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AI(人工知能)に官能小説を書かせるには、どうすればいい?  作者: にのい・しち
1 Andrоidは電気ウナギで夢精するか?
10/16

10 古典落語

「ねぇ、私達で、小説を書いてみたら?」


 彼女の提案に、部員たちは、間の抜けた顔をする。

 ハツリさんが、言葉を付け足す。


「誰かに何かを教えるなら、まず、自分が詳しくないと教えられないでしょ?」


「なるほど……」


 一つの方法としては、有りかもしれない。

 親が子供に、箸の使い方を教える時、まず、お手本を見せ、手を取り、コツを指で覚えさせようとする。


 この場合、まず、僕達で小説の書き方を学び、AIに、押さえて置くべき、作り方のポイントやコツを伝授する。


 僕はハツリさんを見る。


「でも、どうやって書けばいいんだろう? 僕たちは、普通の小説すら書いたことないのに?」


 設楽が顎髭で、教・材・をしゃくり、回答する。


「そんなの決まってるだろ? とりあえず、官能小説を読むんだよ」


#include <stdio.h> 


〈Andrоidは電気ウナギで夢精するか?〉

 田舎の区役所に転勤して来た、お堅い公務員、槇代まきだいは、真面目でゆうずうがきかない、機械のような男。

 ある日、槇代は仕事帰りの河川敷で、ウナギ取りをしている、女子高生を目撃。

 掴み所がないウナギを、柔肌の手で捕まえようとする、女子高生の手つきに、槇代の内に眠る性衝動が脈打つ。


「ヤダ!? ウナギがヌルヌルして気持ち悪い~」


 槇代は目を細目、女子高生が掴むウナギを眺めていた。


 透き通るような、女子高生の柔らかい手が、上へ上へと、のたうち逃げるウナギを捕まえようとする。

 

 その手つきは、そそり立つ男自身を擦るかのように見え、ウナギの粘膜で覆われた、女子高生の両手は、ぬらぬらと輝く。

 

 ウナギは、女子高生の手から逃れると、その勢いで無垢な谷間に入り込む。


「いやぁぁ!? ウナギが胸に入っちゃった」


 槇代は静かに、上着の内ポケットから、Andrоidを取り出しカメラのレンズをかざし、シャッターを切る。


〈美魔女モデルは夜、熟れる〉

 専業主婦の民恵たみえは昔、モデルをしていただけあって、異性も同性もうらやむ美魔女だ。

 不景気で夫の収入が不安定になり、家計支える為、彼女はモデルの仕事に復帰する。

 だが、民恵の美しさに魅入られた、スポンサーの欲望は暴走する。


「ス、スポンサー!? これは何のつもりですか?」


 民恵は背後から、屈強な男に羽交い締めにされ、恐怖する。


 目の前には、舌をなめ綴りする、スポンサーが見据えていた。


「民恵さん。モデルとして売れたかったら、私の言うことは聞いた方がいい」


 二人の男に挟まれ、民恵は恐怖する。


 スポンサーが顎をしゃくり合図すると、屈強な男はスカート越しに、民恵のか細い脚に手をかけ、両膝を裏から持ち上げる。


「いやぁぁ! 離して!?」


 ”辱め固め”により、民恵は空中で開脚したまま、身動きが取れなくなった。


 スポンサーは、開かれた民恵のスカートの中を、しげしげと見つめ、彼女に話かける。


「民恵さん……随分、熟れているじゃないか?」


「いやぁぁ……見ないでぇ……」



〈世界の射精から〉

 初の海外旅行で、フィリピンに来た亀頭かめとうは、浮かれていた。

 酒場を出た彼は、友人達と、はぐれてしまい、怪しい現地人に声をかけられる。

 現地人に案内され、風俗街に足を運ぶ。

 その時の体験が忘れられない亀頭は、日本を捨て、リュックサック一つで世界を旅し、行く先々の風俗店を、制覇しようと志す。

 これは、そんな一人の男の、性体験を綴つづった手記である。


「アナタ? スケベ日本人!?」


 現地のフィリピン人は、黄ばんだ歯を見せ、イヤらしく微笑む。


「私、スケベ日本人ノ好キナ所、知ッテルヨ! 付イテ来テヨ スケベ日本人!」


 私はこの、うさん臭いフィリピン人を警戒するとともに、己の欲望を満たしてくれる、別世界に期待した。

 そして、男に付いて行く。


 現地人に、案内された歓楽街は、大通りに並ぶ町並みと違い、雑多で猥雑わいざつな様相だった。

 ピンクや紫に輝くネオンは、町全体に桃色の吐息が、かけられたように見える。


 卑猥な笑いを見せる現地人は、足を止め、イリュージョンを見せるように、手を伸ばし、歓迎する。


「私、スケベ日本人。大歓迎! 早ク、スケベ日本人。早ク!」


 入り口には、四つん這いで尻を向ける、フィリピン女の、等身大写真が張られ、女豹のようなポーズを取っていた。

 私の理性は、その尻の穴に、吸われるように奪われ、足は、ベルトコンベアに乗せられたかのように、軽やかに店へと進む。

 店の門は、魔境に誘う口のように、私を呑み込んで行った――――。


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 僕の隣で設楽が感心する。


「しかし、官能小説も読んでみると、奥が深いな」


 仲間の共感を、得られた僕は、嬉しくなり語る。


「そうでしょ? 今のアダルトコンテンツは映像で見て、刺激を与えるが主流だ。

でも、古くから有る官能小説は、文字だけで読者の興味をそそり、性的想像を膨らませ、興奮させなきゃいけない。

表現をする上で、高度なテクニックが必要になるはずだ。

刺激なら、映像で見せた方が圧倒的にいい、圧縮された情報量が、格段に違うからね。

それでも、官能小説は、今だに廃れることも無く、継続的に市場に残っている。

まるで、官能小説は、江戸から続く、古典落語のようだよ」


「お前、とりあえず、古典落語に謝れ。官能小説と、並べた事を謝罪しろ」

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