出会い(エピローグ)
ある男は言った。生物は己の欲求によって姿形を変え、生きていると。
環境に適用して進化するのではなく、己の欲望によって進化するのだと……。
これは、新たな人類の可能性であると……。
飛燕島。ここは本島から隔離された人工島である。この島は、突如現れたゲートの直下に造られた、アロウザーの研究施設である。ゲートは、普通の人間には視認できない。しかし、このゲートの存在に気付いた者がいた。それは、この国の航空システムが異様な磁場のゆがみを確認したからだ。その後、一年間にわたって世界中で異常現象が起き、たくさんの人間が死んだ。そして、それに代わったかのようにアロウザーと呼ばれる常識では考えられない生物が誕生した。それは、人とまったく同じ見た目だが、不思議な力を持つものであった。人々は、それらを管理して研究した。それによって、魔術師という存在を科学的に生み出すことを可能とした。これは、そんな世界の話。一人の少年と、少女の話。
ここは、飛燕島の第四区画。研究施設のある区画だ。そこに、一人の女がいた。彼女はただ、黙々と道路を道なりに進んでいた。
「でさでさ、この間スゲーことあったんだけど……。」進行方向に、何やら話している男二人組がいた。
ドスンと、少女と男の一人の腕がぶつかった。男は、怒り半分謝罪半分のような感じに少女のほうを向いたが、彼女は一度も振り返ることなく歩いていた。
「おい。」少しかんにさわったのか、彼女を呼び止めた。
「化け物のくせに……。」彼女は、少し後ろを振り向きながら、冷たくそう言い放った。とても冷たく、蔑んだ眼をしていた。
「てめぇ……。」男の一人が、怒りをそのままに彼女を襲おうとしていた。
「おい、やめろ。」もう一人が止めに入る。
「ふざけるなよ。そんな風に俺たちを化け物呼ばわりしやがって。俺だってなりたくてこんなんになったわけじゃねぇんだよ。なのに、あいつらは、俺たちを恐れて、蔑んで、そんな目をしてくるんだよ。……許せねぇ。許せるわけないだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」力任せに少女を殴りかかる男。その腕が、大きくなり毛皮のようにたくさんの白銀の毛に覆われる。肉体変化形のアロウザーだ。
少女は、無言で迎え撃つ。その胸にかけてある、黄色のペンダントが光り、彼女の手に刀が現れた。彼女は魔術師なのである。
二人が急接近し、今にも戦闘が始まろうとしたその時。
「ちょぉぉぉぉぉぉっと、まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」二人の間に割って入っきた者がいた。
「こんなところで戦っちゃいけない。ていうか、そもそも戦うこと自体がいけないことだ。」この男の行動に、一人はため息をつき、一人は驚愕していた。
割り込んできたその男は、驚愕していた少女のほうを向き、
「俺の名前は、織鷺秋斗。よろしく。」これが、一人の少年と少女の出会いであった。




