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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第1章 覚醒の日
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(12)  食堂にて


 父の執務室を出たヴァルトは、アーノルドの話から銀狼族の少女は騎士団の詰所にいるのだろうと当たりをつけて移動を開始する。

 そして騎士団の詰所は館から歩いてすぐのところにあるため、さほど間を置かずにたどり着くことができた。そしてそのまま、詰所入口にいた警備の騎士に、保護された子どもたち、特に銀狼族の少女に会いたい旨を伝えると、彼らが今いる場所まで誘導をしてくれる。どうやら保護された子どもたちはいま、騎士団の食堂にて食事を取っているところらしかった。


 警備の騎士に案内されてヴァルトが騎士団の食堂へと移動し、入り口の物陰から中をのぞいてみると、30人が一斉に食事をとれるようにと厚手の木材を組み合わせて作られたテーブルが全部で6個、2つずつ3列に並べられている部屋の真ん中のテーブルで、4人のヒト族の子どもが集まって座っており、がつがつと勢いよく食事を口にしていた。ほかのテーブルでは、休憩時間らしい幾人かの騎士たちが座って食事を摂っている。

 そしてヴァルトの目的である銀狼族の少女はというと、そのヒト族の子どもや休憩中の騎士たちから少し離れた、一番奥のテーブルで備え付けの椅子に、ぽつんと一人ぼっちで座っていた。


 銀狼族の少女の姿をヴァルトは観察する。

 その少女は腰かけた椅子にまで届く長い艶やかな銀髪と、頭頂部に一目でそれと判る二つの狼系統の耳を生やしているのがとても印象的であった。そしてなによりヴァルトの目を引くのは、他の子どもたちと同じ無地の貫頭衣を身に着けているからこそ、その差異が良くわかる、とてつもなく整った少女の顔立ちだった。

 柔らかくカールした睫毛は長く、ややツリ目がちの金の瞳は大き目であり、鼻筋はスッと整っている。

 あれほどの美少女であれば、たとえ銀狼族でなかったとしても、おそらく人攫い等に付け狙われたことだろう。

 そんな銀狼族の少女は、その視線をテーブルの上へと落とし、料理にはまったく手をつけないままでジッと何か思案するような様子で座っている状態であった。


「……どうしてあの娘だけ、席を離して座らせているんですか?」


しばらくの間、そんな室内の様子を観察し終えたヴァルトは、案内してくれた騎士に質問を投げかけてみた。

すると、尋ねられた騎士は困った表情で頬をポリポリと人差し指で掻きながら、答えてくる。


「いや、坊ちゃん、特にそういうふうに意図して配置したわけじゃないっすよ。

 ただ……どうも囚われていた馬車の中でもあの子だけ別に隔離されていたり、違法奴隷商たちに運ばれていた道中でも別で扱われていたらしく、どうやらあの子たちの間でも元々距離感があったみたいなんすよ。

 どうにもそれが影響してるようで、自然と距離ができてるみたいなんすね」


その説明で、ヴァルトは納得することができた。

どうやら、同じ囚われの環境にあった仲間であるとはいっても、その環境の中で接点が長く無かったため、一種の別グループみたいになっているという様子のようだ。


「では、食事を彼女だけ取ろうとしていない理由は?」


「それこそ理由は分かんないっス。

 俺っちはある程度状況が治まった後は、警備として詰所の前にずっといましたもんで」


案内役の騎士のその回答に、ヴァルトは、それもそうか、と苦笑してしまった。


「まぁ、見たところ別に食事の中身に警戒してとか、そういう感じじゃないみたいっすし……状況の変化に戸惑ってるか、理解が追いついてないとかってだけじゃないっスかね。

 もしくはそもそも腹が減ってなかっただけとか……あー、でもここに来た時の感じだとそれほどちゃんとメシを食わせてもらってたって感じじゃなかったっスから、それはないっすかね?」


「ふむ、来た時の状況はどんな感じだったんですか?」


ヴァルトのその問いに、騎士が顔を若干しかめさせる。


「酷いもんでしたっス。

 子どもたちが着てる物は、みんなボロ布かこれ?って感じのボロボロなものでしたし、全員、目に生気があまり感じられなかったくらい衰弱してたっスから。

 湯で身体を拭かせて、ちゃんとした服に着替えさせたりしたところで、やっと保護されたって実感が沸いたらしい時には、あの中央の子らが全員大声で泣いちゃったりして大変な状態になったくらいっす」


「……ふぅん。ちなみに、その時のあの娘の様子は?」


「銀狼族の少女っすか?

 んー……あぁ、そういや、その時もあまり感情を動かしたりした感じは無かったっすね。

 かといってボーっとしてるってのともなんか違って……なんていうか、そう……そういえば、どっちかっていうと周囲を観察してるような感じ、っていうのが一番近い感じだったかもしれないっス」


――なるほど。


「あ、でも受け答えとかはちゃんとしてくれたらしいっスよ?

 なので、言葉はちゃんと通じてるようだし、別にこちらに敵意や警戒心を出したりしてくる感じでもなかったみたいっすね」


「わかりました。

 それでは、ここまでの案内ありがとうございました。

 職務に戻って頂いてかまいませんよ」


ヴァルトがそう言って微笑むと、気のいい警備の騎士は「じゃ、俺っちは玄関に戻るっす」と言ってその場から歩き去って行く。

警備の騎士が立ち去るのを見送った後、ヴァルトは首を軽く左右に曲げて緊張をほぐすと、食堂の中へと入っていくことにした。




ヒロイン(予定)の娘がやっとの登場となりました。




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