始動(スタートライン)
1から4のそれぞれの区画には船着き場が設置されている。その中でも、商業施設の立ち並ぶ第三区画は、特に発展している。船着き場からコンテナ貨物が運ばれるが、高速へとつながる道と地下道にとおる道の二つがある。主な貨物は高速を通るが、あるもの、すなわちアロウザーに関係する研究物資は大体のものが地下道を通る。地下には大きな空洞があり、公的には人工島を浮かすフロートであるということだが、その実極秘裏の研究物資が運ばれている。そこに、一つの貨物トラックが通る。
「コードを照合します。しばらくお待ちください。」ここには定点カメラだけが設置されていて、ほかに看守などはいない。極秘裏であるということがよくわかる通路である。
「……照合完了しました。どうぞ、お通りください。」しばらくしてのち、監視カメラから合成音声が流れ、通過が許可された。
運転手は軽く会釈をして、トラックを走らせた。
「え、俺に用があって探していたの?」秋斗は、少し驚いた様に言う。ここは、第1区画から第四区画を円のようにつなぐこの島唯一のモノレールの中である。
「はい、今回ある人物の捜索につき、協力者がいるということだったのです。それがあなたということです。」今彼らはさっきまでいた第四区画から第一区画へと向かうモノレールに乗っていた。彼女は椅子に座り、秋斗はそれに向かいながら立っている。何度も立とうとする彼女を秋斗は、半ば強引に座らせていた。
「そんなことレオから一言も聞いてないな。どうゆうことなんだろ?」
「迷惑でしたら、私は別に居候させてもらわなくてもかまいません。」とても淡々としゃべる彼女。任務というものにひどく真剣だということがうかがえる。
「いやいや、そんなことないよ。大歓迎さ。きっと朱里だって喜ぶさ。」
「朱里?」少し目線を上にやり、秋斗と目を合わせる彼女。しかしその顔はとても落ち着いていて、相も変わらず淡々としていた。
「ああ、朱里っていうのは俺の妹のことなんだ。生まれつき体が悪くて、歩くことができないんだ。でもとっても元気で優しいんだ。」
「…………。」
「あ~えっと……。そんなことでよろしく。あ、あの……。」言葉につまりよろしくの握手をしようとしたが、相手の名前が分からず困った秋斗。
「紫苑です。卯月紫苑。よろしくお願いします。」すっと、無表情で握手をする紫苑。
「そうか。じゃあ、よろしく。紫苑。」
「……いきなり名前からですか。」
「あ、ダメ……かな?」
「いえ、問題ありません。」どうしようもなく淡々としている紫苑。
(う~ん、どうしたものか……。落ち着いた子っていったらそれで終わりなんだけど、何とかして打ち解けたいな。これから一緒に住むわけだし……)モノレールから降りながらあれやこれやと思案する秋斗。
「ピト。」いきなり紫苑の首筋を触った秋斗。
「…………!」驚き後ろを振り向く紫苑。その顔を少しだが驚きと戸惑い、また怒りも含まれていた。
「うお……ご、ごめん。ついどんな反応するか気になって。」
「……何のつもりですか。」無表情から崩れて、ほんの少し怒りの顔になっている。
「いや、これから一緒に住むわけだし……。なんかその……もっとさ、笑顔笑顔~でいこうよ。」笑顔をみせながら、申し訳ない気持ち交じりで言う秋斗。
「……以降、このような行為はしないようにお願いします。」秋斗の後ろに立ち、追撃を防ごうとする紫苑。
「フーン。苦手なのか……。」ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる秋斗。
「な、なんですか……。」少し警戒態勢をとる紫苑。そこには、焦りと不安が混じっているのが分かった。
「そういうのかわいいな。」紫苑の予想とは裏腹に、斜め上の発言を秋斗はした。
「な、なんですか……。」完全に不意を突かれた紫苑は、ボッと顔を赤くする。
「やっぱり。いきなりの行動言動に弱いのか。」
「茶化したんですね。許しません。」今度は怒りで顔を赤くする。
「あははは、ゴメン。ゴメンってば。」紫苑から距離をとりながら言う。
「でも、かわいいっていうのは、ホントに思ってるよ。」
「え……。」
「な~んてね。」
「もう。ほんとに、許しませんよ。」
「ははははは……。」賑やかな笑い声の響く帰り道となった。




