曲げない女。
昔からモテる女だった。高校の時授業であった課題は隣の男子が代わりにしてくれた。自分の意見が鶴の一声で何でも通った。
大学の時は食事に行けば自分でドアは開けないし座るのは奥の席、料理を取り分けるのも男、お会計も勿論男だった。
バブル期でいうメッシー、アッシーが何人もいた。
チヤホヤされるのが当たり前、甘やかされるのが当たり前で有沙はいつの間にかワガママな高飛車女に成長していった。たまにご飯に行って奥の席を座られたりしたら腹が立って自分は座らず立ったまま気づくのを待ったりする様な女だった。それでも有沙は若さと美貌でモテ続けていた。
ある日、1人のイケメンからもつ鍋デートに誘われた。席にもつ鍋の材料がくる。有沙はそれを見守る。イケメンがもつ鍋を作りだし、出来上がりお椀によそってくれた。有沙からすると当たり前の事だった。
有沙って結構受け身なんだねー
イケメンが有沙のお代わりをよそいながらそう言った。
え?受け身?普通じゃないの?
有沙はキョトンとしてそう答えた。イケメンは笑いながら
いや、女の子は結構こういう事するよ!
と言った。成る程、イケメンだからきっと自分と同じ様に女に尽くされてきたんだな…有沙は納得した。やはり多少は自分より下に見れる男がいいと悟った。
それからも色んな男に食事に誘われた。焼肉に行くと有沙は肉が焼かれ、お皿に置かれるまで待つ。
それが当たり前だった。たまに嫌味の様な事を言われたりしたが有沙は絶対自分を曲げなかった。自分にはそう尽くされる価値があると信じていたからだった。
モテる女は男を選びすぎて婚期を逃すと聞いた事があるが有沙は自分の価値が後どれくらい続くのかも全て計算していた。周りの友人から
あの子は絶対晩婚になるよ
と後ろ指をさされていたが周りの期待を裏切り25歳でめでたく結婚をした。
相手は勿論焼肉も焼いて食べさせてくれる優しい尽くす男だった。