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8、大説家にならんや

論と詩は未分化であった。怜悧な論述家はまた、抒情詩人でもあった。人の脳をコントロールするに、情理を用うるは自然な観察の結果である。それは服飾にとっての、色彩とシルエットの如きものだった。


ここから先人は詰めて考えた。色をトレンド、シルエットをモードと呼び分けた。詩人に国家を左右され、法律家が隠遁しないためにである。二つはやがて合流し散文あるいはデザインと称された。


小説は論と詩を足したものである。色彩とシルエットの組み合わせである。老荘、孔孟、荀墨、韓非公孫、孫呉、濃淡、の差はあれどみな散文家、小説家の範たる大説家であった。と言える。


1、正勢

作者は、下調べして、万難を排して、読者と対峙する。戦場に到着し陣形を組む。


2、衝突

作者と読者は、戦場にぶつかり合う。組んだ陣形での優劣を競う。


3、奇機

作者は、機動計略をもって、読者の形勢へ穴を穿つ。陽動、急襲、側背、伏撃。


4、決着

読者の穴へ、情理の限りを押し込む。押して押して押す。または押し返される。


5、戦後処理

読者は作者へ和睦の使者を派遣し、捕虜交換などを行う。あるいは逃げ散る作者軍の兵を散々に懲らしめる。


もしも読者が作者の仕掛けた機略を看破して、正面から押し返すなら、レビュー、感想の場で作者の拙劣な機動戦術について罵倒します。二度と歯向かう事の無いよう徹底的に追い討ちせねばなりません。


作者は上手く言い訳をシンガリに配置して大将の名誉と生命を守りましょう。生命と名誉さえ無事ならば、薪に寝て肝をなめ、再び兵を起こす機会をうかがえます。


長編小説というのは、複数の戦を通して、将軍の武名を天下に轟かせんとする一大事業なのであります。時おり負けるのも兵家の常とは申せ、トータルで勝ち越せないのなら、わざわざ長編小説を披瀝する意義はありません。あなたの小説は只の無能な又くぐりに過ぎないのです。


まずは試しに、そうですねえ、5分以内に読者軍の将校へ向けて、あなたの巧みな陣形術を披露してもらいましょうか。普通の将校は500字×5分=2500字。難関大学クラスの軍師なら三倍の七千五百、法曹関係の軍師なら一万ですね。まぁ三倍四倍の天才軍師があなたの小説なぞ相手にするとも思えませんが。


陣形術は、論か詩か、あるいはその混合です。モチーフは何でもよろしゅう御座います、沈む夕日の美しさでも、乱世は大道の廃れたゆえであるでも、夜空の星は多くあれど明けの明星を残してすべて消え行く定め也でも。


5分以内に、あなたが馬鹿じゃない事を、文章の陣立てを以って印象付けなくてはなりません。読者軍があなたを賢いと誤解してくれたなら、正面の圧力は緩和され、機動計略は決まり易くなります。


馬鹿の文章を読むとき読者は警戒します。ガラス玉をダイヤモンドだと偽る恐れがある為です。反対に、賢い作家の言葉には赤ん坊のように居眠りを始めます。たとえガラス玉を掴まされてもなかなか気付かないほどです。


戦術論はとかく奇機の妙にばかり気を取られ、正勢は不省。作者の準備した兵300に対して読者が兵3万の時、一体あなたはどの様に運用して、読者を感服させるのか。知識・洞察・発想・実行力を備えた一流読者に、たかが三百人将風情がどうして対抗できようか。


極端に言えば、陣形構築も、機動戦術も、戦場の匂いや勘所さへも、圧倒的大兵力の前では何ら働きを望めない。知識力、分析力、ユーモア、胆力、誠、そういった人間的総合力の前では、構成もキャラもストーリーも世界観も、そんな小手先は、あんたの卑しい性分を際立たせるだけだ。


勝海舟のお喋り日記と、あんたのライト・ノベルとを比較してみて下さい。それでも何か書きますか? 書けますか? 片腹痛い。あまり海舟を舐めないほうがいい。


読者の皆さんは、既にうすうす自覚があるかも知れませんが、あんたのその、羽毛の如くライトなノベル、そんなものは、海舟に叩ッ斬られちまうぜ。やめちまえ、挿絵を手にしたって、おめえに勝ち目なんざぁ無ェんだよ。それでも書くってんなら

読つぁん、俺を超越こえて、行きねえな

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