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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第1章 覚醒の日
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(11)  報告(大人たち)

 ヴァルトが一礼して部屋から出て行ったことを確認し、しばらくしてからグレウスがアイギスとミルカへと視線を向け、口を開いた。


「それで……先ほどの報告は本当なのですか?」


 それまでとは違い、穏やかさのない眼をしたグレウスからの質問に、弟であるアイギスが背筋を伸ばし、ヴァルトが来る前に騎士団長から受けた報告を再度口にする。


「はい、現場を確認しに行った騎士たちの見立てでも間違いありません。

 ミルカが言ったように、人攫い達のうち、一人は脇腹を深く切り裂かれていました。

 ……鎖帷子ごと一太刀で」


 そのアイギスの報告に合わせるようにミルカも頷く。


「その……ヴァルトさまは、私のことを心配して手柄を譲ろうとしてくださいましたが、実際のところはそうではありませんでした。

 護衛の職にありながら、その任を達成できなかったこと、申し訳ありません」


 しゅん、とした様子でミルカがエイオスとグレウスに向かって謝罪する。

 だが、そんなミルカに対し、エイオスは笑って許す。


「いやいや、ミルカ、キミが気にすることはないよ。

 少なくとも賊の一人を退治したのはたしかにキミであることに間違いは無いし、そもそも4人を相手にしっかりと子どもたちを守っていたんだからね。それに自分から報告してくれたんだ、責める要素なんてどこにもないよ」


「しかし……」


「謝るとしたら私やグレウスの方さ。

 ここが長閑(のどか)な田舎であるからといって、ヴァルトと子どもたちの守護の任をキミ一人に押し付けていたところはあるのだしね。

 今回は相手が少数だった上に、意外にもヴァルトが活躍してくれたから良かったものの……これが魔獣や魔物の突発的発生だったりしたら、たとえヴァルトが報告にあったような腕前であったのだとしても、子どもたちに犠牲がでていたかもしれない。

 そうならないように、本来であればきちんと二人や三人配置しておくように指示しておくべき責任が、私たちにはあったのだからね」


 そう言ってエイオスが苦笑すると、続けてグレウスがミルカに向けて優しい視線を向けながら口を開いた。


「そうですね、今回のことはむしろ私たち全員にとって不幸中の幸いだったと思っておいた方が良い事例です。

 ミルカ、貴方はそんな状況下でありながら、しっかりと己の任を果たしてくれたのです。

 むしろ胸を張って誇ってくれてもいいのですよ」


「ということで、ミルカ、キミにはなにも恥じらうことはない。

 事実についてもきちんと報告してくれたしね。

 まぁ、今後とも迷惑をかけることになるとは思うが、あの子のことを見守ってあげてほしい。かまわないかね?」


「は、はい!」


 領主とその継嗣に褒められた上でそんなふうにお願いされてしまっては、ミルカに否なんて答えが存在するはずなどない。恥ずかしそうにしながらも頷き、了承の意を示す。


「それでは、ミルカの件はこれで終わりということで。

 ヴァルトについてはどうしますか、父さん?」


「それこそ放置でいいんじゃないかな。

 別にあの子が強かったとしても、何も損することはないだろう?

 むしろ強さを前面に出して図に乗ったりするようなら、注意や指導が必要になるんだが、どういう理由かはわからないがそれを出す気がないというのであれば、気づかないふりをしておいてあげてもいいことなんだし。

 まぁ、嘘をつこうとした罰代わりとして、こっそり剣の稽古の段階を引き上げていってあげる程度でいいんじゃないかな」


 エイオスのいたずらっぽいその台詞に、グレウスはハァ、と息を一つ吐き出した。


「まぁ、それでいいというのであればそういたしますが」


 あっけらかんとした父親の沙汰を、グレウスが苦笑しながら指示書に内容を書き込んでいく。

 その間、ミルカはそんなグレウスの姿を見惚れるよう眺めていた。

 



――なお、アイギスはというと、報告を終えた後はずっと、ワンピース姿のミルカのことを(可愛いなぁ……)と思いながらずっと眺めているだけであったりするのだった。



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