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甘露
酒飲み爺さんのご相伴に預かった。徳利が行ったり来たりする。お爺さんは80で、私もムキになって酒を勧める訳にいかない、ポクッと逝かれちゃ困る。ほとんど私が頂く事になる。酒の好き、子分も好き、宴会が好き、お喋りが好き、陽気なお爺さんだった。気付くと徳利が10も転がっている。孫ぐらいの若い人を酔い潰すのが楽しいのだろう、えらく上機嫌でハイペースで。
小学校の3年生まで満州で育って、敗戦、中華の山賊がわやくそやり始めた凄惨な引き上げ。右も左も分からない祖国、物不足、復興、株で一発当てた自慢話、職人同士の殴り合い、刺し合い、飲み合い歌い合い、奥様ののろけ話、外国人の奇妙な風習、旅先でのトラブル、日本酒の旨さ。
アラビアンナイトの中の出来事のような。そんな人が世の中には居るもんだなぁと思った。




