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AI(人工知能)に官能小説を書かせるには、どうすればいい?  作者: にのい・しち
1 Andrоidは電気ウナギで夢精するか?
15/16

15 想像力

 夕日に照らされた風景は、今日の出来事を見た町が、恥ずかしさのあまり、顔を赤らめているように見える。

 大学に戻る道すがら、たわいも無い話題で、お茶を濁す。


 ハツリさんが聞く。


「ねぇ、何で、AIに小説を書かせたいの?」

 

 先頭を歩く、モンちゃんと設楽から目を離し、僕は並んで歩くハツリさんに、視線を向けながら答える。


「小説を書かせるのが、目的じゃないんだ。AIに想像力を持たせる事が、目的なんだよ。“フレーム問題”って解る?」


 彼女は首を傾げ、解らない素振りを示す。

 茶髪のポニーテールが、左右に揺れて、愛らしく思えた。

 僕は、子供に語りかけるように、笑顔を作り、優しく、少し自慢げに講釈を宣べる。


「AIが、受けた命令に対して、何処まで、情報の範囲を広げて、何処までを実行するか? 

て言う問題なんだけどぉ、言葉の許容を決められない、て言えばいいかな~。

例えば、ハツリさんに、ここにいる、部員のジュースを買って来てって、お願いしたらどうする?」


「断る」


「……」不意の返しに、見繕みつくろった笑顔はほころび、表情が凍り付く。


 ハツリさんの、ハッキリとした答えは、結び付けようとした話に、導くことが出来なくなり、あえなく終わる。


 気を取り直し、再び笑顔を作ると解説する。


「例えばの話しだよ。ハツリさんが部員のジュースを買って来るとき、人間の場合、まず、何人分のジュースが必要かを考え、予算はどれだけ使うか、好みは何か? 

どの場所で購入するかを考えて、買いに行くでしょ? 

将来、AIを搭載したロボットに、ジュースのお使いを頼んでロボットが自動販売機で買う場合、ロボットは、自分が持たされた予算を全て使ってジュースを買うことになる。

AIからすれば結果的に『ジュースを買う』と言う目的を達成していることには変わりないんだよ」


「それなら、人数分の買う、お金を、持たしておけばいいじゃない?」


「課題はそれだけじゃないんだ。ジュースをどこで買えばいいのか? 

人間が求めている好みは何か? 

それも、考えなきゃいけない。

ただ、ジュースを買いに行かせると、近場に自動販売機が無かった時、自販機が見つかるまで、永遠に探し続けるかもしれないし、自販機に辿り着いても購入した物が全部、炭酸ジュースで、飲む人間がみんな炭酸が苦手だった、なんて事もある」


 話に勢い付いたので、更に説明を続ける。


「人間が、最初からAIに、欲しいジュースの情報を与えて置けば、ロボットは求めていた物を、買って来てくれるだろうけど、そうなるとジュースに関する情報や、使える予算、自販機の場所と品揃えの情報、類似する物しない物、自販機までの地域情報など、五分で済むお使いに命令を与えるだけで半日かかるかもしれないんだ」


「それは困るわ……」


「それに、そこまで固定した、命令だけをさせていたら、それはジュースを買う事を、専門にしたロボットになる。

そうなると、ただの動く自動販売機だ。

AIの最終目標は、人間のように考え、多目的に行動できる“存在”なんだよ」


 感心するハツリさんに、説明を続ける。


「海外だと、極端な例えで、”クリップの製造”があって、クリップを製造するAIに、指示を与えると、AIはひたすらクリップを作り、クリップの材料が無くなると、材料になる資源を調達して、またクリップを作る。

そうなると、人間が使う分の資源まで使い切り、不要なクリップばかり増えて、最終的に、自然の生態系や動物、人間の生活圏まで脅かすことになる。

だから、AIに『想いやり』と言う感情が必要になる」


「AIに想いやり~?」


 ハツリさんの、無邪気な笑顔を見て、僕の心はほころんだ。

 そして、理解し、興味を持って欲しかった、話に着地する。


「そうだよ。相手が何を考えているか? 何を求めているか? 表情、しぐさ、態度から読み取り、『想像』する必要があるし、想像を膨らませる為には、相手に共感できる『感情』――――“心”が必要なんだ」


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