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紫陽花

今が嫌になって過去を思い出す事は滅多に無いが、後世来世を思う事は有る。


来世、庭にあじさいのある家のゴールデンレトリバーに生まれ変わりたい。けど毛が長いから梅雨はつらいので、ラブラドールレトリバーが良い。名前はラブだ。ラブちゃぁん、御飯よぉ。わぁ白米と刺身だぁ、やったー。である。ラブはなぁ、ウチの弟やねんで、せやからなぁ、ウチのおる時はなぁ、行儀良くするねん。


僕がこのうちに来た時まださつきちゃんは産まれていなかった。長幼の序列で言うならさつきちゃんが妹だ。まったくやれやれな妹だった。俺は兄貴としての包容力と同時に弟のあどけなさを込めて小首をかしげた。ラブはあほ犬やなぁ、きゃきゃきゃ。よく分からないけど俺も笑った、やれやれな妹だった。


それからしばらくゴムボールで遊んでやっていると、昼寝の時間になって、ようやく俺はさつきちゃんから解放されて、気だるい午後の昼下がりを哲学的思索に当てることが出来た。どれだけ忙しい時でも俺は孤独の時間を確保してきた。この稼業を長く続けているといつしか群れの中で満たされて恐怖と闘争心を根こそぎ失ってしまうんじゃないかと妙な苛立ちを覚える。誰かが俺の為に動くのを当たり前だと思い違いして俺は誰かの為に動けなくなるのではないか。


そろそろさつきちゃんの起き出す時間だ。俺はだらしなく大口を開けてよだれを垂らして居眠りする。それを見てさつきちゃんはきっとお姉さん風を吹かせるだろう。犬の身だ、やがてさつきちゃんが8×4くさい歳になるまでは一緒に居てやる事はできない。思い出すなら笑うほうがいい。やれやれ、手の掛かる妹だ。

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