グモッチュイィーーン
うーん……
「ヤだなぁ……」
このにおいも、音も、何度来ても慣れないなぁ……。
「ワガママ言わない」
僕の呟きを拾った母が、愛読の雑誌に目を流しながら言った。
「だって……」
「往生際が悪い。」
そこで、僕の名前が呼ばれた。
「ほら」
母に促され、僕は立った。
「奥の部屋へどうぞ」
看護師さんに言われ、奥の部屋の診察台に座ると、エプロンをつけられた。
ここは、歯科医院。
僕は数年前から定期検診に通っている。
虫歯はあんまりならないけど、なったときは酷いものだ。
「こんにちわ」
歯医者の先生が来て、イスに座った。
「ぐっもーにん。」
「うん、今日も元気みたいだね。
前の時から痛くなったところとかは?」
「ない」
「じゃ、診るからね。
イス倒すよー」
変わらない応答をして、倒れていく背もたれに身を任せる。
「はい、口開けてー。あ〜ん」
口を開けると、横から見慣れた器具が延びてくる。
「痛かったら手挙げてねー。たぶん見ないと思うけど」
「みてぉぁ──」
しゃべってる途中で器具を入れられた。
鏡で見ながら削られたりこすられたり、耳が痛くなりそうな音もする。
ぐわーん、とかキーンとか、とにかく骨に響く音だ。
「あぁ〜。あるねー。あるねあるね〜」
なにがあるんですか歯医者さん。
「あぁ、ホントに痛くないの?」
今なんか歯茎にあたった気がして痛いんだけど。
なんか血の味してきた……。
「とりあえず削っとくねー」
グモッチュイィーーン
痛い。
痛いってば
手を挙げようと動かすと、助手っぽいことをしている看護師さんに押さえられた。
+ + +
「ひらあっか!!」(痛かった!)
「あぁ、ごめんごめん。
ちいさいのあったからつい削らせてもらっちゃった。」
「ういわ?」(虫歯?)
「うん、虫歯。
一応詰め物しといたけど、来週また来てね。」
「うーい」(はぁーい)




