表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI(人工知能)に官能小説を書かせるには、どうすればいい?  作者: にのい・しち
1 Andrоidは電気ウナギで夢精するか?
8/16

8 エロ・グラビティ

8 エロ・グラビティ

「やめて下さい……夫がいるんですよ」


 玄関の壁に追い込まれた人妻は、セールスマンに、抵抗を試みる。


「奥さん。最近、ご無沙汰なんじゃないの? 私が、貴方の身体も心も満たしてあげますよ」


 セールスマンはかがみ、人妻のスカートをまくりあげる。

 純白の下着が露わになると、彼は両手で下着に手を掛ける。


「いやぁ……」


 人妻の脳裏に、最愛の夫と息子の笑顔が浮かぶと、恥ずかしさのあまり、脱がされそうになる自分の下着を押える。


 だが、セールスマンは引き下がるどころか、かえって彼の好奇心をかき立てた。


「奥さん……そんなに嫌がられると、もっと乱暴にしたくなるじゃないですか」


 セールスマンは人妻の手を払いのけ、両手でゆっくり、ゆっくりと彼女の下着を下ろしていく。

 彼女の局部を隠しているのは、たった一枚の、汚れの無い布地だけ。

 それは、ヴァージンロードを通って来たばかりの、花嫁に掛けられたベールのようだ。

 ベールをまくり上げ、唇を奪う新郎のように、セールスマンは時間をかけて人妻の下着を下ろしていく。


 ここまでじらされると、彼女も、いっそ一思いに脱がして欲しいとさえ、願ってしまう。

 セールスマンは、恥じらう人妻を見て、下品な笑いを浮かべて言う。


「奥さん……こういうの、好きなんだねぇ」


 言葉の凌辱に、耐えられなくなった人妻は、自分の手で、下着を押え強く抵抗する。

 思い通りに、事が運ばなかったセールスマンは、その抵抗に気を落とし、両手の力が抜ける。

 人妻は、自身の貞操を守ったことに安堵すると、共に燃え上がった情熱を、自ら消してしまったことに、やや後悔する。


 しかし――――この駆け引きすらもセールスマンの思惑どおり、彼は彼女の一瞬の気の緩みを逆手に取り、今度は荒々しく、肉を食らう獣のように、下着をズリ下ろした。

 人妻は、意図もしない凌辱に見舞われ、抵抗の余地を無くす。

 貞操を守る事が出来なかった彼女は、諦め、最愛の夫と、一人息子との日常に別れを告げ、全てを受け入れる。 


「もう……好きにして下さい――――――――」


 汚らわしい男の手中に、落ちた人妻は背徳に溺れる――――。


#include <stdio.h> 

 

 な、何てナマナマしいんだ……。


 僕は初めて読む、官能小説の艶めかしい文章に、気持ちが高ぶり全身が火照る。

 

 こ、これが……温度を感じる文章……人妻が家族を思い浮かべながら、セールスマンの手中に落ちる瞬間なんて、太宰治の『人間失格』を彷彿とさせ、女性の白い下着を、初うぶな花嫁に例えるあたりなど、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のように、壮大な銀河の旅路を語る場面に通ずる。

 なにより、セールスマンがじらされ、待ちに待った人妻の陰部との対面。

 これは言うなれば、隠された秘法を求め、神秘の島へと足を踏み入れた冒険者が、茂みをかき分けて苦労の末、見つけ出した輝く宝石――――そう『宝島』

 卑猥ひわいで、下劣な文章に息吹をさえ感じる――――。


 これだ! 僕が研究するAIには、この表現が足りていなかったんだ!


 return 0;

}


 次の日――――。


「と言う事で、HATYハティに官能小説の文脈を、ラーニングしようと思うんだ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ