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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第1章 覚醒の日
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(7)   女神の加護 the アイテムボックス



「――さて、と。

 まずはこの記憶が間違いでないか、女神アスファリアとの話にあったことを試してみるとしますか」


意識としては、前世である御堂 慎弥としての部分もあったし、同時に今生であるヴァルト=フォン=アルシュタインとしての部分もある。

どちらが主でどちらが副とかでなく、両方の記憶と意識が正しく"自分"である、と混ざりこんでいる状態ではあるのだが、だからこそヴァルトとしての意識が、慎弥としての記憶が凶行に襲われたことで生まれた妄想などではなく、真実であるのかを確認しておきたいと、覚醒したときからずっとヴァルトの中で叫び続けていた。

そして、そのことを確認する上で最も簡単な手段は、転生前の最後の瞬間に女神アスファリアが言っていたアイテムボックス等、それまでのヴァルトの人生では手に入れたことのないものを使ってみるのが一番簡単な手段だ。


「たしか、使用したい、と思えば使えるんでしたっけ……」


なので、試しに『アイテムボックス、起動』と念じてみる。

すると、ヴァルトの眼前にある空中に、半透明の薄いモニターのようなものが突然浮かびあがった。

そのモニターは格子状のマス目で区切られ、前世のパソコンやスマートフォンに有った3Dアイコンのような形で1マス1マス毎にアイテムボックスに格納されている物が一覧形式で並んでいる。

さらに、視線を動かしたり意識してみると上下左右にそのマス目を自由にスライドさせることも可能であった。

また、格納されているものがある特定のマス目に意識を向けると、そこに入っているモノについての簡単な説明が脳裏にうかんでくる。

そして、試しに「女神の守護<首飾り>」となっていた物を選んで『取り出し』と念じてみると、モニター上のアイコンが立体的に浮かび上がり、一瞬だけ発光すると、そこから精巧な意匠が施された光り輝く首飾りが現れた。


「……あはは……どうやら、妄想や夢、幻ではなく、本当みたいですね……」


確かな重量感と感触を持って現れた首飾りの重みと手触りに、少し乾いた笑いがでてしまうが、これで記憶違いでも妄想でも夢や幻でもないことを確認することはできた。


「とはいえ、こういう力が手に入ったとしても、これをそのままにしておくことはできませんし……まずはこの品をアイテムボックスの中に戻すことと、できることとできないことについての確認と、女神がこの身に施してくださったという加護の中身を確認する必要がありますね」


たしか、アイテムボックスの中にメモ書きを入れておいてくれる、と言っていたはずですよね。と、アイテムボックスからメモ書きを探そうとする。

すると瞬時にアイテムボックスのウインドウが自動的にそのマス目の場所へと移動し、空中からそれらしき紙切れの束を顕現させた。


「ふむ、検索機能もあるのですね。それと……アイテムボックスに物を格納したいときは、対象に触れた状態で『収納』と念じればいいだけ、ですか」


前世にあった家電製品の取扱説明書のようなそれに従って、試しに先ほど取り出した女神の守護(首飾り)に触れて『収納』と念じてみる。

すると首飾りを取り込むかのように、球状の光が首飾りから発生し、刹那の間にその光の中に溶けていくかのようにして目の前から消えてしまった。

念のために見てみると、アイテムボックス先ほどはたしかに空の状態になっていたマス目のところに、いまは「女神の守護<首飾り>」としてアイコンが作られて収納されていることが確認することができた。


「なるほど……これはかなり便利ですね。

 噂では聞いていましたが、アイテムボックスというのは本当にすごい代物のようです」


前世の記憶では、あの世界には無かったようだが、ヴァルトが生きているこの世界には、アイテムボックスは希少なものであるとはいえ、存在していることは知られている。

もっとも、希少価値が半端ではなく、一般的にこの世界にあるアイテムボックスというのはカバンやバックパックのような形ある物品に対し、空間魔法の使い手が今は亡き古代魔法文明のころに開発されていたという特殊な付与魔法で、そのカバンの容量や重量をある程度無視して入れられるようにした程度のものでしかないため、ヴァルトがいま使っているような物とは完全な別物というべきではあるのだが。


「このアイテムボックスの仕様は、っと……」


アスファリアが作ってくれた説明書を読んでいく。

あの幼い外見の女神が手作りでつくってくれたようで、手書きっぽい丸文字で書かれているのがなんとなくほほえましくヴァルトには感じられた。

だが、そうして読み進めて把握したアイテムボックスの仕様は、読み進めるうちにヴァルトの表情をしかめさせ、悩ませ、最終的にはあきれ果てさせた。


【アイテムボックスの使用について ~アスファリアちゃんメモ~】

 ・収納する物品には、必ず手を触れていなければならない。

 ・収納した物品に対しては、アイテムボックス内では格納した瞬間以降の時間経過は発生しない。

 ・自動検索、種類やタグ付け分けによる、収納物のソート機能有り。

 ・取り出すには、取り出したいと念じれば可能。その際、基本的には使用者の目の前に出現するようになっているけど、意識すれば手の中や身体に装着する状態で取り出すことも可能。

 ・収納、取り出しに関しては、現出するまでにほんのわずかの間だけだがタイムラグを必要とする。

 ・収納した物品の重量は使用者に反映されない。

 ・収納した物品については、専用の亜空間世界に格納するので容量は無限と考えていい。

 ・固有の意志を持って活動している物でなければ、家一軒くらいのサイズまでの物品なら数を問わず収納可能。

 ・収納された物品が新規のものの場合、自動的に複製品がアスファリアの下に転送され、そこからアスファリアがこちらの世界についての情報収集をしたりする。

 ・「美味しい食べ物とかあったら、できれば一度は格納してほしいです。 byアスファリア」


というものだった。


……いやはや、ほんと……便利すぎる性能だというか、他人や国家にバレたらやばいレベルですよね、これ。

あと、女神アスファリアさん、最後の方の仕様については、個人的目的含んでますよね。まぁ、いいんですが。

ヴァルトは窓から見える空に視線を向け、思わず遠い目をしてしまう。


しばらく現実逃避しかけていたヴァルトだったが、気を取り直して、次は説明書の中にあった加護についての部分を読んでみることにした。



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