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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第1章 覚醒の日
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(2)   異世界に転生していたようですが何ですかこの事態。

――そういった経緯でこの世界に転生していた、ということを、唐突にその前世が御堂 慎弥だったという僕、ヴァルト=フォン=アルシュタイン(7歳)は思い出しました。


突然の記憶の復活に戸惑ってしまってますので自己確認してみましょう。

僕はヴォーレンシュタイン王国アルシュタイン子爵家の三男坊。それがヴァルトである僕の、今の人生での立場です。


なお、7歳になって思い出したのは、いまの肉体の脳と魂魄が完全に結合し、前世の記憶を受け入れるのにはだいたいそのくらいの時間がかかるだろう、という女神アスファリアから慎弥が聞いていた記憶がありますので、それが今だったというだけのことなのでしょう。それ以前の慎弥としての生前の記憶もきちんとあります。

ですが、ややこしいことに、ヴァルトとして生きてきたこれまでの記憶もきちんとあります。

慎弥とヴァルト、どちらの記憶が主だとかではなく、どちらも主として自分の記憶だという実感があるだけです。

唐突に前世の記憶を思い出したものの、あぁそうだったのか、とストンと腑に落ちた感じになっただけで、特に混乱は……まぁ、ちょっと思考がごっちゃになってる感じがありますが、ともかく記憶事態に問題はありません。


でもですね――なぜ、記憶が戻ったのがこのタイミングでなのだろう、とは言いたいですね。

なにせ僕のいまの現状は、トラブルに襲われてる真っただ中なのですから。


僕が生まれたアルシュタイン家は、領地持ち子爵家とはいっても、その領地は王国の端っこにあるド田舎です。

下手するとそこいらの男爵家のほうが優雅に暮らしてたりするほどの田舎貴族なので、大人たちの中には眉を顰める者もいますが、身分とか気にしない子どもとしては街の子どもたちと一緒に遊ぶこともごくごく普通である|長閑≪のどか≫な環境でした。

なので今日もいつもの如く、町の子どもたちと一緒に山菜取りを兼ね、お付きの女性騎士ミルカを保護者して街のそばの山へ遊びに来ていた訳なのですが……


「おらぁ!どうした騎士さまよぉ、それでお終いかぃ!!」


いま私の目の前では、何時から剃ってないのか顔中に無精髭を生やした汗くっさくて酸っぱい匂いがここまで臭う汚らしい服を着た筋肉質の大男が、女性騎士とはいえ華奢と言ってもいい体躯であるミルカに向かって、嘲りの声を上げながら手に持った斧を振るって攻め立てているという状況が起きています。


「くっ……きゃぁっ!」


ミルカは、とっさに手に持った騎士剣で斧の直撃を逸らすことには成功したようですが、さすがに体格差から生まれる大男の一撃の勢いまでは逸らしきれなかったのか、4~5メートルほど離れていた私のすぐ傍まで吹き飛ばされてしまいました。

そんな様子を見て、彼女を吹き飛ばした大男の仲間である、いま私や子どもたちを取り囲んでいる汚らしい恰好をした3人の男がげらげらと笑いだします。

一方、頼りの騎士が窮地に陥ったのを見てしまい、私の背後にいる街の子どもたちの中でも年少の子どもたちが、恐怖に耐えられなくなったのかわぁわぁと泣き出してしまいました。

そして、そんな子どもたちの様子を見た大男が、嗜虐的な笑みを浮かべます。


「ほらほら、どうした~?

 そんなざまじゃ、そこの子どもたちを悪ーい人さらいから守れないでちゅよぉ~」


わざとらしく隙を作りながらそう言って挑発してくる大男に、イラッときてしまいますが仕方ないですよね。

それに、その大男に限らず、大男の取り巻きたちも耳障りな声で好き勝手言い出してきていますし。


「けはははは、ひでぇなお頭は」

「無理無理、あんなひよっ子騎士さまじゃ自分のことだって守れるわけねぇって」

「お頭ー、虐めるのはいいっすけど後で楽しめるように生かしといてくだせぇよ」

「ガキどもはそのまま売るにしても、そいつは十分楽しめそうな身体してんですからぁ。

 アレを攫ってからずっと、我慢させられっぱなしなんですから、楽しむまでは殺さないでくださいよぉ」


……彼らはきっとこれまでにも、ミルカや子どもたちのように自分より弱者とみた相手のことを弄んで馬鹿にしてきたことがあり、その時の経験がよっぽど楽しかったんでしょうね。

わざとらしく馬鹿にした言葉使いをして挑発してき始めた斧使いに合わせるように、周囲の男たちも嗤い、言葉のトゲでいたぶってこようとしてきます。

まぁ、人さらいの違法奴隷商人の性根なんて、こんなものなのでしょうか。


――こういうやつらのことは前世の記憶でよく知っています。

自分より弱いとみた相手のことを玩具やストレスの発散程度の道具扱いとしか考えておらず、さらに徒党を組んでいることで意識は強気になり、いくらでもゲスなことをやれる奴ら。

そしてそういうヤツらほど、どれだけ酷いことを相手にしても、それに何一つとして悪気や罪の意識などもたない。なぜなら人を人として見ていないのだから。

実際、今の彼らがミルカや私の背後にいる子どもたち、そして私に対して向けている視線からは、人を人として見ているといった感覚は見当たらず、悪意と獣欲に満ちた薄汚いモノでしかありません。


「くっ……うっ……」


一方、そんな馬鹿にする、下に見る眼を向けて嘲笑われたとしても、先ほどの大男の一撃を受けた際に怪我でもしたのか剣を支えに立つことにすら苦労しそうにしていながらも、女性騎士ミルカは、その身を挺して私や子どもたちをそんな悪意から守ろうとするかのように起き上がろうとしていました。


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