して未来を守るってことか?」
「そういうことですね」
「お前一人じゃダメなのか? だってこの時代一人で攻略したんだろ?」
そう考えてみたらすごいな、恐ろしい……毎日拝めよう、殺されないように……
「はい。でも、ここは最初の小手調べみたいな感じで、結構簡単な難易度だったんですよ」
「そうだったのか……と言ってもよ、俺は制服でお前は一応フル装備だろ?割にあってないと思うんだけど」
「ああ、えーと……このウインドウウォッチ、武器防具全部、初期だけど入ってて税込700円で売ってるけど……」
「買う」
即答してしまった。でもここで制服のまま変に戦闘するよりはマシか。
「毎度アリー」
クルミはニコニコしながら「この時代、稼げるかも……」などと悪徳商法を考えている。——そもそもこの時代の金って使えるのかな?
「使えますよ。小銭は使えるんですけど、お札は使えませんけどね」
「勝手な思考の介入やめろ」
とにかく、早いうちに装備を変えておこう。
「あれ、そういやお前と話し出してから腕の傷が痛まなくなったんだけど……」
「ああ、それは薬ですよ。200年後の薬で切り傷擦り傷みたいなのは即治っちゃいますよ」
すごい、薬であんな酷い傷が治っちゃうなんて。とりあえず服替えるか。
「えーと、黒い装備はあるか? ……お、あったあった。んで、剣は直剣……うわー、スモールソードって、めちゃくちゃ初期装備じゃん……まあ仕方ないか。よし、完成」
「……中二臭くないですか? 黒のコートで背中に鞘をさすとか……」
「中二臭い言うな! これは俺のネトゲでの基本装備なんだよっ!」
「へぇ、ネトゲしてるんですね。オタクなんですか?」
「さ、さあな……」
オタク趣味がある男子は嫌われやすいとか聞いたことあるからな……ここは黙っておこう……
「オタクなんですか。まあ別に嫌いじゃないですよ」
そこでにっこり笑わないで、悲しくなるからさ!
「もういいよ……」