到着
「此処で合ってるのかなあ」
両手で地図を広げ、遺跡の前でボクは立ち尽くした。横風が吹き、砂が舞い上がって目に入る。痛みで思わず目を擦る。涙でにじんだ視界のまま、目の前の建造物を見上げた。頑丈な石で造られているけど、何千年という月日によって朽ち果ててしまっている。たかだか数年しか生きていないボクでさえ、その崩れかけた柱に何処か物寂しさを感じるほどだった。
「先に着いてる、って言ってたんだけど──」
辺りを見回せど、周りに人影は無かった。見上げると、太陽は丁度真上に来たところだった。予定ではお昼前には合流出来ると聞いたのだけれど――それにしても、酷く暑い。
日陰になるところを早急に探さなければいけなかった。直射日光を浴び続けるのは幾ら竜族のボクでも厳しかった。ましてや大人ではないし、小さな身体には酷だった。そのことは十分心得ているし、だからこそ慣れない長いマントを着ている。水筒だって満タンにして出発した。もうだいぶ飲み干してしまったけれど。このまま炎天下の中外を出歩くのは危険だと本能が告げていた。
少しして、遺跡の少し奥まったところに丁度良い場所を見つけた。地面を掘り下げて出来たその部屋は、天井こそ抜けて晒しものになっていたけれど、直接光は当たっていなかった。階段を降りると地面がヒンヤリと冷たかった。邪魔ではあったけれど、翼の上から羽織っていたマントはそのままにしておいた。日陰では身体を冷やしてはいけないと聞いていたからだ。
そのまま暫く耳をそばだてて待っていたが、どうやらまだ誰も来そうに無かった。ボクは其処で暫く休むことにした。
ボクはその午後、夢を見た。